シックデイとは?風邪・胃腸炎で食べられない時のインスリンと薬の対応

糖尿病のシックデイ対応|インスリン・飲み薬の対応と受診の目安を糖尿病専門医が解説 糖尿病の治療

こんにちは。澤木内科・糖尿病クリニック院長の澤木秀明です。

かぜをひいて熱が出た、胃腸炎で吐いてしまった、食欲がまったくない――。糖尿病の治療をしている方にとって、こうした体調の悪い日を「シックデイ」と呼びます。

シックデイで一番危ないのは、「食べていないから、インスリンを打たなかった」「いつもの薬をそのまま飲んだ」という自己判断です。

シックデイの対応は、具合が悪くなってから考えるのでは間に合いません。この記事では、シックデイの基本ルールと、インスリン・飲み薬の考え方、そして元気なうちに主治医と決めておくことを、糖尿病専門医の立場から解説します。

外来で、こんなご質問をいただくことがあります。

「かぜで何も食べられないときは、インスリンは打たなくていいですよね?」
「熱があるときも、いつもの薬を飲んで大丈夫ですか?」

院長 澤木秀明
院長 澤木秀明

このページは、インスリンや飲み薬で糖尿病の治療をしている方とご家族に向けて、体調が悪い日(シックデイ)の基本ルールをまとめたものです。ただし、実際の対応は一人ひとり異なります。ご自身の対応は、元気なうちに外来で一緒に決めておきましょう。


シックデイとは?

シックデイとは、糖尿病の方が、発熱、下痢、嘔吐、食欲不振などのために、いつもどおりに食事がとれない日のことです。

体調が悪いときは、食事がとれていなくても、体の中ではストレスに反応して血糖値を上げるホルモンが増えています。そのため、食べていないのに血糖値が上がることがあります。

一方で、食事がとれないのにいつもどおり薬を使うと、低血糖を起こすこともあります。さらに、嘔吐や下痢、発熱で脱水になりやすく、薬によっては副作用が出やすくなります。

インスリンが足りない状態が続くと、命に関わる糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)につながることもあります。

▶関連記事:糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)とは?症状・原因・予防


シックデイの基本ルール(早見表)

ルール 内容
1.インスリンを自己判断でやめない 特に持効型(基礎)インスリンは、原則として続けます。
2.水分をこまめにとる 水や無糖のお茶などを、少しずつ何回にも分けて飲みます。
3.炭水化物をとる おかゆ、うどんなどで炭水化物を補います。
4.血糖値をいつもより頻繁に測る 目安は3〜4時間ごとです。低血糖のときは、すぐに対処します。
5.薬は、決めておいたとおりに休む・減らす 薬の種類によって対応が違います(下の表)。
6.早めに相談・受診する 改善しないとき、悪化するときは、ためらわずに医療機関へ。

インスリンはどうする?

持効型(基礎)インスリン

持効型(基礎)インスリンは、食事と関係なく、体が最低限必要とするインスリンを補っています。毎日1〜2回打つ製剤のほか、週1回打つ製剤もあります。食事がとれなくても必要なインスリンなので、原則として自己判断で中止しないでください。減らすかどうかは、主治医の指示に従います。週1回の製剤を使っている方も、次回の量やタイミングを自己判断で変えず、主治医の指示に従ってください。

食事の前に打つインスリン(超速効型・速効型)

食事の前に打つインスリンは、食事の量だけでなく、血糖値やケトン体も参考にして、あらかじめ主治医と決めた方法で調整します。感染症などで血糖値が上がっているときは、食べていなくても、高血糖を下げるための追加の注射が必要な場合があります。

食事がとれるかわからないときの注射の量やタイミングは、使っている製剤ごとに主治医と決めておいてください。製剤によって打てるタイミングが異なるため、自己判断で食後に打つ方法に変えないでください。

混合型・配合溶解インスリン

混合型インスリン(中間型と、超速効型または速効型が混ざったもの)や、持効型と超速効型が一緒になった配合溶解インスリンは、基礎の分と食事の分が一緒に入っているため、食事がとれないときの調整が複雑です。製剤ごとの主治医の指示に従ってください。

