この記事は2026年8月時点の情報です。ガイドラインや添付文書の記載は改訂されることがあります。飲酒の可否や量は、合併症の有無やお使いのお薬によって一人ひとり異なりますので、実際の判断にあたっては必ず主治医にご相談ください。

こんにちは。 澤木内科・糖尿病クリニック院長の澤木秀明です。

「糖尿病と言われました。お酒は、もう一生飲めないのでしょうか」
外来でとてもよくいただくご質問です。健診でHbA1cを指摘されて来院された方から、晩酌を続けてよいかと相談されることも、ほぼ毎日あります。

結論からお伝えすると、糖尿病があるからといって、お酒が一律に禁止されるわけではありません。大切なのは、やめるか続けるかではなく、どう付き合うかです。
ただし、量と、飲み方と、使っているお薬によって、気をつけるポイントは大きく変わります。
特にインスリンやSU薬をお使いの方には、飲んだ数時間後から翌朝にかけて起こる低血糖という、見落とされやすい注意点があります。
このページでは、お酒と上手に付き合うための考え方を、順番に整理してお伝えします。
糖尿病があると、お酒は禁止されるのですか

一律に禁止されるわけではありません。日本でも海外でも、糖尿病の方の飲酒について「量の目安」が示されており、これは飲むこと自体を否定していないという意味でもあります。
一方で、お酒をやめたほうがよい方、量をかなり控えたほうがよい方がいることも事実です。膵炎を起こしたことがある方、肝機能に問題がある方、中性脂肪が高い方などが該当します。詳しくは後半でご説明します。
また、現在お酒を飲んでいない方が、健康のためにあえて飲み始めることは勧められていません。アメリカ糖尿病協会が2026年に示した指針でも、飲まない方には、たとえ節度ある量であっても飲み始めないよう助言することが推奨されています。

以前は「少量のお酒はむしろ体によい」という考え方が広く知られていましたが、現在その見方は見直されつつあります。
まず知っておきたい「純アルコール量」の考え方

お酒の話をするとき、「ビールを2本」「日本酒を2合」といった言い方では、体への影響を比べることができません。お酒の種類によって度数が違うためです。

そこで使うのが、純アルコール量という考え方です。次の式で計算できます。
純アルコール量(g)= お酒の量(ml)× 度数(%)÷ 100 × 0.8
身近なお酒を、この式で計算すると次のようになります。
| お酒の種類 | 量 | 純アルコール量 |
|---|---|---|
| ビール(5%) | 500ml | 20g |
| 日本酒(15%) | 1合(180ml) | 約21.6g |
| 焼酎(25度) | 100ml | 20g |
| ワイン(12%) | グラス2杯(200ml) | 約19.2g |
| ウイスキー(40%) | ダブル1杯(60ml) | 約19.2g |
| 缶チューハイ(9%) | 350ml | 約25.2g |
ここで注目していただきたいのは、缶チューハイです。
飲む量は350mlと少ないのに、純アルコール量はこの中でいちばん多くなります。
近年は度数の高い商品が増えていますので、まずはラベルの度数を確認する習慣をつけてください。純アルコール量そのものが表示された商品も増えています。
糖質ゼロと書いてあるから安心、というわけではありません。糖質が少なくても、アルコールの量そのものは変わらないからです。
糖質の面では、ビールや日本酒には糖質が含まれ、焼酎やウイスキーにはほとんど含まれません。ただし、糖質が少ないお酒であっても、飲みすぎれば肝臓への負担も、低血糖のリスクも高くなります。一方、梅酒や甘いカクテル、ジュース割りは、糖質もアルコールも含みます。
1日の目安と、数字の正しい読み方

公表当時、「男性は40gまで飲んでよい」という受け取られ方が広まりましたが、これは誤解です。あくまで、これを超えると生活習慣病のリスクが高まる、という水準を示したものです。

大切なのは、女性の基準が男性の半分だという点です。同じ量を飲んでも、体への影響は同じではありません。女性や、ご高齢の方、お酒に弱い体質の方は、目安よりさらに少なめを意識してください。
アメリカ糖尿病協会も、女性は1日1ドリンクまで、男性は2ドリンクまでという目安を示しています。1ドリンクは純アルコール量にしておよそ14gです。国によって示し方は違いますが、女性を少なめにする点は共通しています。
それから、平日は飲まないので週末にまとめて、という飲み方は避けてください。同じガイドラインでは、1回の飲酒で純アルコール量60g以上を摂取することは避けるべきとされています。60gは、ビールの500ml缶ならおよそ3本です。
飲まない日は、何日つくればよいのですか

