この記事は2026年8月時点の情報です。機器の仕様や保険上の取り扱いは変更されることがあります。ミニメド780Gの適応や導入の可否は、お一人おひとりの状態によって異なりますので、実際の判断にあたっては必ず主治医にご相談ください。
※2026年9月、注入セットの交換間隔を最大7日まで延ばせる新しい注入セットの発売情報を追記しました。


外来でポンプ療法のお話をすると、こうおっしゃる方が少なくありません。毎日のインスリン注射を続けてこられた方ほど、自分の判断を機械に委ねることへのためらいは大きいものです。そのお気持ちは、とてもよく分かります。
一方で、世界の糖尿病治療の考え方は、この数年で大きく動きました。
このページでは、インスリンを自動で調整するAID療法と、その代表的な機器であるミニメド780Gについて、何ができて、何に注意が必要なのか、そして当院で実際にどう導入を進めているのかを、順番にご説明します。
▶動画でも解説しています。ミニメド780Gの強みと、安全に使うために知っておいていただきたい注意点を、この記事とあわせてご覧いただけます。
AID療法は「優先される治療」になりました
まず、いちばん大きな変化からお伝えします。
アメリカ糖尿病協会が毎年発行している診療指針「Standards of Care」の2026年版に、新しい推奨が加わりました。

AIDシステム(インスリン自動投与システム)は、1型糖尿病の方だけでなく、頻回注射や従来型ポンプで治療中の2型糖尿病の方にとっても、優先されるインスリン投与方法である、という内容です。
1型糖尿病と成人の2型糖尿病については、もっとも高いエビデンスレベルAの推奨として記載されています。
さらに、基礎インスリンのみの治療で血糖目標を達成できていない2型糖尿病の方についても、AIDシステムの使用を考慮するという推奨が示されました。
インスリンポンプは1型の方のための特別な治療、という時代は終わりつつあります。
これは、AID療法が「一部の方のための特別な治療」から、「まず検討されるべき標準的な選択肢」に位置づけが変わったことを意味します。
もちろん、同じ指針には、どのシステムを選ぶかは、その方の状況・希望・ニーズに基づいて決めるべきだ、とも書かれています。

全員がポンプにすべきだ、という話ではありません。それでも、選択肢として一度は知っておいていただきたい治療になった、ということです。
ミニメド780Gとは

ミニメド780Gは、CGM(持続血糖モニター)とインスリンポンプが連動するインスリン自動投与制御(automated insulin delivery:AID)を行う機器です。
日本で初めて、基礎インスリンと補正インスリンの両方を自動調整するAHCL(Advanced Hybrid Closed Loop)を搭載し、2023年2月に製造販売承認を取得、同年11月から販売されています。
なお、開発元であるメドトロニック社の糖尿病事業は2026年に独立し、現在はMiniMed社(日本法人:ミニメドジャパン合同会社)が販売とサポートを担っています。
仕組みを簡単に言うと、体に装着したセンサー(ガーディアン4センサー)が皮下のグルコース値を連続的に測定し、その値をもとに、ポンプがインスリンの注入量を自動で調整します。
高血糖には自動で補正ボーラスを注入し、センサーグルコース値を70〜180mg/dLの範囲内に保つように働き続けます。
この判断を、寝ている間も含めて24時間、システムが続けてくれます。この自動調整の機能をスマートガードと呼びます。

ミニメド780Gができること

目標血糖値を設定できます
目標血糖値は100・110・120mg/dLから選択が可能です。国際的には、目標血糖値を100mg/dLにするのが標準になりつつあります。
当院でも、目標血糖値を120mg/dLに設定して開始し、慣れに応じて低血糖の懸念がなければ100mg/dLへと調整していく進め方と最初から100mg/dlにする場合と様々です。
低血糖を避けたい場合には120mg/dLや110mg/dLにしたりと、バランスを見て決めることが大切です。
また、運動時など低血糖が起こりやすい場面では、一時目標血糖値を150mg/dLに設定して乗り切る方法もあります。
基礎インスリン注入の自動調整
過去のインスリンの注入履歴とセンサーグルコース値をもとに、基礎インスリン注入を自動調整します。
さらに、最大基礎レートに達し、センサーグルコース値が120mg/dLを超えている場合、システムは5分毎に自動補正(1時間に最大12回)を判断してくれます。
追加インスリン(ボーラスインスリン)注入について
食事などのボーラスインスリンは全自動ではなく、糖質量を入力することで計算されて注入されます。糖質を数えることをカーボカウントといいます。

