この記事は2026年10月時点の情報です。
こんにちは。
澤木内科・糖尿病クリニック院長の澤木秀明です。
2026年10月10日(土)・11日(日)、京都大学百周年時計台記念館にて開催された「第13回日本糖尿病医療学学会」(会頭:林野泰明先生、天理よろづ相談所病院 内分泌内科部長、テーマ:「困難を希望に変える医療学:糖尿病を持つ人に寄り添い、ともに歩む」)にて、ランチョンセミナーの演者としてお話しする機会をいただきました。

演題は「糖尿病専門施設におけるG7による個別化治療の実現」。座長は大阪大学大学院医学系研究科の片上直人先生にお務めいただき、2026年10月11日12:00〜12:50、第2会場(国際交流ホールI)にて、約50分間お話しさせていただきました。

当日は、全国から集まられた糖尿病診療に携わる先生方を前に、日頃当院で実践している、リアルタイムCGM(持続血糖モニター)を活用した個別化治療についてご紹介しました。今回は、その内容の一部を、院長ブログでもご報告させていただきます。

なぜ今、リアルタイムCGMのエビデンスを整理する必要があるのか
講演ではまず、「HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)だけでは血糖値の変動の大きさが見えない」という課題からお話ししました。日本糖尿病学会の調査では、重症低血糖を起こした1型糖尿病の患者さんのうち、HbA1cが7%以下だった方が約3割、7.5%以下だった方が半数を占めていたことが報告されています。つまり、HbA1cの数値が一見良好であっても、重い低血糖が起こりうるということです。
この点を補う指標として近年重視されているのが、CGMで得られる「TIR(Time in Range、目標範囲内時間)」です。海外のデータ(Dexcom社のCGMを使用した糖尿病患者2,752名を対象とした観察研究)では、TIRが改善するほど死亡リスクが一貫して低下する一方、HbA1cは低すぎても高すぎてもリスクが上がる関係を示すことが報告されています。また、TIRとこうした予後との関連は、HbA1cで補正したあとも認められており、CGM指標がHbA1cとは独立した意味を持つ可能性が示されています(なお、この論文の著者にはデクスコム社の社員が含まれます)。
こうした知見を踏まえ、ADA(米国糖尿病学会)の2026年版診療ガイドラインでも、HbA1cに加えてTIRなどのCGM指標の目標値が明確化され、CGMは診断時から年齢を問わず、特にインスリン治療中の患者さんには最高レベルの推奨度で使用が勧められています。血糖管理は、HbA1cに加えてCGMを活用していく時代に移行しつつあると感じています。
当院の取り組み:CGMを活かすクリニック運営
CGMは、ただ処方すれば血糖コントロールが改善する魔法の機器ではありません。データを正しく読み取り、日々の生活や治療に反映させていくための体制づくりが欠かせないと、当院では考えています。
講演では、医師・看護師・管理栄養士・医療事務が役割を分担しながら、CGMやインスリンポンプのデータ確認、療養指導、栄養指導に取り組んでいる当院の体制もご紹介しました。2026年9月時点で、月間の来院患者数は約1,700名(うち9割が糖尿病の患者さん)、1型糖尿病の患者さんは約200名。インスリンポンプ(CSII)をお使いの方が約40名、フリースタイルリブレ2をお使いの方が約100名、デクスコムG7をお使いの方が約130名となっています。また、2025年12月1日付で、日本糖尿病学会の「認定教育施設III」(全国44施設・大阪府では2施設のうち1施設)に認定されました。