外来でよくいただく質問ですが、実は「何日」という決まった数字はありません。
厚生労働省のガイドラインには「一週間のうち、飲酒をしない日を設ける」と書かれているだけで、日数の指定はありません。よく言われる「週2日」という数字も、慣用的に広まったもので、ガイドラインの記載ではないのです。
では何を基準に考えればよいのか。順序としては、次のように進めていただくのがよいと思います。

よくある誤解に、
「休肝日さえつくれば、飲む日はたくさん飲んでよい」
というものがあります。これは違います。同じ調査でも、多量に飲む場合は、飲まない日の有無にかかわらず死亡リスクは高いままでした。
ただし、飲まない日をつくること自体には、別の意味もあります。

アルコールには耐性ができるため、毎日飲み続けていると、少しずつ量が増えていきやすいのです。
また、飲まない日を実際につくれるかどうかは、お酒の問題が隠れていないかを知る手がかりにもなります。もし「飲まない日をつくろうとしても、どうしてもできない」という場合は、量の相談ではなく、別の視点からのサポートが必要かもしれません。遠慮なくご相談ください。
お酒を控えたほうがよい方と、お薬との関係

次のような方は、飲酒について必ず主治医にご確認ください。膵炎を起こしたことがある方
中性脂肪が高い方は、特に注意が必要です。

飲酒で中性脂肪がさらに上がると、膵炎のリスクが高まります。そして膵炎を起こすと、インスリンを出す力そのものが落ちてしまい、血糖のコントロールが一段と難しくなります。
お薬との関係も大切です。
なお、お酒の席では、食後のお薬をうっかり抜かしてしまうことがあります。外食や宴会の予定がある日は、お薬を持って出かけると安心です。ご高齢の方は、お酒の影響が出やすく、転倒のリスクも高まりますので、量はより控えめにしてください。
いちばん注意したいのは、飲んだあとの低血糖です

ここが、このページでもっともお伝えしたい部分です。
アルコールを飲むと、肝臓はアルコールを分解する処理に手をとられます。その結果、肝臓が血糖を新しくつくり出す働きが抑えられてしまいます。この働きは、血糖値が下がってきたときに私たちの体を守ってくれる、大切な仕組みです。
それが弱くなるため、インスリンやSU薬を使っている方では、飲んでいる最中ではなく、飲んだ数時間後や翌朝になってから低血糖が起こることがあります。飲み終えたから安心、とはならないのです。

夕食のときにお酒を飲み、翌朝になって低血糖が起こる、という形が典型的です。やっかいなのは、症状がお酒の酔いと区別しにくいことです。ふらつく、ろれつが回らない、汗をかくといった症状は、酔っているだけと思われてしまい、対応が遅れることがあります。
運動をした日は、その後も血糖が下がりやすい状態が続くことがありますので、さらに注意してください。
対策は4つです。

CGMをお使いの方は、夜間のアラート設定を確認しておいてください。ブドウ糖も必ず手元に置きましょう。寝る前の血糖値が低めのときは、少し炭水化物を補うことも選択肢になります。
量については主治医にご確認ください。おひとりでお住まいの方は、寝る前の確認をより丁寧に行ってください。
おつまみと締めの一品にも目を向けてください

血糖値やHbA1cへの影響という点では、お酒そのものよりも、おつまみと締めの一品のほうが大きいこともあります。
アルコールには食欲増進作用があります。食べすぎてしまうのは、意志の問題だけではありません。さらに

飲むうちに「今日はこれくらいに」という判断がゆるくなり、揚げ物や塩辛いおつまみが進み、最後に炭水化物を追加してしまう。
よくあるパターンです。塩分の面でも注意が必要で、血圧が上がりやすくなります。血圧の管理は、腎臓や目を守るうえでとても大切です。
対策は、飲み始める前に、今日食べるものを決めておくことです。

空腹のままお酒を流し込むと、その後の食べ方が乱れやすくなります。飲む前に野菜やたんぱく質を少し口に入れておくだけでも、食欲の暴走を抑えやすくなります。
CGMを使うと、ご自身のお酒の影響が見えてきます