ざっくりでもいいので、食事の糖質量を推定できることが必要です。食べる予定の食品のカーボカウントをしてインスリン量を決めることで、食後の血糖値上昇に配慮した食事にすることができます。
ここが唯一、使う方の操作が残る部分です。逆に言えば、ここさえ習得すれば、残りの多くをシステムに任せられます。
血糖測定の回数は激減します
スマートガードでは血糖値を入力する必要がなく、センサーグルコース値(SG値)に基づいてインスリン注入量が調整されます。
スマートガード機能が無効である場合は、マニュアルモードで動作します。ミニメド780Gシステムでは、較正または治療決定のための指先穿刺は原則必要なく、グルコース値とトレンド矢印の組み合わせに基づいて決定されます。
ただし、血糖自己測定が完全に不要になるわけではありません。

マニュアルモードで動作しているとき、アラートが出たとき、センサーの値と自覚症状が合わないとき、そして運転など重要な判断の前には、指先での血糖測定による確認が必要です。測定器は引き続き携帯してください。
対象となる方

ミニメド780Gの対象は、皮下投与のインスリンに反応する小児・青年・成人です。
自動調整(スマートガード機能)の対象は、添付文書上、インスリン分泌が高度に障害された方のうち、1型糖尿病など2歳以上の方、2型糖尿病では18歳以上の方とされています。あわせて、1日のインスリン総量が6単位以上250単位以下であることも条件です。グルコース値が事前に設定した閾値を下回る、または下回ることが予想される場合には、インスリン注入を一時停止する機能も備わっています。
2型糖尿病の方についても、添付文書上、18歳以上でインスリン分泌が高度に障害された方はスマートガード機能の対象に含まれています。あわせて国際的な指針でもAIDシステムが推奨に含まれるようになりました。
日本の保険診療でも、CGMと連動する持続皮下インスリン注入療法(AID)は、在宅自己注射指導管理料(複雑な場合)に、間歇注入シリンジポンプ加算と、間歇注入シリンジポンプと連動する持続血糖測定器加算を組み合わせる枠組みで行われており、低血糖を繰り返すなど血糖コントロールが不安定な2型糖尿病の方も、条件を満たせば対象になります。
ただし、機器の機能ごとに対象の定めがあり、適応の判断は個別性が高いため、2型糖尿病でポンプ療法をご検討の方は、まず診察でご相談ください。
センサーの装着部位は年齢によって異なり、2歳から17歳の方は上腕背面と臀部、18歳以上の方は腹部と上腕背面への挿入が承認されています。装着部位が限定的なぶん、インスリン皮下硬結ができやすいため、ペン型インスリン注射のときより注意を払って装着部位を選んでいただきます。

外来でご相談を受ける中で、特にメリットを感じていただきやすいのは、夜間の低血糖が心配で安心して眠れない方、血糖変動が大きく頻回注射では調整しきれない方、生活リズムが不規則な方、妊娠に向けて血糖管理を厳格にしたい方です。
一方で、機器の装着そのものに抵抗が強い方には無理におすすめしません。頻回注射とCGMの組み合わせでも良い管理は実現できます。
当院の外来で安全にミニメド780Gを始めるには

あわてず、いそがず、あなどらず。
学ぶことが多いので、着実に扱いを理解していただきながら、数ヶ月かけて導入するケースが多くあります。
一気にミニメド780G(AID)まで導入したケースもありますが、学習量が多くなると大変ですので、外来導入の場合は安全第一でお願いしております。
導入して終わりではなく、ここからが本番です。データを見ながら、目標値や食事の設定を外来で継続的に調整していきます。
知っておいていただきたい注意点