実際の使用経験から:個別化治療の工夫
講演の後半では、当院での実際の診療の工夫を、一般化した形で2つご紹介しました。
1つ目は、スマートフォンの操作に不慣れな患者さんでも、専用の受信機(モニター)を使うことで、リアルタイムCGMを問題なく活用できた例です。機種を選ぶ際には、スマートフォンでの使用を前提にするのではなく、お一人おひとりの生活スタイルに合わせて選択肢をご提案することが大切だと、あらためて感じています。
2つ目は、カニューレ(皮膚に挿入する細い管)の状態が外から確認しにくいパッチ型インスリンポンプを導入する際に、先にリアルタイムCGMを導入し、ポンプのトラブルにもアラート機能で早く気づけるようにしたうえで、外来で安全に移行できた例です。実際に、ポンプのトラブルに伴う高血糖が就寝中に発生した際も、CGMの高グルコースアラートがきっかけとなり、適切に対処できました。
新しいセンサーのご紹介:Dexcom G7 15Dayセンサー
講演の最後には、新しく発売されたDexcom G7 15Dayセンサーについてもご紹介しました。
従来の10日装着のセンサーに対し、15Dayセンサーは15日間に加えて12時間の猶予期間があり、月2回の交換で済むようになります。交換回数が減ることで、患者さんの負担軽減やアドヒアランス(治療の継続のしやすさ)の向上が期待されるほか、データの取得率が上がることで、より連続的で質の高い血糖パターンの把握にもつながると考えられます。精度の面でも、新しいアルゴリズムにより、装着期間を通じて安定した正確性が報告されています(この臨床試験はデクスコム社の資金提供により実施されています)。

こうした機器の進化は、患者さんの負担を減らしながら、より精度の高いデータに基づいた治療を可能にしてくれるものだと感じています。ただし、どの機種が最適かは、患者さんの生活スタイルや治療の段階によって異なります。当院では、特定のメーカーの機器を一律にお勧めするのではなく、複数の選択肢の中から、お一人おひとりに合った使い方を一緒に考えていくことを大切にしています。
まとめ
- 2026年10月11日、第13回日本糖尿病医療学学会(京都大学)のランチョンセミナーにて、「糖尿病専門施設におけるG7による個別化治療の実現」と題して講演しました
- HbA1cだけでは見えない血糖変動の大きさを、CGMのTIRなどの指標で補うことの重要性が、近年のエビデンスやADA2026ガイドラインで示されています
- CGMを活かすには、医師・看護師・管理栄養士が連携するクリニック運営の体制づくりが欠かせません
- 機種選択やポンプ導入の手順は、患者さん一人ひとりの生活や状態に合わせて個別化することが大切です
- 新しいDexcom G7 15Dayセンサーにより、交換回数の減少と安定した精度が期待できます
- 当院では複数メーカーの機器を取り扱っており、特定の製品のみをお勧めする立場ではありません。CGMやインスリンポンプについて気になることがあれば、外来でお気軽にご相談ください

▶関連記事:リブレの次に知ってほしいCGM「デクスコムG7」とは|精度・アラート・使い方を専門医が解説
▶関連記事:CGMで血糖管理は変わる?REAL J研究の結果と、Dexcom G7・リブレ2の選び方
【参考】
第13回日本糖尿病医療学学会 プログラム・ランチョンセミナー④「糖尿病専門施設におけるG7による個別化治療の実現」座長:片上直人先生、演者:澤木秀明(2026年10月11日、共催:第13回日本糖尿病医療学学会/デクスコムジャパン合同会社)
日本糖尿病学会「糖尿病治療に関連した重症低血糖の調査委員会報告」糖尿病60(12):826-842, 2017
Okuno T, et al. Diabetes Care. 2025; 48(10): 1794-1802(本論文の著者にはDexcom社の社員が含まれます)
Martens T, et al. BMJ Open Diab Res Care 2025;13:e005469/Martens T, et al. JAMA. 2021;325(22):2262-2272(本論文の著者にはDexcom社の社員が含まれます)
American Diabetes Association Professional Practice Committee for Diabetes. Diabetes Care. 2026; 49(Supplement_1): S132-S149, S150-S165
Garg SK, et al. Diabetes Technol Ther. 2022; 24: 373-380
Garg SK, et al. Diabetes Technol Ther. 2025 Jun;27(6):430-438(本試験はDexcom社の資金提供により実施されました)
※このページは2026年10月時点の情報にもとづく、一般的な情報提供を目的としたものです。製品の仕様や推奨は変更されることがありますので、実際のご使用にあたっては最新の添付文書をご確認のうえ、主治医にご相談ください。
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