1型糖尿病の方・インスリンポンプを使っている方

1型糖尿病の方は、インスリンを自分でほとんど作れないため、インスリンを中断すると短い時間でDKAになることがあります。

ポンプを使っている方は、基礎インスリンは原則として続けます。原因のわからない高血糖が続くときは、事前に決めた手順に従って注入不良がないかを確認し、注入セットの交換やペン型注射器での補正を行います。補正の量や間隔、自動調整機能の扱いも、あらかじめ主治医と決めておいてください。機種によっては、ペンで注射したインスリンがポンプの自動調整に反映されず、インスリンが重なって低血糖になることがあります。

改善しない場合や、嘔吐・腹痛がある場合は、速やかに救急病院へ相談してください。


飲み薬・注射薬はどうする?(一覧表)

シックデイの対応は、薬の種類によって異なります。下の表は一般的な考え方です。実際の対応は、必ず主治医の指示に従ってください。
薬の種類 主な薬の例 シックデイの一般的な対応 理由
SGLT2阻害薬 フォシーガ、ジャディアンス、カナグル、スーグラなど 休む 脱水やケトアシドーシス(血糖値がそれほど高くなくても起こる)の危険があるため
ビグアナイド薬 メトグルコ(メトホルミン)など 休む 脱水時に乳酸アシドーシスの危険があるため
イメグリミン ツイミーグ 事前の指示に従って休む 体調不良や脱水で腎臓の働きが悪くなると、薬が体にたまりやすくなるため
SU薬 アマリール、グリミクロンなど 食べられる量に応じて減らす・休む 食事がとれないと低血糖を起こしやすいため
速効型インスリン分泌促進薬 グルファスト、シュアポストなど 食事をとらないときは休む 食事の直前に飲む薬で、食べないと低血糖の危険があるため
α-グルコシダーゼ阻害薬 ベイスン、セイブルなど 食事がとれないとき、下痢・腹部症状があるときは休む おなかの症状を悪化させることがあるため
DPP-4阻害薬 ジャヌビア、トラゼンタ、テネリアなど 血糖値、食事量、腎臓の働き、ほかの薬などに応じて、事前に決めた指示に従う 単独では低血糖を起こしにくく、対応は人によって異なるため
チアゾリジン薬 アクトス 一時的に休む場合がある(事前に決めた指示に従う) 対応は人によって異なるため
GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬 オゼンピック、トルリシティ、リベルサス、マンジャロなど 嘔吐・下痢が続く、十分に飲食できないときは、事前の指示に従って休み、次の服用・注射の前に相談する。週1回の注射は作用が数日続くため、経過に注意する。強い腹痛が続くときは追加で使わず、すぐに受診 消化器症状や脱水を悪化させることがあり、まれに膵炎などが隠れていることがあるため
インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合注射薬 ゾルトファイ、ソリクア GLP-1薬の休薬ルールだけで中止しない。個別の指示に従う インスリンを含むため、中止すると高血糖やケトアシドーシスの危険があるため
持効型インスリン トレシーバ、ランタス、グラルギンなど 原則続ける(量は主治医の指示) 食事がとれなくても必要なインスリンのため
配合錠(2種類の成分が1錠になった飲み薬)は、一部の成分だけを休むことはできません。休む必要がある成分を含む配合錠を飲んでいる方は、シックデイのときの対応を、薬の商品名で主治医に確認しておきましょう。ご自分の薬がどれにあたるかわからない場合も、元気なうちに確認しておきましょう。

食べやすいもの・水分のとり方

シックデイは、絶食しないことが大切です。ふだんの食事にこだわらず、口当たりがよく消化のよいもので、炭水化物と水分を優先してとりましょう。

  • おかゆ、雑炊、やわらかく煮たうどん
  • スープ、みそ汁(主に水分補給に。具材によっては糖質が少ないため、おかゆなども組み合わせます)
  • 果物、ゼリー、アイスクリーム
  • 食事がとれないときは、血糖値を確認したうえで、決めておいた量のジュースなどで糖分を補うこともあります

