【2026年6月続報】フィアスプをインスリンポンプで使用中の方へ|37℃を超える高温とゲル化に注意

1型糖尿病について

2026年6月の続報を受けて内容を更新しました

澤木内科・糖尿病クリニック院長の澤木秀明です。

インスリンポンプで使用できる
「フィアスプ注100単位/mL」のバイアル製剤について、
2026年6月、製造販売元のノボ ノルディスク ファーマから、
高温による注射液のゲル化について改めて注意喚起が行われました。

特に、夏場の屋外活動、車内、高温になる職場、カイロや暖房器具の近くなどでは注意が必要です。

今回、特に知っていただきたいこと

  • インスリンポンプ内のフィアスプは、37℃を超える高温を避ける
  • 高温になると、注射液がゲル化する可能性がある
  • ゲル化するとポンプ内が閉塞し、インスリンが十分に投与されないことがある
  • その結果、高血糖や糖尿病ケトアシドーシスにつながる可能性がある

2026年6月に改めて注意喚起が行われました

今回の発表によると、2023年1月1日から2026年5月31日までに、
フィアスプ注バイアル製剤のゲル化による影響が疑われる副作用事例が、
国内で7例報告されています。

  • 糖尿病ケトアシドーシス:重篤2例
  • 高血糖:重篤1例
  • 高血糖:非重篤4例

フィアスプ注をインスリンポンプで使用する際の注意喚起は、
2022年と2023年にも行われていました。

その後も複数の事例が報告されたため、
2026年6月に改めて適正使用が呼びかけられています。

なお、今回の注意喚起の対象は、
フィアスプ注のバイアル製剤をインスリンポンプに充填して使用する場合です。
通常のペン型製剤を皮下注射する場合とは使用方法が異なります。

なぜ高温になると危険なのでしょうか

フィアスプ注の注射液が高温の影響を受けると、
液体が固まり、ゲル状になることがあります。

ゲル化したインスリンによってポンプや注入回路が詰まると、
設定上はインスリンを注入しているように見えても、
実際には十分な量が体内へ入っていない可能性があります。

インスリンポンプ療法では、主に超速効型インスリンを少量ずつ持続的に注入しています。
そのため、注入が長時間途切れると、血糖値が急速に上昇し、
ケトン体が増えて糖尿病ケトアシドーシスに至ることがあります。

インスリンポンプを使用中の方は、
「高血糖になったので、いつものように補正したが下がらない」
という場合に、単なる食べ過ぎやインスリン不足だけでなく、
注入回路の閉塞やインスリンの変化も疑う必要があります。

フィアスプをインスリンポンプで使用中の方が注意すること

1.37℃を超える高温を避ける

ポンプを次のような場所や物に近づけないでください。

  • カイロや湯たんぽ
  • 暖房器具
  • 電気毛布
  • 高温になる車内
  • 直射日光が当たる場所
  • 高温になる工場や作業場
  • サウナや高温の浴室

夏場は、屋外での活動や移動中にもポンプ本体の温度が上がる可能性があります。
衣服の中に装着している場合も、外気温や体温、発汗の影響が重なることがあります。

ただし、冷やそうとしてポンプを保冷剤へ直接当てたり、
凍らせたりすることも避けてください。
使用環境について迷う場合は、ポンプの製造元や主治医へ確認しましょう。

2.インスリンの見た目を確認する

リザーバーやチューブ内のインスリンに、次のような変化がないか確認してください。

  • 濁っている
  • 固まりや沈殿物がある
  • 糸を引くように見える
  • いつもと異なる粘りがある

フィアスプ注は本来、無色澄明な製剤です。
見た目に異常がある場合は、そのまま使用を続けないでください。

3.原因不明の高血糖を放置しない

次のような場合は、ポンプや注入回路の異常を疑います。

  • 補正インスリンを入れても血糖値が下がらない
  • 血糖値が急速に上昇している
  • ポンプから閉塞アラームが出た
  • チューブ内に異常や詰まりが見える
  • 注入部位が外れている、漏れている
  • 吐き気、腹痛、強いだるさがある

