はじめに:なぜ今、CGMが注目されているのか?

あなたはこんな疑問を持っていませんか?

  • 「血糖自己測定はしているけれど、それだけで十分なの?」

  • 「フリースタイルリブレ2 や デクスコム G7 を取りつけるだけで HbA1c が改善するのか?」

  • 「いつどの段階で CGM を使い始めたらいいのか?」

この記事では、これらの疑問に対して「現時点での医学的エビデンス」をもとに答えていきます。
特に、当クリニックも参加した REAL J研究 の結果を詳しく紹介し、CGM の実際の効果と適用範囲を整理します。

 

1. CGM(持続血糖モニター)とは? — リアルタイム測定の意義

まずは基礎から抑えておきましょう。

  • CGM(Continuous Glucose Monitoring/持続血糖モニター) は、皮下にセンサーを設置し、24時間血糖を自動・連続で測定するシステムです。

  • 主に使用されているデバイスには、FreeStyle Libre 2、Dexcom G7、Guardian Sensor 4 などがあります。

  • CGM を使うと、血糖値が急に上昇・下降するタイミングや傾向をリアルタイムで知ることができ、「気づかない高血糖/低血糖」を見つけやすくなります。

近年、CGM は糖尿病治療においてますます普及してきており、1型・2型を問わず、血糖コントロールを改善する可能性が報告されています。
保険診療の枠組みも変化しつつあり、インスリン療法を行っていない方にも 選定療養 の枠で導入可能なケースが出てきています。

2. REAL J研究とは? — 当クリニックも参加

2.1 研究の背景と目的

REAL J 研究は、日本国内の複数施設で実施された、リアルタイム CGM の装着が糖尿病患者の血糖コントロールに与える影響を観察する研究です。
当クリニックもこの研究に参加しました。

主な対象は次のような条件を満たす方々です:

  • 18歳以上

  • CGM 使用前の HbA1c が 7.5% 以上

  • Dexcom G6 を 6 ヶ月以上装着

  • 対象者数:192名

  • 主に 1型糖尿病患者を中心とする構成(全体の約 90%)

2.2 主要な結果:HbA1c の改善

  • 研究開始前の平均 HbA1c は 8.61%

  • 6 か月後には平均 7.88% へ改善

  • 治療内容を特に変更せずとも、CGM の導入だけで統計的有意な改善(p < 0.001)を示した

  • これにより、「CGM 装着が既存治療にプラスして血糖コントロールを改善する可能性」が示されました

この結果は、CGM の導入が特定の患者にとって非常に有用であることを強く示しています。

この観察研究の結果が岡山県で開催されました第68回日本糖尿病学会で発表されました。

筆頭著者の東海大学教授 豊田雅夫先生が研究グループを代表して、ご講演くださいました。

3. CGM のメリットと、使うべき人

3.1 CGM を使うメリット:見える化+早期対応

CGM を使う主な利点は以下の通りです:

  1. 血糖変動の可視化
     日内変動・急激な上昇下降を把握でき、自己血糖測定(SMBG)では見えにくい“山・谷”を捉えられる。

  2. 速やかな対応が可能
     異常値にはアラートが出たり、アプリで通知が来たりするため、無自覚低血糖や高血糖を未然に防ぎやすい。

  3. 治療改善のヒントになる
     食後血糖の推移、運動・食事からの影響を定量的に見られる。医師との相談材料として優秀。

  4. 心理的安心感・モチベーション向上
     自分の血糖値が「見える」ことで、治療の方向性が明確になり、自己管理意識が高まる場合も多い。

3.2 どんな人が特に向いているか?

以下のような方には、CGM の導入が特に効果を発揮する可能性があります。

  • HbA1c がなかなか基準範囲内に入らない人

  • 起床時・夜間の無自覚の低血糖/高血糖が疑われる人

  • インスリン治療を行っているが変動が激しい人

  • 食後高血糖の改善を目指したい人

  • 血糖変動を把握して、生活スタイル改善につなげたい人

ただし、CGM を使えば必ず誰でも改善するわけではなく、適切な使い方と医師・医療スタッフとの連携が不可欠です。

4. Dexcom G7 と FreeStyle Libre 2:特徴と比較

項目Dexcom G7FreeStyle Libre 2
測定方式リアルタイム測定、アラート対応主にリーダー/スマホ読み取り型(Libre 2 はアラート機能あり)
アラート機能高低血糖アラートありLibre 2:高低アラート機能あり(設定可能)
利便性常時モニタリング可能で、通知も充実スキャン方式 + アラート併用型で、やや操作感が異なる
適用患者変動が激しい方、細かく監視したい方に適日常管理型、手軽さ重視の方に向く

(上記はあくまで一般的な傾向であり、個別の選択は医師と相談のうえ行ってください)

5. 実際に導入する際の注意点

  1. センサー装着部位・肌トラブル
     装着部の発赤、かゆみなどが起こることがあります。適切なケアが必要。

  2. データの見方と解釈
     変動の「波」だけをみて焦るのではなく、トレンドや平均値を評価することが大切。

  3. アラート過剰反応に注意
     アラートが頻発するとストレスになる場合もあるため、閾値設定や通知調整が重要。

  4. 費用と保険制度対応
     CGM 装置・センサーのコスト、保険適用範囲がどうなっているかを事前に確認する。

  5. 医師・スタッフとの連携強化
     得られたデータを活用して、治療方針を見直すことが必要。自己判断だけで変えるのは危険です。


6. まとめ:CGM は “補強ツール” として有効