水分補給には、水や無糖のお茶なども使います。一度にたくさんではなく、少しずつ何回にも分けて飲みます。目安として1日1リットル以上を心がけてください(心臓や腎臓の病気で水分を制限されている方は、主治医の指示に従ってください)。

食事の代わりに糖質を補う必要がある場合は、血糖値を確認し、事前に決めた量のジュースなどを少しずつとります。甘い飲み物を大量に飲むと、かえって高血糖やケトーシスを悪化させることがあります。どのような飲み物をどのくらいとるかも、主治医と相談しておきましょう。


血糖値を測りましょう

シックデイには、血糖値がいつもと違う動きをします。3〜4時間ごとを目安に血糖値を測り、記録しておきましょう。

  • 血糖自己測定(SMBG)をしている方は、いつもより回数を増やしてください。
  • CGM(リブレ、デクスコムなど)を使っている方は、こまめに値と矢印を確認してください。体調や脱水の影響で値がずれることもあるので、症状と合わない場合は指先での測定も行いましょう。

記録した血糖値は、受診したときに医師が状態を判断する大切な手がかりになります。

低血糖になったときは、すぐに対処します

低血糖のときは、次の測定時刻まで待たずに、すぐに対処してください。

  • 血糖値が70mg/dL未満のとき、または冷や汗・ふるえ・動悸など低血糖が疑われる症状があるときは、すぐに対処します。
  • 意識があり、飲み込める場合は、ブドウ糖10gなど、事前に指示された量の糖分をとり、約15分後に血糖値を再確認します。
  • 約15分後も低血糖が続いていて、意識がはっきりし飲み込める場合は、指示された量のブドウ糖をもう一度とります。
  • 改善しない、または繰り返す場合は、速やかに医療機関に連絡してください。
  • α-グルコシダーゼ阻害薬(ベイスン、セイブルなど)を飲んでいる方は、砂糖ではなくブドウ糖を使ってください。
  • 意識が悪い、飲み込めない場合は、口から何も与えず、119番に連絡してください。

▶関連記事:低血糖とは?症状・原因・対処法を糖尿病専門医が解説


すぐに受診が必要なサイン

次のような場合は、早めに医療機関を受診してください。

  • 嘔吐や下痢が続き、食事や水分がほとんどとれない
  • 嘔吐や下痢がなくても、食事がとれない、または極端に少ない状態が続く(24時間に及ぶ場合は必ず相談・受診してください。悪化している場合は24時間を待たないでください)
  • 高熱が続く
  • 血糖値が350mg/dL以上の状態が続く
  • 血中ケトン体が主治医と決めた受診の基準以上、または尿ケトン体が強陽性(軽い上昇でも医療機関に相談し、嘔吐・腹痛・息苦しさがあるときはすぐに受診)
  • 低血糖を繰り返す、または低血糖から回復しない
  • 強い腹痛、強いだるさがある
  • 呼吸が苦しい、意識がもうろうとする
特にSGLT2阻害薬を飲んでいる方は、血糖値が高くなくても、吐き気・嘔吐・腹痛・強いだるさがあればケトアシドーシスの可能性があります。測定できればケトン体を確認し、すぐに救急病院へ相談してください。測定できなくても、受診を遅らせないでください。「血糖値が350mg/dL未満だから様子を見てよい」ということではありません。

当院を受診される前に、必ずお読みください

当院は大型商業施設の中にあるため、十分な換気ができません。そのため、発熱外来は行っておらず、インフルエンザや新型コロナウイルスの検査もできません。また、点滴など救急の処置ができる設備もありません。

