こんにちは。澤木内科・糖尿病クリニック院長の澤木秀明です。
1型糖尿病の治療は、この20年ほどで大きく進歩しました。インスリンの製剤が改良され、インスリンポンプや、血糖値を連続して測るCGM(持続血糖測定)が使えるようになり、今ではCGMの値に合わせてインスリンの量を自動で調整する「AID(自動インスリン投与)」も登場しています。
このページでは、1型糖尿病の今の治療の全体像を、項目ごとにわかりやすくまとめました。それぞれの項目から、さらに詳しい記事にも進めます。

1型糖尿病は、生活習慣が原因で起こる病気ではありません。治療の選択肢は以前よりずっと増えています。ご自分の生活に合う方法を、一緒に探していきましょう。
1型糖尿病の治療は大きく進歩しています
1型糖尿病は、自己免疫などによって、すい臓でインスリンを作る細胞(β細胞)が壊れ、インスリンがほとんど、または全く作られなくなる病気です。そのため、治療の中心は、体の外からインスリンを補うことです。
治療の進歩によって、
- 1型糖尿病と診断された子どもたちが、元気に成長し、進学・就職していく
- 計画的に血糖値を整えて、妊娠・出産をされる
- 血糖値をよい状態に保つことで、合併症の発症を遅らせたり、防いだりする
ことが、以前よりずっと期待できるようになりました。
一方で、インスリンの量の調整、低血糖への備え、体調をくずしたときの対応など、毎日の自己管理は欠かせません。治療の道具をうまく使いながら、その負担を少しでも軽くしていくことが、今の1型糖尿病治療の目標です。
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治療の柱は「インスリンの補充」です
健康な人のすい臓は、2種類の出し方でインスリンを分泌しています。1型糖尿病の治療では、この2つを、注射やポンプで補います。
| 体の中のインスリン | 治療で補うインスリン |
|---|---|
| 基礎分泌(食事と関係なく、24時間少しずつ出ている) | 持効型インスリン(通常は1日1〜2回の注射)、またはポンプからの持続注入(ベーサル) |
| 追加分泌(食事のときに多く出る) | 超速効型インスリン(食事ごとの注射)、またはポンプからのボーラス注入 |
なお、成人では週1回注射する基礎インスリンの製剤もありますが、1型糖尿病での使用は、低血糖のリスクなどを踏まえて慎重に判断します。その場合も、食事のインスリンは別に必要です。
このように基礎と追加の両方を補う方法を「強化インスリン療法」といいます。方法は大きく分けて次の2つです。
- 頻回注射療法(ペン型注射):基礎インスリンの注射と、食事などに合わせた超速効型インスリンの注射を組み合わせます。
- インスリンポンプ療法:小さな機械から、超速効型インスリンを持続的に注入します。CGMと連動して基礎インスリンを自動で調整するAIDに対応した機種もあります。機種によっては高血糖の補正も自動でおこないますが、食事の糖質量の入力や、食事のインスリンを入れる操作などは必要です。
それぞれに利点と負担があります。AIDで血糖管理が改善する場合もありますが、生活スタイル、血糖値の動き方、ご本人の希望などに合わせて選びます。ポンプやAIDも、使い方を少しずつ身につけていく道具です。
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当院では、ペン型注射に加えて、インスリンポンプやAIDの導入・継続も外来でおこなっています。▶当院のインスリン治療について(公式サイト)
血糖値の流れを「見える化」するCGM
CGM(持続血糖測定)は、腕などに貼ったセンサーで、皮下の間質液(細胞の周りの液体)に含まれる糖の濃度を連続して測る機器です。指先での測定(血糖自己測定)では点でしか分からなかった血糖値を、1日の流れ(線)として見ることができます。
- 食後に血糖値がどのくらい上がるか
- 寝ている間に低血糖になっていないか
- 運動や体調によって、どう変わるか
などが分かり、インスリンの量や食事・運動の工夫に役立ちます。機種によっては、低血糖や高血糖をアラームで知らせる機能もあります。
ただし、血糖値が急に変わるときなどは、CGMの値と指先で測る血糖値との間に、差や時間差が生じることがあります。症状とCGMの値が合わないときや、低血糖の症状があるときは、指先での血糖測定で確認しましょう。
なお、低血糖が疑われ、すぐに測定できない場合は、確認のために対処を遅らせないでください。意識がはっきりしていて安全に飲み込める場合は、指導された方法でブドウ糖などをとってください。
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当院では、フリースタイルリブレ2、デクスコムG7などのCGMを外来で導入しています。▶血糖コントロールでお困りの方へ(公式サイト)
治療の目標は「HbA1c」と「目標範囲内の時間」
治療の目標には、これまでのHbA1cに加えて、CGMで分かる「目標範囲内の時間(TIR)」が使われるようになりました。
| 指標 | 妊娠中を除く、多くの成人の方の目安 |
|---|---|
| HbA1c | 合併症予防のための目標は7.0%未満 |
| 目標範囲内の時間(TIR:70〜180mg/dL) | 1日の70%より多く |
| 低血糖の時間(70mg/dL未満) | 1日の4%未満 |
| さらに低い血糖の時間(54mg/dL未満) | 1日の1%未満 |
目標の達成状況は、一定期間のCGMのデータをまとめて評価します。日々の低血糖や血糖値の動きも、調整の参考にします。また、これは一般的な目安です。年齢、低血糖の起こりやすさ、妊娠中かどうかなどによって、目標は一人ひとり異なります。HbA1cを下げることだけを目指すのではなく、低血糖をできるだけ減らすことも同じくらい大切です。ご自分の目標は、主治医と相談して決めましょう。