高血糖が続く場合は、血糖値だけでなく、
可能であれば血中または尿中ケトン体も確認してください。

高血糖が続く場合の対応

高血糖時に重要な対応

  1. 血糖値を血糖測定器で確認する
  2. ポンプ、リザーバー、チューブ、注入部位を確認する
  3. インスリンに濁り、固まり、沈殿がないか確認する
  4. 必要に応じて、リザーバー・チューブ・注入セットを新しいものへ交換する
  5. あらかじめ主治医から指示された方法で、ペン型インスリンによる補正を行う
  6. ケトン体を確認する
  7. 改善しない場合は、速やかに医療機関へ相談する

ポンプの作動不良や閉塞が疑われる状態で、
同じポンプから補正インスリンを繰り返し注入しても、
インスリンが体内へ入らない可能性があります。

そのため、インスリンポンプを使用している方は、
緊急時に使用できるペン型インスリン、注射針、血糖測定器、
ケトン体測定用品などを準備しておくことが大切です。

ただし、1型糖尿病の方がインスリン投与を自己判断で完全に中止することは危険です。
ポンプを外す場合も、代わりのインスリン投与が必要になります。
事前に主治医と、ポンプトラブル時の対応方法を確認しておきましょう。

すぐに医療機関へ相談してほしい症状

次の症状がある場合は、糖尿病ケトアシドーシスの可能性もあるため、
自己判断で様子を見続けないでください。

  • 高血糖が続き、補正しても下がらない
  • 血中または尿中ケトン体が増えている
  • 吐き気や嘔吐
  • 腹痛
  • 強い口渇
  • 呼吸が速い、息苦しい
  • 強いだるさ
  • 意識がぼんやりする

特に、嘔吐して水分をとれない場合や、意識状態がおかしい場合は、
早急な医療機関への受診が必要です。

フィアスプを使用している方全員が変更する必要はありません

今回の注意喚起は、
フィアスプ注をインスリンポンプで使用してはいけないという意味ではありません。

フィアスプ注は、効果の現れ方が速く、
食後血糖の上昇を抑える目的などで有用な製剤です。

一方で、生活環境、仕事、ポンプの装着方法、
過去の閉塞や原因不明の高血糖の有無によっては、
ほかの超速効型インスリンへの変更を検討することがあります。

当院では、フィアスプを継続する場合には高温とゲル化への注意を説明し、
患者さんの希望や血糖変動を確認したうえで、
ノボラピッド、ルムジェブなど、ほかの製剤も含めて相談しています。

自己判断でインスリンを変更したり、ポンプを中止したりせず、
必ず主治医へご相談ください。

まとめ

  • フィアスプ注バイアル製剤をインスリンポンプで使用する場合、37℃を超える高温を避ける
  • 高温によって注射液がゲル化し、ポンプが閉塞する可能性がある
  • 閉塞すると、重篤な高血糖や糖尿病ケトアシドーシスにつながることがある
  • 補正しても下がらない高血糖では、ポンプ、回路、注入部位、インスリンの状態を確認する
  • 緊急時に備え、ペン型インスリンや血糖・ケトン体測定用品を準備する
  • インスリンの変更やポンプの中止は、自己判断せず主治医へ相談する

インスリンポンプは、1型糖尿病の方の生活や血糖管理を支える大切な治療機器です。
安全に使用を続けるためにも、暑い季節を迎える前に、
ポンプトラブル時の対応と予備物品を改めて確認しておきましょう。


参考資料

フィアスプ注 インスリンポンプでの適正使用のお願い(2026年6月続報)


糖尿病ネットワーク「37℃超でインスリンがゲル化」に改めて注意喚起

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
患者さんごとのインスリンの選択や高血糖時の対応は異なりますので、
具体的な対応については主治医へご確認ください。