ここまで、一般的な目安をお伝えしてきました。
しかし実際には、同じ量を飲んでも、血糖値の動き方は人によって違います。

CGM(持続グルコース測定)を使うと、お酒を飲んだ日にご自身の血糖値がどう動いたのかを、24時間の記録として目で確かめることができます。夜間や早朝に血糖値が下がっていないか、翌朝までの動きも含めて確認できます。
数字で見えるようになると、「我慢する」のではなく「納得して選ぶ」ことができるようになります。この違いは、治療を続けていくうえでとても大きいと感じています。
当院では、糖尿病の診断がついていない方でもCGMを体験していただける「CGMドッグ外来」もご用意しています。ご自身の飲み方が血糖値にどう影響しているのかを知りたい方は、外来でお声がけください。
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澤木内科・糖尿病クリニックで大切にしていること

お酒の相談は、答えにくいご質問だと思っています。「やめてください」と言えば話は早いのですが、それで通院への足が遠のいてしまっては、本末転倒です。

当院では、生活の中で続けられる形を、患者さんと一緒に探すことを大切にしています。お酒についても、ゼロにすることを目標にするのではなく、ご自身にとって安全な量と飲み方を一緒に決めていく、という進め方をしています。
そのために、当院では次のような体制を整えています。
「こんなことを聞いたら怒られるのではないか」と思われるようなご質問こそ、遠慮なくお尋ねください。正直にお話しいただけたほうが、現実的な治療を組み立てられます。
まとめ
お酒は、やめなさいと言われるほど、かえってつらくなるものです。糖尿病の治療は今も進化を続けており、以前より柔軟な選択ができるようになってきました。判断に迷うときは自己判断せず、外来で遠慮なくお尋ねください。
よくある質問
Q. 休肝日は週に何日必要ですか?
A. 決まった日数はありません。厚生労働省のガイドラインも「一週間のうち、飲酒をしない日を設ける」としているだけで、日数は定めていません。よく言われる「週2日」も、慣用的に広まった数字です。日数から決めるのではなく、1週間の合計量を決めて、1回に飲む量から飲む日数を割り出す、という順序をおすすめしています。
Q. 糖質ゼロのビールなら、いくら飲んでも大丈夫ですか?
A. いいえ。糖質が少なくても、アルコールの量そのものは変わりません。肝臓への負担も、低血糖のリスクも、通常のお酒と同じように高くなります。純アルコール量で数えてください。
Q. お酒を飲むと血糖値は上がるのですか、下がるのですか?
A. どちらも起こりえます。ビールや日本酒、甘いカクテルなど糖質を含むお酒や、おつまみ・締めの食事によって血糖値が上がることがあります。一方で、アルコールは肝臓が血糖をつくり出す働きを抑えるため、特にインスリンやSU薬をお使いの方では、数時間後から翌朝にかけて低血糖が起こることがあります。上がる方向と下がる方向の両方に注意が必要です。
Q. 少量のお酒は健康によいと聞きましたが、本当ですか?
A. 以前はそうした考え方が広く知られていましたが、現在は見直されつつあります。アメリカ糖尿病協会の指針でも、現在飲んでいない方には、たとえ節度ある量であっても健康のために飲み始めないよう助言することが推奨されています。
Q. 飲酒後、寝る前に血糖値が低めでした。どうすればよいですか?
A. 少し炭水化物を補ってから休むことが選択肢になります。ただし適切な量は、お使いのお薬や普段の血糖値によって異なりますので、あらかじめ主治医にご確認ください。CGMをお使いの方は、夜間のアラート設定もあわせて確認しておくと安心です。
参考文献
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- 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年2月)
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- 厚生労働省 e-ヘルスネット「休肝日」
-
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン」/「糖尿病治療ガイド」食事療法の項
-
- American Diabetes Association「Standards of Care in Diabetes—2026」Section 5
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- 国立がん研究センター 多目的コホート研究(JPHC研究)飲酒パターンと総死亡との関連について
-
- 日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」
-
- メトグルコ錠 添付文書
※このページは2026年8月時点の情報にもとづく、一般的な情報提供を目的としたものです。飲酒の可否や適切な量は、合併症の有無やお使いのお薬によって異なりますので、実際の判断にあたっては必ず主治医にご相談ください。
※記事の内容に誤りや古い情報を見つけられた場合は、お手数ですが当院までご連絡いただけますと幸いです。確認のうえ、速やかに訂正いたします。

