糖尿病で足に出る症状|しびれ・痛み・爪・傷が治らない時の注意点
こんにちは。
澤木内科・糖尿病クリニック院長の澤木秀明です。
糖尿病の患者さんから、
「足がしびれるのですが、糖尿病のせいでしょうか?」
「足の裏がピリピリします」
「足の傷がなかなか治りません」
「爪や皮膚の異常が気になります」
と相談されることがあります。
糖尿病では、長い期間血糖値が高い状態が続くことで、神経や血管に影響が出ることがあります。
その結果、足のしびれ、痛み、感覚の低下、傷が治りにくい、皮膚や爪のトラブルなどが起こることがあります。
ただし、ここでとても大切なことがあります。
足のしびれや痛みがあるからといって、すべてが糖尿病による神経障害とは限りません。
特に、糖尿病になってからの期間がまだ短い方、急に片足だけ症状が出た方、腰痛を伴う方、片側だけ強く痛む方などでは、糖尿病以外の病気が原因になっていることもあります。
この記事では、糖尿病で足に出る症状、糖尿病性神経障害らしい症状、糖尿病以外の病気も考えた方がよい症状、そして傷や爪の注意点について、糖尿病専門医の立場からわかりやすく解説します。
糖尿病で足に症状が出る主な理由
糖尿病で足に症状が出る理由は、大きく分けて次の2つです。
1つ目は、神経障害です。
高血糖の状態が長く続くと、足先の神経に障害が起こり、しびれ、痛み、感覚の鈍さ、冷感、違和感などが出ることがあります。
2つ目は、血流の障害です。
糖尿病では動脈硬化が進みやすくなり、足の血流が悪くなることがあります。血流が悪くなると、傷が治りにくくなったり、足が冷たく感じたり、歩くと足が痛くなることがあります。
糖尿病診療ガイドライン2024では、糖尿病性足病変は、神経障害や末梢動脈疾患と関連して糖尿病患者さんの下肢に生じる感染、潰瘍、足組織の破壊性病変と定義されています。また、神経障害による感覚鈍麻、足の変形、皮膚の乾燥・角化、末梢動脈疾患による血流低下に、靴擦れなどの外的要因が加わって足病変が発症するとされています。
糖尿病性神経障害でよくみられる足の症状
糖尿病性神経障害では、足先や足の裏に次のような症状が出ることがあります。
・足先がしびれる
・足の裏がジンジンする
・ピリピリ、チクチク痛む
・刺すような痛みがある
・足の感覚が鈍くなる
・靴下をはいているような違和感がある
・足が冷たく感じる
・熱い、痛い、傷があることに気づきにくい
糖尿病診療ガイドライン2024では、糖尿病性神経障害の自覚症状として、足趾先や足底のしびれ、疼痛、異常感覚が挙げられています。また、Toronto Diabetic Neuropathy Expert Groupの診断基準では、ジンジンしたしびれ、チクチクした痛み、刺すような痛み、ヒリヒリする痛み、うずく痛みなどが神経障害性陽性症状として示されています。
糖尿病性神経障害らしい症状の特徴
糖尿病性神経障害には、比較的特徴的な出方があります。
ポイントは、足先から、左右対称に、ゆっくり進むことです。
糖尿病性神経障害では、症状や診察所見が下肢の遠位、つまり足先を中心として、左右対称性に発症・進行することが大きな特徴とされています。
たとえば、
・両足の足先が同じようにしびれる
・両足の足裏がジンジンする
・足先から徐々に感覚が鈍くなってきた
・糖尿病になってから長い期間が経っている
・血糖コントロールが長期間よくなかった
このような場合は、糖尿病性神経障害を考えます。
一方で、糖尿病になって間もない方や、症状が急に出た方、片足だけに強く出る方では、糖尿病以外の原因も慎重に考える必要があります。
足のしびれがあっても糖尿病以外の病気のことがあります
ここは、患者さんにぜひ知っていただきたいところです。
足がしびれる=糖尿病の神経障害
と決めつけてはいけません。
糖尿病診療ガイドライン2024でも、糖尿病性神経障害の診断では、糖尿病以外の疾患による末梢神経障害を除外する必要があり、家族歴、アルコール摂取量、胃切除後のビタミンB12欠乏、甲状腺機能低下症などの評価が重要とされています。また、比較的急速に症状が進行する場合には、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、いわゆるCIDPなど、他の神経疾患の可能性も考慮するとされています。
糖尿病以外で足のしびれや痛みを起こす病気には、たとえば次のようなものがあります。
・腰椎椎間板ヘルニア
・腰部脊柱管狭窄症
・坐骨神経痛
・末梢動脈疾患
・ビタミンB12欠乏
・甲状腺機能低下症
・アルコールによる神経障害
・薬剤性の神経障害
・整形外科的な足の病気
・皮膚や爪の感染症
特に、腰から足にかけて痛みが走る、歩くと足が痛くなって休むと楽になる、片足だけ強くしびれる、急に症状が悪化した、という場合は、糖尿病以外の病気も考える必要があります。
こんな足の症状は早めに皮膚科や整形外科に受診してください
次のような症状がある場合は、自己判断せず、早めに皮膚科や整形外科で相談してください。
あわせて、糖尿病内科で糖尿病治療を実施する必要があります。
・足の傷がなかなか治らない
・足の傷が赤く腫れている
・膿が出ている
・足の色が紫色や黒っぽく変わっている
