このたび澤木内科・糖尿病クリニックは、より高度な糖尿病診療・教育を行える施設として、日本糖尿病学会認定教育施設に認定されました。
実は、高い減量効果で注目されている最新の肥満症治療薬(GLP-1受容体作動薬「ウゴービ」や、GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド」)を保険適用(3割負担など)で処方するためには、単に医師がいるだけでなく、「学会認定の教育施設であること」など、国が定める非常に厳しい施設基準をクリアする必要があります。
つまり、一般的なクリニックであればどこでも保険で処方できるわけではありません。
今回の認定により、当院でもこれらの薬剤を用いた正規の保険診療が可能となりました。
この体制が整ったことを機に、医学的根拠に基づいた専門的な治療を提供するため、平日(月~金)限定で「肥満症外来」を新たに開設いたします。
「健康診断で肥満を指摘された」
「医師から痩せるように言われているがうまくいかない」
といったお悩みに対し、専門医とスタッフがチームで治療にあたります。
ただし、これらの新しいお薬を保険で使うには、国が定めた非常に厳しい「適応基準(しばり)」があります。
【重要】治療を受けるための必須条件
まず、以下の (1)と(2)の両方 を満たしている必要があります。
(1) 生活習慣病の治療薬をすでに飲んでいること
ここが非常に重要なポイントです。単に診断されているだけでなく、以下のいずれかの病気で「現在、お薬による治療を受けている」ことが条件です。
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高血圧
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脂質異常症
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2型糖尿病
※「検診で数値が高いと言われたが、薬は飲んでいない」という状態では、ウゴービ・ゼップバウンドの保険適用にはなりません。
(2) BMI(体格指数)の基準を満たしていること
肥満の度合いを示すBMIが、以下のいずれかである必要があります。
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BMI 35以上
- BMI 27以上 + 肥満に関連する健康障害(※)が2つ以上ある
(※耐糖能障害(2型糖尿病や耐糖能異常)、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風、冠動脈疾患、脳梗塞、代謝機能障害関連脂肪肝疾患(MAFLD)、月経異常・不妊、睡眠時無呼吸症候群、運動器疾患、肥満関連腎臓病など)
BMI(体格指数)の計算方法と早見表
ご自身のBMIがいくつかわからない方は、以下の計算式と早見表を参考にしてください。
計算式: 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m) = BMI
【BMI早見表】あなたの身長で対象となる体重は?
| 身長 | BMI 27 の目安(合併症が2つ以上ある方) | BMI 35 の目安(高度肥満の方) |
| 150cm | 60.8kg 以上 | 78.8kg 以上 |
| 155cm | 64.9kg 以上 | 84.1kg 以上 |
| 160cm | 69.2kg 以上 | 89.6kg 以上 |
| 165cm | 73.6kg 以上 | 95.3kg 以上 |
| 170cm | 78.1kg 以上 | 101.2kg 以上 |
| 175cm | 82.7kg 以上 | 107.2kg 以上 |
| 180cm | 87.5kg 以上 | 113.4kg 以上 |
保険診療ならではの「厳しいルール(しばり)」について
ウゴービやゼップバウンドは、美容目的のダイエット薬ではありません。そのため、厚生労働省のガイドラインにより、以下のような厳しいルールが義務付けられています。
これらは当院独自のルールではなく、保険診療を行うための国の決まりですので、必ずご理解ください。
1. すぐには処方できません(6か月の準備期間)
初診日にいきなりお薬を出すことはできません。
「最低6か月以上の食事・運動療法を行っても改善しない場合」という条件があるため、当院に通院しながら6か月間、管理栄養士の指導のもとで生活習慣改善に取り組んでいただく必要があります。
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期間: 当院初診から最低6か月間
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必須となる栄養指導の回数: 「2か月に1回以上」
この6か月の間に、管理栄養士による栄養指導を**「2か月に1回以上」**受け、その記録が残っていることが処方開始の絶対条件となります。
2. 「6か月後」の時点でも条件を満たす必要があります
ここが注意点です。6か月間、食事・運動療法を頑張った結果、
お薬を使い始める判定の日に、体重が減って「BMI基準(27や35)」を下回っていた場合、お薬の対象外(処方不可)となります。
「せっかく6か月待ったのに薬が使えないの?」と思われるかもしれませんが、「薬なしで痩せられた」ということは、医学的に見て最も素晴らしい成果(成功)です。当院では、薬を使うこと自体を目的にせず、皆様の健康改善を第一のゴールとしてサポートします。
3. 定期的な栄養指導が「必須」です
お薬を使い始めてからも、薬だけに頼らず生活習慣の改善を続ける必要があります。
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必須となる栄養指導の回数: 「2か月に1回以上」
治療期間中も、「2か月に1回以上」の頻度で栄養指導を受けることが、保険適用の継続条件です。
(※処方自体は、お薬の種類や時期によって「2週間ごと」や「4週間ごと」の通院が必要になる場合がありますが、栄養指導は最低でも2か月に1回の実施が義務付けられています。)
よくあるご質問(Q&A)
Q1. 1型糖尿病ですが、保険で使えますか?
