※2026年7月、1型糖尿病と2型糖尿病の比較表、および実際の診療で見極めの手がかりとなるポイントを追加し、内容を充実させました。

「1型糖尿病と2型糖尿病ってどうちがうの?」
「1型糖尿病と2型糖尿病って共通点があるの?」
「1型糖尿病と2型糖尿病を見分けるのが難しい場合があるの?」

「私って、本当に1型糖尿病なのかしら。」
「私って、本当は2型糖尿病なのかしら。」
澤木内科・糖尿病クリニック院長の澤木秀明です。
外来で、こうしたご質問をいただくことが少なくありません。

今回は、1型糖尿病と2型糖尿病を比較しながら、なぜ見極めが難しい場合があるのかを、詳しく解説します。
■1型糖尿病と2型糖尿病、何が同じで何が違うのか
両者に共通しているのは、すい臓のベータ細胞(インスリンを作る細胞)がダメージを受けているという点です。しかし、なぜダメージを受けるのか、その「原因」はまったく異なります。
| 比較項目 | 1型糖尿病 | 2型糖尿病 |
|---|---|---|
| 主な原因 | 自己免疫によるベータ細胞の破壊 | 糖毒性・脂肪毒性・インスリン抵抗性の蓄積とインスリン分泌低下 |
| 糖尿病全体に占める割合 | 約10〜15% | 大部分 |
| 発症しやすい年齢層 | 若年者に多いが、緩徐進行型は中高年でも発症 | 中高年に多いが若年でも発症 |
| 体型の傾向 | やせ型が多いが、緩徐進行型は小太り体型のことも | 肥満・過体重の方が多い |
| 進行のスピード | 病型により数日〜数年と幅がある | 年単位でゆっくり進行することが多い |
| 治療の中心 | インスリン補充が基本 | 生活習慣見直し・内服薬・インスリンと段階的 |
1型糖尿病:自己免疫による攻撃
多くは自己免疫性と考えられています(劇症1型糖尿病では、これに加えてウイルス説なども議論されています)。細胞障害性T細胞やマクロファージといった免疫担当細胞から放出されるサイトカインや酸化ストレスによって、すい臓のベータ細胞がダメージを受けます。自己免疫性の糖尿病では、患者さん自身の免疫担当細胞が自分のすい臓を攻撃してしまい、インスリンの合成や分泌ができなくなっていきます。
2型糖尿病:負担の蓄積によるすり減り
糖毒性、脂肪毒性、インスリン抵抗性などが原因で、すい臓のベータ細胞が弱っていきます。出生後のすい臓のベータ細胞量は、糖尿病でない方でも成人以降は徐々に減っていきますが、2型糖尿病の患者さんでは、より顕著に、進行性に減っていくと提唱されています。一方で興味深いことに、非糖尿病の肥満の方では、すい臓のベータ細胞量はむしろ増加するとされています(出典:Rhodes CJ, Science, 2005)。

■数字で見る、1型糖尿病の実際

1型糖尿病は、全糖尿病の約10〜15%を占めるとされています。
「糖尿病といえば2型」というイメージをお持ちの方も多いのですが、意外にも1型糖尿病の方が多いことが、近年の調査で分かってきています。
2型糖尿病と比較すると、1型糖尿病は若年者に多く、病気とつきあう期間が長く、QOL(生活の質)への影響が著しいという特徴があります。現在の治療の主体は、すい臓で作られなくなったインスリンを補うことです。そのため、インスリン注射による治療を上手に行いながら、生活のリズムに糖尿病治療をどう合わせていけるかが、大きなテーマになります。
近年は移植医療の進展もみられ、膵島移植によって12年以上生着している方もおられるとの報告もあります。
■1型糖尿病の3つのタイプ
1型糖尿病は、「糖尿病になるまでにどれくらいの期間がかかったか」に着目して、3つに分類されています。
劇症1型糖尿病、急性発症1型糖尿病は、短期間で糖尿病になるため、診断基準を参照すればインスリン分泌が低下し、生存にインスリン注射が欠かせない「インスリン依存状態」であるかどうかに迷うことは少ないです。1型糖尿病のインスリン治療についてはこちらで詳しく解説しています。
一方、緩徐進行1型糖尿病は、まだ生存にインスリン注射が欠かせないインスリン依存状態になっていない場合があります。ここが、2型糖尿病との見極めが難しくなる、最大のポイントです。

■なぜ「見極め」が難しいのか:緩徐進行1型糖尿病というグレーゾーン

見た目は小太りの2型糖尿病にみえるのに、調べてみたら緩徐進行1型糖尿病であった、という場合があります。(緩徐進行1型糖尿病の詳細はこちら)
一方で、緩徐進行1型糖尿病と思われている方の中には、実はまったく進行しないように見える患者さんも含まれている、との報告があります。つまり、インスリン分泌が枯渇することなく保たれている幸運な方で、2型糖尿病の治療を受けている中で、たまたまGAD抗体という1型糖尿病の目印が陽性だった、という可能性があるのです。

2023年に日本糖尿病学会の診断基準が改訂され、こうした「インスリン分泌がまだ保たれている段階」は、「緩徐進行1型糖尿病(プロバブル)」として、インスリン依存状態に進行した方(definite)とは区別して診断されるようになりました。
詳しい基準は、緩徐進行1型糖尿病の記事でご確認いただけます。

■実際の診療で、どんなときに1型糖尿病を疑うか
2型糖尿病として治療を受けている方の中に、実は緩徐進行1型糖尿病の方が隠れていることがあります。以下のような特徴がある場合、私たち専門医は、抗体検査を含めた見極めを検討します。

- 内服薬による治療を続けても、血糖コントロールがなかなか改善しない、あるいは悪化していく
- やせ型の体型で糖尿病を発症した、あるいは治療中に急激な体重減少がみられる
- ケトーシス(ケトン体陽性)を繰り返す
- ご家族に1型糖尿病の方がいる
- 過去に妊娠糖尿病と診断された方で、その後の血糖コントロールが急速に悪化する
こうしたサインがある場合は、GAD抗体などの膵島関連自己抗体の検査を一度受けていただくことをおすすめします。

■ワンポイントアドバイス
2型糖尿病のように考えられて治療されている中に、実は緩徐進行1型糖尿病の患者さんがおられたり、逆に緩徐進行1型糖尿病と考えられていても、インスリン分泌機能がしっかり保たれている方もおられます。
インスリンが出なくなった1型糖尿病の場合、持効型インスリンは手放せません。血糖コントロールがうまくいかない、体重が急に減った、といったサインに気づいたときは、自己判断せず、一度検査を受けていただくことをおすすめします。ご不安な点があれば、診察の際にお気軽にご相談ください。



