「病院をかわったとたん、1型糖尿病っていわれました。」

「2型糖尿病だとばかり、思っていましたが1型糖尿病だったんですね。」
糖尿病の専門クリニックの外来ではよくある、糖尿病の患者さんから時折、いただく感想になります。

■2型糖尿病と見極めが難しいことがある、緩徐進行(かんじょしんこう)1型糖尿病とは

見た目は小太りの2型糖尿病にみえますが、調べてみたら、緩徐進行1型糖尿病であったという場合があります。
詳細は、緩徐進行1型糖尿病の診断基準を下記にしめします。

ざっくりいいますと、
自己免疫性糖尿病の目印である、GAD抗体が認められますが、まだ、インスリン分泌は残っている状態ということになります。
自己免疫性の糖尿病のときは、通常はインスリンが早期に作れなくなることが多く、ただちにインスリン注射が必要になるという背景があります。
将来、ゆっくりとインスリンが作れなくなって、インスリン治療が不可欠になるので、「緩徐進行性」と呼ばれています。

緩徐進行1型糖尿病の診断基準(2012年)
1型糖尿病調査研究委員会(緩徐進行1型糖尿病分科会)によりますと
必須項目
1、経過のどこかの時点でグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)抗体もしくは膵島細胞抗体(ICA)が陽性である。参照a)
2、糖尿病の発症(もしくは診断)時、ケトーシスもしくはケトアシドーシスはなく、ただちには高血糖是正のためのインスリン療法が必要とならない。参照b)

参照
a)IA-2抗体もしくはZnT8抗体に関するエビデンスは不十分であるため現段階では診断基準に含まない。
b)ソフトドリンクケトーシス(ケトアシドーシス)で発症した場合はこの限りではない。
出典:田中昌一郎ほか、糖尿病56(8):590-597、2013

■緩徐進行1型糖尿病を早期に診断し、治療につなげます。

臨床像からは2型糖尿病と区別がつきにくいです。
膵島関連自己抗体(GAD抗体、ICA抗体)を測定しないと診断できない。
緩徐にインスリン分泌低下が進行します。
インスリン依存状態になると血糖コントロール困難になります。その結果、糖尿病合併症の進展・悪化が心配されます。
著明な高血糖になる前に一度は膵島関連自己抗体を測定し、早期に診断することが重要となります。

■GAD抗体が陽性だが、インスリン分泌が保たれている場合、2型糖尿病に準じて治療される場合があります。

2型糖尿病の病態を呈する日本での成人糖尿病におけるGAD抗体陽性率は複数の研究合計から、インスリン治療患者を含む横断研究で3.4%、インスリン未使用患者の横断研究では2.2%と報告されています。
出典:川崎英二、日本臨床 内分泌症候群(第3版)、2019
2型糖尿病でたまたま、GAD抗体が検出されましたが、膵ベーター細胞が破壊されない、患者さんがいて、インスリン依存性糖尿病ではない患者さんが存在します。幸運なことにインスリン分泌は残ります。

■約1/3の症例ではGAD抗体陽性であっても長期間にわたりインスリン治療が必要としません。

緩徐進行1型糖尿病の治療戦略としては、
代謝性のストレスを減らし、ベーター細胞の再生力を上げて、膵臓のベーター細胞の保護をはかります。
細胞傷害性T細胞を減らし、制御性T細胞を増やして、膵島自己免疫の抑制をはかります。
実際の治療戦略は未確立であります。
インスリンによって膵臓のベーター細胞の疲弊を取り除いて、糖毒性の解除を目指します。
インスリンによって、ベーター細胞刺激による自己抗原発現の亢進や自己反応性T細胞の活性化を抑制し、膵島炎、ベータ細胞破壊の抑制をはかることになります。

■ワンポイントアドバイス

インスリン治療が選択される場合が多いですが、インスリン分泌が保たれていて、比較的血糖コントロールもいい場合は、2型糖尿病ともいえなくないので、内服薬などのインスリン治療以外も選択される場合があります。
内服薬ではスルホニル尿素薬(SU薬)で他剤に比べ、膵臓ベーター細胞機能保持が劣る結果がでていますので、SU薬以外で、良好な血糖コントロールを目指すことになります。