・足が冷たく、血流が悪い感じがする
・歩くとふくらはぎや足が痛くなり、休むと楽になる
・急に片足だけ強くしびれる、痛む
・発熱を伴う
・足の変形や強い腫れがある
・靴擦れやタコ、魚の目が悪化している
糖尿病性足病変は、感染を伴うと重症化し、下肢切断につながることがあり、さらに生命予後を損なうこともあるとされています。特に深部組織にガスを伴う感染、膿瘍、壊死性筋膜炎などでは緊急の外科的処置が必要とされています。
怖がらせたいわけではありません。
大切なのは、小さな傷のうちに気づくことです。
糖尿病の方は、足の感覚が鈍くなると、靴擦れや傷に気づきにくくなることがあります。
そのため、毎日の足の観察がとても大切です。
爪や皮膚の異常にも注意が必要です
糖尿病では、足の爪や皮膚のトラブルにも注意が必要です。
たとえば、
・爪が厚くなって切りにくい
・巻き爪がある
・爪が皮膚に食い込んでいる
・足白癬、いわゆる水虫がある
・皮膚が乾燥してひび割れている
・タコや魚の目がある
・靴擦れがある
このような小さなトラブルが、傷や感染のきっかけになることがあります。
糖尿病診療ガイドライン2024では、足病変の予防として、足の定期観察によるリスク因子の同定、足に合った靴や足底板、胼胝・鶏眼・白癬症などの感染症・爪病変などの治療、家族も含めたセルフケア教育を繰り返し行うことが推奨されています。
糖尿病の方におすすめしたい足のセルフチェック
糖尿病の方は、できれば毎日、足を見てください。
見るポイントは次のとおりです。
・足の裏に傷がないか
・指の間がただれていないか
・爪が食い込んでいないか
・赤みや腫れがないか
・皮膚が乾燥してひび割れていないか
・タコや魚の目が悪化していないか
・靴擦れがないか
・足の色が悪くないか
・左右で温度差がないか
足の裏が見えにくい場合は、鏡を使ったり、ご家族に見てもらったりしてもよいでしょう。
神経障害や足病変のリスクがある方では、患者さんご自身の観察だけでなく、医療機関での定期的な足の確認も大切です。
糖尿病診療ガイドライン2024では、糖尿病性足病変の発症や重症化予防のため、少なくとも年1回の定期観察で足の状態を包括的に評価し、足病変のハイリスク患者さんではさらに高頻度に観察することが推奨されています。実際に足病変がある場合は、皮膚科や形成外科、整形外科などに通院いただいています。
糖尿病の方が足を守るために気をつけたいこと
足を守るために、日常生活では次の点に注意してください。
・毎日、足を観察する
・足を清潔に保つ
・入浴後は指の間までやさしく拭く
・乾燥が強い場合は保湿する
・爪を深く切りすぎない
・靴擦れしにくい靴を選ぶ
・裸足で歩かない
・低温やけどに注意する
・足に傷ができたら早めに相談する
・血糖値、血圧、脂質、禁煙など全身の管理も大切にする
糖尿病性足病変は、神経障害だけでなく、血流、感染、靴、皮膚、爪、足の変形など、さまざまな要因が重なって起こります。
そのため、フットケアは単なる足のケアではなく、全身管理の一部と考えることが大切です。
血糖コントロールは足を守るためにも大切です
足の症状が出てから慌てるのではなく、症状が出る前から予防することが大切です。
糖尿病性神経障害の発症・進行抑制には、厳格な血糖コントロールが推奨されています。また、糖尿病性足病変についても、足潰瘍の発症予防と治療に血糖コントロールが推奨されています。
ただし、自己判断で急に血糖を下げようとしたり、薬を調整したりするのは危険です。
血糖コントロールは、年齢、低血糖リスク、腎機能、生活状況、合併症の有無などを考えながら、医療機関で相談して進めることが大切です。
糖尿病で足に出る症状のまとめ
最後に、この記事のポイントをまとめます。
・糖尿病では、神経障害や血流障害により、足のしびれ、痛み、感覚低下、傷が治りにくい、爪や皮膚の異常が出ることがあります。
・糖尿病性神経障害は、足先から左右対称にゆっくり進むことが多いです。
・糖尿病になって間もない方、急に片足だけ症状が出た方、腰痛を伴う方などでは、糖尿病以外の病気も考える必要があります。
・足の傷、赤み、腫れ、膿、黒っぽい変色、強い痛み、冷感がある場合は、早めに医療機関で相談してください。
・爪、皮膚、タコ、魚の目、靴擦れなどの小さな異常も、糖尿病の方では注意が必要です。
・足を守るためには、血糖コントロール、毎日の足の観察、適切な靴、早めの相談が大切です。
足の症状は、不安になりやすいものです。
しかし、すべてを糖尿病のせいと決めつける必要はありません。
大切なのは、糖尿病による足の合併症を見逃さないこと、そして同時に、糖尿病以外の病気もきちんと考えることです。
澤木内科・糖尿病クリニックでは、糖尿病専門医として、血糖管理だけでなく、神経障害や足病変の予防、フットケアの重要性についてもわかりやすくお伝えしています。
足のしびれ、痛み、傷が治りにくい、爪や皮膚の異常が気になる方は、自己判断で放置せず、糖尿病の治療を継続しながら、皮膚科、整形外科などの医療機関にご相談ください。
参考文献
日本糖尿病学会 編・著:糖尿病診療ガイドライン2024
10章 糖尿病性神経障害
11章 糖尿病性足病変

