院長の澤木秀明です。
2026年8月24日、WEBセミナーにて、「かかりつけ医での肥満2型糖尿病治療の実践のための工夫」と題してお話しさせていただきました。

「意志が弱いから」ではない、という前提から
講演でまずお伝えしたのは、肥満を合併する2型糖尿病は、遺伝・環境・睡眠・心理・社会的要因が絡み合う「慢性疾患」だということです。
診察室で「食べる量を減らして、運動してください」とだけ伝えることは、当院ではしないようにしています。治療の第一歩は、患者さんを責めることではなく、「今の生活の中で、何なら実行できるか」を一緒に探すことだと考えています。

小さな一歩から始める、という考え方
ADAガイドライン2026でも、栄養・身体活動・行動面を含む包括的なアプローチが推奨されており、まず体重の5〜7%の減量を目標とすること、「禁止」ではなく「続けられるエネルギー不足」を作ることが示されています。特定の食事比率を一律に押し付けるのではなく、お仕事や生活状況に合わせて調整することが大切です。 当院のスタッフが患者さんと確認している具体的なポイントも、講演でご紹介しました。
加糖飲料を無糖に変えるだけでも、大きな変化になること
ラーメン+チャーハンのような「主食の重なり」がないか
夕食後の間食や、逆に食事を抜いてしまう時間帯がないか
運動についても、いきなり「週150分」を目指すのではなく、「今より1日10分多く歩く」「夕食後に5分だけ歩く」といった小さな目標から始めることをお伝えしました。減量と同時に筋肉量を守ることも重要で、有酸素運動と筋力トレーニングを、腰痛や膝痛など持病に合わせて個別に調整しています。
「守れませんでした」で終わらせない
目標が達成できなかったとき、当院では「守れませんでした」で終わらせず、その背景にある壁を一緒に確認するようにしています。費用の問題か、勤務時間の制約か、膝の痛みなど身体的な理由か、あるいは心理的な空腹感か。理由が分かれば、医師・管理栄養士・看護師のうち、適切な担当につなぐことができます。
チーム医療という土台
当院では、医師がすべてを説明するのではなく、医師は全体方針と合併症管理を、管理栄養士は具体的な食事内容を、看護師は自己管理や療養支援を、それぞれ担当する体制をとっています。 大切にしているのは、職種ごとに別々の助言をしないことです。「まず体重3%減」という方針のもと、栄養士は「間食を週7回から3回に」、看護師は「毎週月曜に体重測定を」というように、ひとつの目標を、それぞれの立場から具体的な行動目標にまで落とし込んでお伝えしています。
薬物療法についても
講演の後半では、糖尿病や脂質異常症の治療で近年使われるようになった薬剤についてもご紹介しました。詳しい内容は専門的になりますので割愛しますが、治療の選択肢は日々広がっており、患者さんお一人おひとりの状態やご希望に合わせて選べる幅が増えていると感じています。
当院での取り組みの背景
講演では、当院の体制についても少しご紹介しました。医師9名(非常勤8名)、看護師6名、管理栄養士4名、医療事務5名というスタッフ構成で、「世の中から、糖尿病難民をなくす」というミッションのもと、複数主治医制による診療を行っています。 2024年12月時点のデータでは、月間の来院患者さん1,580名のうち、インスリンポンプ療法(CSII)をお使いの方が29名、フリースタイルリブレ2をお使いの方が99名、デクスコムG7をお使いの方が93名でした。入院以外のすべての糖尿病治療に対応できるよう、CGMに関する学会のeラーニングは、看護師だけでなく医療事務や管理栄養士も自主的に受講しています。 診療の効率化にも取り組んでおり、電子カルテを4画面で表示できる診察室では、CGMやインスリンポンプのデータを一度に確認できる環境を整えています。こうした取り組みにより、患者さんが増え続ける中でも、院内滞在時間は初診1時間以内、再診40分以内を目標にしています。
認定教育施設に認定されました
このたび、当院は2025年12月1日付で、日本糖尿病学会の「認定教育施設III(無床)」に認定されました。非常勤の先生方にもご協力いただきながら、専門的な診療と教育活動を両立できる体制づくりを、これからも続けてまいります。
まとめ
肥満を合併する2型糖尿病は、意志の弱さではなく、長期的な向き合い方が必要な慢性疾患です
生活に合わせた小さな行動目標に落とし込むことが、続けられる治療につながります
「守れなかった理由」を一緒に探すことで、適切なサポートにつなげています
医師・管理栄養士・看護師が、ひとつの目標を共有しながらチームで支援しています
当院は2025年12月、日本糖尿病学会の認定教育施設IIIに認定されました
肥満や体重のことで治療を先延ばしにされている方、これまで「続けられなかった」経験のある方も、遠慮なくご相談ください。何が壁になっているのかを一緒に整理するところから、始めていきましょう。
【参考】American Diabetes Association Professional Practice Committee for Diabetes. Diabetes Care 2026;49(Suppl.1)/