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低血糖・シックデイ・ケトアシドーシスへの備え
1型糖尿病では、次の3つに前もって備えておくことが、安全に治療を続けるうえで欠かせません。
- 低血糖:ブドウ糖を持ち歩き、症状や対処法を確認しておきましょう。重症低血糖に備えるグルカゴン(点鼻薬など)は主治医に相談し、処方された場合は、ご家族などと使い方・保管場所を共有してください。意識がはっきりしない場合などは、周りの方が使用とあわせて119番に連絡してください。
- シックデイ:インスリン依存状態の方は、風邪や胃腸炎などで食べられないときも、基礎インスリンの補充が必要です。自己判断でインスリンを中止せず、基礎インスリンや食事・補正のインスリンの調整は、あらかじめ主治医と決めた方法でおこないます。
- 糖尿病ケトアシドーシス(DKA):インスリンが足りない状態が続くと起こる、命にかかわる状態です。インスリンの打ち忘れ、ポンプの注入不良、体調不良がきっかけになります。ポンプを使う方は、注入が止まったときに備え、予備のインスリン・注射針、血糖測定器を準備し、代わりに注射する方法、その後のポンプ・AIDの再開方法、連絡先を事前に確認しておきましょう。
また、指示された対応をしても高血糖が続く場合や、ポンプの注入停止を解消できず、代わりの注射もできない場合は、症状がなくても速やかに医療機関へ連絡してください。時間外の連絡先も事前に確認しておきましょう。
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食事と運動
1型糖尿病の食事は、「食べてはいけないもの」を決める食事ではありません。健康的でバランスのよい食事を基本に、食べる量、特に炭水化物(糖質)の量に合わせてインスリンを調整していきます。炭水化物の量を見積もってインスリン量を決める方法を「カーボカウント」といいます。
運動は、体力の維持や心身の健康に役立ちます。一方で、運動中や運動後、時には翌日の夜にかけて低血糖が起こることがあるため、運動の前後の血糖値の確認や、インスリン・補食の調整が必要です。
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学校・仕事・妊娠・運転など、生活の場面ごとに
1型糖尿病は、若い年代で発症することも多い病気です。進学、就職、結婚、妊娠・出産など、人生のさまざまな場面で、治療をどう続けていくかが課題になります。
- 学校・仕事:低血糖への備えや、注射・測定ができる場所について、必要に応じて周りの方と相談しておくと安心です。
- 妊娠・出産:妊娠前から血糖値を整えておく「計画妊娠」が大切です。妊娠を考え始めたら、早めに主治医に相談しましょう。
- 運転:運転前の血糖値の確認と、運転中の低血糖への備えが欠かせません。
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当院では、小児科から内科へ移る時期の中学生・高校生・大学生の方の診療もおこなっています。▶中学生・高校生・大学生の糖尿病外来(公式サイト)
医療費と支援制度
1型糖尿病の治療は長く続くため、医療費の負担も気になるところです。年齢や収入、お住まいの地域によって、使える制度が異なります。
- 子どもの方:小児慢性特定疾病の医療費助成など
- 成人の方:高額療養費制度など
詳しくは、次の記事をご覧ください。分からないことは、外来でもご相談いただけます。
▶関連記事:1型糖尿病の医療費助成制度(特に成人の方向け)
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定期的な検査で合併症を防ぐ
血糖値が高い状態が長く続くと、目・腎臓・神経などに合併症が起こることがあります。合併症は早い段階では症状がないことが多いため、症状がなくても、定期的に検査を受けることが大切です。
- 眼科での眼底検査
- 尿アルブミン・eGFRなどの腎臓の検査
- 足の神経や血流、皮膚の状態の確認
- 血圧・脂質の確認
1型糖尿病では、甲状腺の病気など、ほかの自己免疫の病気を合併することもあるため、必要に応じて検査をおこないます。
▶関連記事:糖尿病の合併症とは?目・腎臓・神経・足・心臓・脳の症状と検査を専門医が解説
ひとりで抱え込まないでください
毎日の注射や測定、食事のたびの計算、低血糖への不安…。1型糖尿病の治療は、終わりのない毎日の積み重ねです。「疲れた」「もう嫌だ」と感じることがあっても、それは決して特別なことではありません。
また、1型糖尿病は生活習慣とは関係なく起こる病気ですが、「糖尿病」という言葉から誤解を受け、つらい思いをされている方もいらっしゃいます。
治療の負担や気持ちのつらさも、医師、看護師、管理栄養士に遠慮なくお話しください。治療の方法を見直すことで、負担が軽くなることもあります。
まとめ
1型糖尿病の治療は、インスリン製剤、インスリンポンプ、CGM、AIDの登場によって、大きく変わりました。治療の選択肢が増えた分、ご自分の生活や希望に合った方法を選べる時代になっています。

「今の治療が自分に合っているのか知りたい」「ポンプやCGMについて話を聞いてみたい」という方も、どうぞお気軽にご相談ください。
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▶澤木内科・糖尿病クリニック公式サイト(1型糖尿病・CGM・インスリンポンプの診療をおこなっています)