インスリン投与とポンプの使用に関連したリスク
インスリン投与とポンプの使用に関連したリスクとして、低血糖や高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、てんかんなどの発作、昏睡状態、死亡が挙げられています。

機械を過信せず、おかしいなと思ったら指先穿刺をして血糖値を測定する。この原則がすべての土台です。
ポンプは超速効型インスリンだけを使うため、注入が中断されると数時間で高血糖からケトアシドーシスに至る危険があります。原因として回路の閉塞(つまり)が考えられる場合は、回路の交換が必要です。
ボーラスを打っても血糖値が下がらないとき、思い当たらない高血糖が続くときは、閉塞を疑ってください。アメリカ糖尿病協会の2026年の指針でも、注入セットの脱落と閉塞は早期に認識して対処すべき合併症として明記されています。

そして、ポンプがおかしいときには、すぐにペン型のインスリン注射を行うことを理解しておく必要があります。予備のペン型インスリンと注射針は、必ず手元に置いておいてください。
注入セットと皮膚のトラブル
装着のたびに場所を変えることは、ポンプ療法を長く続けるうえでの基本です。診察の際には、装着部位の状態も一緒に確認させてください。
なお、注入セットの交換間隔そのものを延ばせる新しい製品も発売されています。詳しくは以下の記事をご覧ください。
▶関連記事:インスリンポンプの注入セット交換が最大7日に
注入セットに関連するリスクとして、限局性感染症、皮膚の炎症や発赤、あざ、不快感または痛み、出血、刺激感、かぶれがあげられます。症状に応じて、保湿剤や剥離剤、外用薬を用いるなど、対処法を一緒に模索していきます。
また、同じ場所に装着し続けると、皮下に脂肪のかたまり(リポハイパートロフィー)ができ、インスリンの吸収が不安定になって、血糖変動の増大や原因の分からない低血糖につながります。
装着のたびに場所を変えることは、ポンプ療法を長く続けるうえでの基本です。診察の際には、装着部位の状態も一緒に確認させてください。
ポンプの位置と注入部位の「高さの差」
2026年にメーカーから、ポンプ本体と注入部位の高低差に関する新しい安全性情報が発出されました。ポンプを注入部位より大きく高い位置・低い位置に配置すると、意図しないインスリンの過剰注入や過少注入が起こりうる、という内容です。詳しくは、次の記事で解説しています。
▶関連記事:【重要】ミニメド780G-インスリンポンプの安全性に関する最新情報 〜低血糖の原因のひとつが判明しました〜
カロナール(アセトアミノフェン)を使用するときの注意点
解熱鎮痛薬のアセトアミノフェン(カロナールなど)を服用すると、センサーのグルコース値が実際よりも高く表示されてしまいます。実際より高く表示されると、システムがインスリンを過剰に投与し、低血糖を引き起こす恐れがあります。市販の総合感冒薬にも含まれていることがあるため、注意が必要です。
当院では、次の対応をご説明しています。解熱剤の選択で可能であれば、ロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン)を選択して対応する場合があります。 アセトアミノフェンを服用する場合は、血糖値の確認に応急で血糖自己測定器の測定値を使用すること。食事ボーラスや補正ボーラスを計算するときには、グルコース値ではなく指先穿刺をした血糖値を使用すること。また、スマートガード機能を使いながらカロナールを服用した際は、最大8時間を限度に、一時目標血糖値を設定する方法を検討する場合があります。
費用について
ミニメド780Gによる治療は保険診療です。CGMと連動する持続皮下インスリン注入療法として、在宅自己注射指導管理料(複雑な場合)に、ポンプおよび連動する持続血糖測定器の加算を組み合わせる形で診療報酬が構成されています。自己負担額は、保険の種類、高額療養費制度、各種の医療費助成制度によって変わります。金額の目安と利用できる制度については、診察の際に具体的にご説明しますので、費用面のご不安もそのままお聞かせください。
澤木内科・糖尿病クリニックで大切にしていること