  • 発熱の診療は、発熱外来など対応している医療機関に、事前に電話で連絡してから受診してください。
  • ケトアシドーシスが疑われるとき(嘔吐・腹痛・強いだるさ・息苦しさ、ケトン体の上昇など)は、救急対応ができる病院を受診してください。
  • 意識がもうろうとしている、呼吸が苦しい、嘔吐が続いて水分もとれないときは、迷わず119番に連絡してください。
  • 受診すべきか迷うときは、救急安心センターおおさか(#7119)に電話で相談できます。
  • 当院におかかりの方は、診療時間内であれば、電話で薬の使い方などのご相談が可能です。ただし、一刻を争う場合は、当院への連絡を待たずに、直接救急に連絡してください。

受診の際は、糖尿病であること、インスリンや飲み薬を使っていることを必ず伝え、お薬手帳と、下で紹介する「シックデイメモ」をお持ちください。


元気なうちに決めておくこと(シックデイメモ)

シックデイの対応で一番大切なのは、具合が悪くなる前に準備しておくことです。体調が悪いときは、正しく判断することが難しくなります。

当院では、元気なうちに、あなたに合ったシックデイの対応を一緒に決めておくことをおすすめしています。決めた内容は「シックデイメモ」にまとめて、お薬手帳にはさんだり、スマートフォンで写真を撮ったりして、すぐ取り出せるようにしておきましょう。

シックデイメモの見本

項目 記入例
糖尿病の種類 1型・2型など
かかりつけ医 医療機関名・電話番号
使っているインスリン 名前・ふだんの単位数・打つタイミング
シックデイのインスリンの調整 持効型は〇単位で続ける/食事前のインスリンは食事量・血糖値・ケトン体に応じて〇〇する/高血糖のときの追加注射は〇〇 など
インスリンポンプのトラブル時の対応 注入セットの交換、ペンでの補正の量と間隔、自動調整機能の扱い など
使っている飲み薬・注射薬 名前(商品名)・量
シックデイに休む薬・減らす薬 〇〇は休む/〇〇は半分にする/〇〇は続ける など
低血糖のときの対応 ブドウ糖〇g、15分後に再測定 など
受診の目安 血糖値が〇〇mg/dL以上が続く、血中ケトン体が〇〇以上、食事がとれない など
持ち出すもの お薬手帳、血糖測定器、インスリン、保険証(マイナ保険証)
次回の外来で「シックデイのときはどうしたらいいですか」と、遠慮なくお尋ねください。一緒にメモを作りましょう。

▶関連記事:はじめてのインスリン治療|種類・打つタイミング・低血糖・保管方法

▶関連記事:災害から自分を守るために|糖尿病の方の備え、インスリンとお薬をどう守るか

院長 澤木秀明
院長 澤木秀明

体調が悪いときに、一人で正しく判断するのはとても難しいことです。だからこそ、元気なうちの準備が何よりの備えになります。シックデイの対応やメモ作りで不安なことがあれば、外来で遠慮なくお声がけください。

▶澤木内科・糖尿病クリニック公式サイト(1型糖尿病・CGM・インスリンポンプの診療をおこなっています)


まとめ

  • シックデイは、体調が悪く、いつもどおりに食事がとれない日のことです。
  • 持効型インスリンは、自己判断でやめないことが大切です。食べていなくても追加のインスリンが必要なことがあります。
  • 水分と炭水化物をとり、血糖値をこまめに測りましょう。低血糖のときは、すぐに対処します。
  • 薬は、種類によって休む・減らす・続けるなどの対応が異なります。インスリンを含む配合注射薬は、自己判断で中止しないでください。
  • SGLT2阻害薬を飲んでいる方は、血糖値が高くなくてもケトアシドーシスに注意が必要です。
  • 改善しないとき、悪化するときは、救急対応ができる病院などを受診してください。
  • 一番の備えは、元気なうちに主治医と対応を決めておくことです。

参考文献

  • 日本糖尿病学会 編・著『糖尿病診療ガイドライン2024』南江堂(20章 急性合併症・シックデイ)
  • 日本糖尿病学会 編・著『糖尿病治療ガイド』文光堂
  • 日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」
  • 糖尿病情報センター「血糖値を下げる注射薬」