「糖尿病の食事療法では厳しいカロリー制限をしないといけないんですよね?」
「糖尿病になると食べられる量や食材が限られてしまって悲しい。」
「おやつは一生食べれないですよね。」
「糖尿病専門医はこわいんでしょ。」

昔の栄養相談(指導)で食事量を減らすよう、厳しく言われたことがある方へ…
上記はよくある、誤解です。

糖尿病の食事療法に関するガイドラインが改訂され、食事の幅が広がりました!
食事を楽しみながら、工夫することが可能になってきました。

そこで、当院の管理栄養士の協力のもと、このブログを書くことにしました。

 

数年前に栄養相談を受けた方は、糖尿病の食事療法に対して上記のような印象をお持ちなのではないでしょうか。
また、糖尿病と診断されて、ショックのあまり、極端に減らす方がみられます。

 

糖尿病の治療は日々アップデートされています。
食事療法に関しても、2019年に改訂されたガイドラインで大きな変更がありました。

 

■最新の食事療法では「個別化」が重要視されています

BMIってご存知ですか。
人の肥満度をあらわす、体格指数のことをいいます。
BMIは体重と身長から算出されます。

昔の糖尿病治療においては、目標の体重は一律で理想の体格指数「BMI22」で計算していました。

つまり目標体重は理想体重である、「身長(m)×身長(m)×22」だったんです。

しかし、新しいガイドラインでは

目標とする体重は患者の年齢、病態によって異なることを考慮し、個別化を図ることが重要である。

と記載されています。

具体的には以下のように目標体重を求めます。

65歳未満:身長(m)×身長(m)×22 kg

65~74歳:身長(m)×身長(m)×22~25 kg

75歳以上:身長(m)×身長(m)×22~25* kg
*75歳以上では現体重に基づき、フレイル、(基本的)ADL低下、併発症、体組成、身長の短縮、

摂取状況や代謝状態の評価を踏まえ、適宜判断することになります。

ただし、上記の目標体重はあくまでも目安であり、実際にはどの年代においても現在の体重や体組成などを考慮し、医師や管理栄養士と相談しながら個別に目標体重を決めていきます。
多すぎず、減らしすぎずですね。

例えば、高度の肥満である方がいきなりBMI22を目標体重とするのは現実的ではありませんし、短期間で急激に体重を落とすと大切な筋肉まで減ってしまう懸念があります。
そのような場合は、まずは5%体重を減らす、のように目標体重を決めます。

 

■摂取できるエネルギー(カロリー)量が以前より増える可能性があります

理由はずばり、普通の労作の方の目安となる摂取するエネルギー量が増えたんです。

目安となる摂取エネルギー(カロリー)量は、「目標体重」に「身体活動レベルと病態によるエネルギー係数」をかけて求めます。
「エネルギー係数」は、

①軽い労作:25~30

普通の労作:30~35

③重い労作:35~

となります。

「普通の労作」とは、「座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、通勤・買い物での歩行、家事、軽いスポーツのいずれかを含む場合」とされています。

この内容だと、ほとんどの方が「普通の労作」に当てはまるのではないでしょうか。
以前はこのくらいの労作内容だと「軽い労作」として扱われていました。

新しいガイドラインになったことにより、多くの方のエネルギー係数が増え、目安となる摂取エネルギー量も増えることとなりました。

ただしこのエネルギー係数も目安であり、実際には年齢や現在の体重を考慮して個別に定められます。

例えば身長170cm、体重70kg(BMI24)の68歳の男性で、家事を日常的に行っている方のような場合、
以前のガイドラインでは目標体重は64kg(BMI22)であり、減量が必要とされていました。

また、エネルギー係数は「25~30」とされ、摂取エネルギー量は1600kcal~1920kcalでした。
しかし新しいガイドラインでは、目標体重は現体重でOK

※実際には体脂肪量なども考慮し求めます

エネルギー係数は「30~35」であるため、摂取エネルギー量は2100kcal~2450kcalとなります。
このエネルギー量をもとに、実際の食事と比較して無理のない食事療法を、

患者さん1人1人と相談しながら決めていくことになります。

 

■糖尿病の食事療法については、定期的に主治医に相談し、時には管理栄養士による栄養相談(指導)をうけられてはいかがでしょうか。

特に「糖尿病の食事療法は辛い」というイメージがある方はぜひ相談してみてください。
食べられる幅が広がり、より自分らしい食生活を楽しみながら食事療法に取り組めることと思います。

栄養相談(指導)は管理栄養士と現在の食生活を見直して、納得して取り組んでいただける食事の内容を相談する場となります。

保険診療で認められていますので、活用いただけたらと思います。