AID療法は、機器を渡して終わりの治療ではありません。設定の調整、トラブル時の対応、生活の変化に合わせた見直しと、導入後の伴走が結果を左右します。
当院では、約40名の方がインスリンポンプ療法を続けておられ、AID・SAP療法に対応しています。CGMをお使いの方は約230名にのぼります。
糖尿病専門医を含む複数の医師と、糖尿病療養指導の資格を持つスタッフが、日本糖尿病学会の認定教育施設として、導入から日々の調整までを診療体制として支えています。

「機械に任せるのが怖い」
という最初のご質問に戻ると、私はこうお答えしています。

任せきりにするのではなく、任せられる部分を増やして、ご自身は生活のほうに力を使ってください。そのための調整は、私たちが一緒にやります。
まとめ
よくある質問
Q. 食事のときも全自動ですか?
A. いいえ。食事の際は、糖質量を入力してボーラスを行う操作が必要です。780Gが自動で行うのは、基礎インスリンの調整と補正です。カーボカウントは導入前の準備段階から練習しますので、初めての方もご安心ください。
Q. 何歳から使えますか?
A. 添付文書によると、自動調整(スマートガード機能)の対象は、1型糖尿病など2歳以上の方、2型糖尿病では18歳以上の方です(インスリン分泌が高度に障害されていることが前提です)。あわせて、1日のインスリン総量が6単位以上であることも条件です。センサーの装着部位は年齢で異なります。詳しくは診察でご確認ください。
Q. 2型糖尿病でも使えますか?
A. 使える場合があります。添付文書上、自動調整(スマートガード機能)は18歳以上でインスリン分泌が高度に障害された2型糖尿病の方も対象に含まれています。2026年の国際指針では、頻回注射などで治療中の2型糖尿病の方にもAIDシステムが優先される投与方法として推奨されました。日本の保険診療でも、低血糖を繰り返すなど血糖コントロールが不安定な2型糖尿病の方は、条件を満たせばCGMと連動する持続皮下インスリン注入療法の対象になります。機器の機能ごとに対象の定めがあるため、適応は診察でご相談ください。
Q. 導入までどれくらいかかりますか?
A. 当院の外来導入では、CGMやカーボカウントに慣れる期間を含めて、数ヶ月かけて段階的に進めるケースが多くあります。習得状況に応じて短縮できる場合もありますが、安全第一を優先しています。
Q. 今は別の病院に通っています。相談だけでも可能ですか?
A. 可能です。現在の主治医からの紹介状をお持ちいただけると、治療経過を踏まえたご相談ができます。
Q. 機器が故障したらどうすればよいですか?
A. メーカー(ミニメドジャパン)の24時間サポートラインが機器のトラブルに対応しています。あわせて、ポンプが使えない間はペン型インスリンに切り替えられるよう、予備のインスリンと注射針を常に手元に置いておいてください。切り替え時の対応は、導入時にご説明します。
参考文献
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- American Diabetes Association「Standards of Care in Diabetes—2026」Section 7: Diabetes Technology(推奨7.25a・7.25b)
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- 日本メドトロニック株式会社 プレスリリース(2023年11月27日)「インスリンポンプ『ミニメド780Gシステム』リアルタイムCGM『ガーディアン4スマートCGMシステム』を発売」
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- MiniMed 780Gシステム ユーザガイド
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- ミニメドジャパン合同会社「事業開始に関するお知らせ」(2026年3月11日) ※メドトロニック社糖尿病事業の分社独立により、現在はMiniMed社が販売・サポートを担当
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- 医薬品医療機器等法 添付文書:メドトロニック ミニメド700シリーズ(モデル780Gポンプ、ガーディアン4システム)医療機器承認番号:30300BZX00256000(2026年5月改訂 第7版)
- 販売名:メドトロニック ミニメド 700シリーズ(医療機器承認番号:30300BZX00256000)
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