「最近、勃起障害(勃起不全)が気になる。」

「そういえば、EDの傾向があって、自信が持てなくなってきた。」

ライフスタイル外来希望です。」

糖尿病患者さんから、時々お聞きする悩みです。
勃起障害(勃起不全、ED)についての説明と治療について、記載したいと思います。

■ED(勃起(ぼっき)障害)とは

性欲、勃起、性交、射精、オーガズムのいずれかひとつでも欠けるか不十分なものを性機能障害といいます。
このうち勃起が不十分または不可能なものを勃起障害または勃起不全といい、英語でErectile Dysfunction、略してEDと呼ばれます。
EDは「性交時に十分な勃起が得られないため、あるいは十分な勃起が維持できないため、満足な性交が行えない状態」と定義されています。
ストレスなどの心因性によるEDや、事故によるけがや手術の後遺症としてED障害になる場合、生活習慣病によって起こるEDなど様々な原因があります。

■血管性ED

糖尿病の初期の方は陰茎海綿体や内陰部動脈の血管内皮機能障害が起こります。
血管内皮由来のNO(一酸化窒素)は勃起(ぼっき)をおこしたり、勃起を維持したりするのに重要です。

血管内皮障害があるとNO産生が低下します。

NO産生の低下により、陰茎に血液を貯めること=勃起ができなくなります。
糖尿病の初期の方は、陰茎血流の低下から、血管性ED(動脈性ED)が引き起こされます。

■神経性ED

重症の糖尿病になると、微小な血管の障害から、自律神経障害(じりつしんけいしょうがい)が進み、副交感神経である海綿体神経の障害が発生し、神経性EDが生じます。

■血管性EDに対する治療 

血管性EDのみの場合は、経口薬であるPDE5阻害薬が有効で、80%程度の奏効率を認めます。

重症糖尿病患者における神経性EDの場合には残念ながらNOが乏しい為、PDE5阻害薬が効果を発揮できない場合が多く2030%の奏効率しかありません。

PDE5阻害薬が無効の場合、テストステロン測定を行います。

テストステロンが低値だとNO活性が低下し、PDE5阻害薬の有効性が減弱することが知られています。

この場合はテストステロンエナント酸エステル125250㎎を✕1/24週で筋肉注射にて投与します。

特に総テストステロン値が300ng/ml以下でPDE5阻害薬が無効の場合、有効性が高いとされています。 


■神経性EDに対する治療 

重症糖尿病に伴ったEDでは、神経性だけではなく陰茎海綿体平滑筋の萎縮と線維化も著明であり、さらに治療を難しくしています。

陰茎海綿体の萎縮が進むと、流出静脈の圧迫が適切に行われなくなり静脈溢流性のEDが発生する。

このタイプのEDでは経口薬だけではなく、プロスタグランジンE1などの注射剤も無効である場合が多く、治療に難渋します。

■薬剤性ED

降圧薬や高コレステロール血症に対する治療薬が原因となって、EDとなる可能性があります。
下記の薬剤を使用中の方で、薬を使用しだした時期と一致して、EDがでてきたのであれば、薬剤性EDも念頭に置く必要があります。

 

 

薬剤性EDの原因となる薬剤 

 

降圧薬 

 

利尿薬(サイアザイド系、スピロノラクトン) 

Ca抗薬 

交感神経抑制薬 

β遮断薬 

 

精神神経薬 

抗うつ薬(三環系抗うつ薬、SSRI、MAO阻害薬) 

抗精神病薬(フェノチアジン系、ブチロフェノン系、スルピリド、その他) 

催眠鎮静薬(バルビルーツ系) 

麻薬 

 

ホルモン薬 

エストロゲン製剤 

抗アンドロゲン薬 

LH-RHアナログ 

5α還元酵素阻害薬 

抗腫瘍薬 スルピリド、メトクロプラミド、シメチジン 
脂質異常症 

治療薬 

スタチン系、 

フィブラート系 

 

 

呼吸器官・アレルギー用薬 

ステロイド薬 

テオフェリン 

β刺激薬、抗コリン薬 

抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、) 

プソイドエフェドリン 

糖尿病薬 ピオグリタゾン 
その他 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) 

SSRI:選択的セロトニン再読込み阻害薬 

MAO:モノアミン酸化酵 

■澤木内科・糖尿病クリニック ライフスタイル外来とは

経口薬であるPDE5阻害薬を自費診療で提供しています。
初診の際は、ライフスタイル希望と男性医師が担当時にお声がけいただけたら、対応いたします。
難治性のEDに関しては、泌尿器科に紹介しています。