A. 1型糖尿病そのものは、保険適用の要件である「肥満に関連する健康障害」には含まれません。
今回の新薬は、肥満が原因の一つになる「2型糖尿病」を対象としたルールになっています。
ただし、1型糖尿病の方であっても、BMIの条件(27以上など)を満たし、かつ「高血圧」や「脂質異常症」、「脂肪肝」などを併発している場合は、それらの病名を根拠に保険適用の対象となる可能性があります。まずは一度ご相談ください。
Q2. ほかの病院でウゴービ(またはゼップバウンド)を使っていました。転院したらすぐに続きを処方してもらえますか?
A. 原則として、転院後すぐに処方することはできません。
紹介状をお持ちの場合であっても、保険診療の厳格なルール上、「当院(処方する施設)において、6か月間の食事・運動療法の実績があること」が必要です。
そのため、転院された場合は、当院であらためて6か月間の準備期間(通院・栄養指導)を経てからの導入検討となります。
「医療機関が変われば、生活習慣の指導方針も変わる」という観点から、リセットが必要となる点をご理解いただけますようお願いいたします。
Q3. 治療を途中で中断してしまった場合、どうなりますか?
A. 治療の権利はリセットされ、再度「6か月間の準備期間」からのやり直しとなります。 仕事の都合などで通院が途絶えたり、毎月の栄養指導を受けられなかったりした場合、保険適用の要件である「継続的な指導」が満たせなくなります。 その場合、すぐに再開することはできず、改めて当院で6か月間の食事・運動療法を行い、それでも改善しない場合にのみ再投与が検討されます。
Q4. ウゴービとゼップバウンドは、最長でどれくらいの期間使えますか?
A. 臨床試験の結果に基づき、保険診療での投与期間には上限(リミット)があります。
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ウゴービ:最長68週(約1年4か月)
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ゼップバウンド:最長72週(約1年5か月)
これらのお薬は一生使い続けるものではなく、この期間内に生活習慣を整え、薬に頼らない体を作るための「期間限定のサポーター」です。
Q5. 決められた期間(68週・72週)が終わった後、もう一度使いたい場合はどうなりますか?
A. 原則として、治療期間終了後の継続処方(延長)はできません。 最大期間終了後は、お薬を中止し、食事・運動療法のみでの管理に戻ります。 万が一、中止後にリバウンドし、肥満に関連する健康障害が悪化してしまった場合には、「中止後、改めて6か月以上の食事・運動療法を行っても改善しない」という条件を満たせば、再投与が認められるケースもあります。 (※「予防のために使い続けたい」といった理由での再処方は認められません)
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肥満症外来は「平日限定」です。
本気で肥満症を治したい、将来の病気を予防したいとお考えの方は、ぜひ「肥満症外来」の初診をご予約ください。
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