こんにちは。
大阪府高槻市、JR高槻駅前にあります澤木内科・糖尿病クリニック 院長の澤木秀明です。
糖尿病は初期症状が分かりにくい病気です。
そのため、気づかないうちに進行してしまい、
「気づいた時にはすでに合併症が始まっていた…」
ということも少なくありません。
今回は、患者さんからよくご相談いただく糖尿病の症状「あるある4選」をご紹介します。
「もしかして…」と思い当たる症状があれば、放置せず早めの受診をおすすめします。
1. 今の血糖が高いときに出る「急性期の症状」
血糖値が急激に高くなると、「高血糖症状」と呼ばれる以下の症状が出てきます。
口が渇く(口渇)
水分をたくさん飲みたくなる(多飲)
尿の量が増える(多尿)
体重減少
糖は「浸透圧物質」といって水分を引きつける性質があります。
血糖値が高くなると、尿と一緒に大量の水分が排出されてしまうため、体が水分不足になり喉(のど)が渇きます。
このときに「どんな飲み物を選ぶか」が運命の分かれ道です。
もしジュースや糖分の多いスポーツドリンクを選んでしまうと、さらに血糖が上がり、喉の渇きが悪化。
その結果、また甘い飲み物を飲み…という悪循環に陥ります。
最悪の場合、「清涼飲料水ケトーシス」という危険な状態になることもあります。
高血糖をすみやかに是正できれば、糖尿病の初期症状である、急性期の症状はすみやかに 治るともいえます。
ポイント
喉が渇いたら「水」か「無糖のお茶」を選びましょう
ジュースや加糖のスポーツドリンクは避けてください
2. 受診のきっかけになる症状とは?
当院でも、患者さんが初めて受診されるきっかけはさまざまです。
健康診断で血糖値が高いと指摘された
足がしびれる、視力が急に落ちた
喉が渇いてジュースをたくさん飲むようになった
急に体重が減ってきた
こういった症状や結果がきっかけで来院される方が多いです。
詳しくはYouTubeでも解説していますので、ぜひご覧ください。
▶ YouTubeで糖尿病症状を解説
3. 慢性期に現れる症状と合併症
糖尿病は発症した瞬間に慢性期の症状が出るわけではありません。
特に2型糖尿病は、発症時期がはっきりしないことが多く、初診時からすでに合併症が進行している場合もあります。
糖尿病の合併症は覚えやすいように
「しめじ・えのき」で表現されます。
合併症 | 覚え方 | 主な症状・病気 |
---|---|---|
しめじ | し=神経障害 め=網膜症 じ=腎臓病 | 足のしびれ・痛み、視力低下、失明、腎不全 |
えのき | え=足壊疽(えそ) の=脳卒中(脳梗塞・脳出血) き=虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症) | 足の潰瘍・切断、半身麻痺、胸痛など |
しめじ:細い血管が傷つく合併症(細小血管症)
糖尿病で最も有名な「三大合併症」がこのしめじに含まれます。
し=神経障害
両足のしびれ・感覚低下・痛みが特徴。
両足に同時に症状が出るという点がポイントです。め=網膜症
目の奥の血管が障害され、進行すると失明の危険性があります。
初期は自覚症状がないため、糖尿病と診断されたら必ず眼科受診をしましょう。じ=腎臓病
腎臓が障害され、尿たんぱくやむくみ、血圧上昇が出現します。
進行すると人工透析が必要になることもあります。
えのき:太い血管が詰まる合併症(大血管症)
「えのき」は、足・脳・心臓といった命に直結する臓器の血管が詰まる合併症です。
これらは突然発症し、命を脅かす非常に危険な病気です。
え=足壊疽(えそ)
糖尿病では神経障害と動脈硬化が重なることで足の血流が悪くなり、傷が治りにくくなります。
感染が広がると**壊疽(組織が腐る状態)**となり、最悪の場合は足の切断が必要になることもあります。
足壊疽の初期サイン
足の傷が治らない
足の指が黒く変色してきた
足が冷たい、感覚がない
これらの症状があれば、すぐに受診が必要です。
放置すると感染症が全身に広がり、命に関わる危険があります。
の=脳卒中(脳梗塞・脳出血)
糖尿病は高血圧や脂質異常症を伴いやすく、脳梗塞や脳出血のリスクが高くなります。
脳の血管が詰まったり破れたりすると、半身麻痺や言語障害など重い後遺症が残ることもあります。
脳卒中のサイン
片側の手足が急に動かなくなる
ろれつが回らない
視野が欠ける、急な視力低下
これらが突然出現したら、一刻も早く救急車を呼んでください。
き=虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)
糖尿病は動脈硬化を進行させ、心臓の血管が詰まりやすくなります。
これにより、狭心症や心筋梗塞を発症します。
胸の症状に注意
胸が締めつけられるような痛み
胸の痛みが左肩や腕に広がる
動くと息切れがする
糖尿病では痛みを感じにくい心筋梗塞(無痛性心筋梗塞)も多く、発見が遅れることがあるため注意が必要です。
しめじ+えのき=糖尿病合併症の全体像
しめじ=細い血管の合併症(神経・目・腎臓)
えのき=太い血管の合併症(足・脳・心臓)
どちらも進行すると生活の質(QOL)を大きく下げ、命に関わるリスクがあります。
糖尿病は症状が出てからでは手遅れになることもあるため、定期的な検査と早期治療が不可欠です。
4. 糖尿病じゃないのに似た症状が出る原因
実は、糖尿病ではないのに、糖尿病性神経障害に似た症状が出ることがあります。
代表的な原因には以下のものがあります。
腎臓の病気
腎不全でも手足のしびれが出ることがあります。
採血や尿検査で腎臓の状態を確認することが大切です。
アルコール・ビタミン不足・薬物
アルコールの大量摂取
ビタミンB1、B12、葉酸不足
有機溶剤、重金属、農薬などへの曝露
その他の病気
骨髄増殖性疾患
内分泌疾患
自己免疫疾患
傍腫瘍性神経症候群 など
当院で行える範囲を超える検査が必要な場合は、連携病院をご紹介しています。
大切なお願い
当院は糖尿病診療を専門としたクリニックです。
糖尿病ではないことがわかっている場合や、他の病気が強く疑われる場合は、
初めから大きな病院の内科を受診されることをおすすめします。
その方が、精密検査や治療にスムーズにつながります。
まとめ:気づいたら早めの受診を
糖尿病は、初期には自覚症状がほとんどないことが多い病気です。
しかし、症状が出る頃にはすでに進行していることも珍しくありません。
喉が渇く
尿の量が増えた
足がしびれる
視力が落ちてきた
こういったサインに気づいたら、放置せず早めに医療機関を受診しましょう。
当院では糖尿病に関する診断と治療に特化しています。
糖尿病が疑われる方はお気軽にご相談ください。
一方で、糖尿病ではない可能性が高い場合や、別の病気が強く疑われる場合は、
初めから大きな病院の内科受診をおすすめします。
澤木内科・糖尿病クリニック 院長
澤木 秀明