糖尿病の診断基準を専門医が解説|HbA1c・血糖値・75gOGTTの見方について

糖尿病の検査

糖尿病専門医が解説

「血糖値が高い」と言われたら?
糖尿病の診断基準をわかりやすく説明します

澤木秀明(院長・糖尿病専門医)

·澤木内科・糖尿病クリニック

健康診断でHbA1cや血糖値を指摘されたとき、「自分は糖尿病なの?」と不安になる方は多くいらっしゃいます。この記事では、日本糖尿病学会の診断基準をもとに、できるだけわかりやすく解説します。

大切なのは「慢性的な高血糖」があるかどうかです

糖尿病の診断で大切なのは、一時的に血糖値が高かったかどうかではなく、慢性的に高血糖が続いているかどうかです。

強いストレス・感染症・急な体調不良・薬剤の影響などで、一時的に血糖値が高くなることがあります。そのため、診断では血糖値やHbA1cだけでなく、症状・体重変化・家族歴・過去の検査結果なども含めて総合的に判断します。

ガイドラインのポイント

日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」では、糖尿病の診断は慢性高血糖を確認し、さらに症状・臨床所見・家族歴・体重歴などを参考に総合判断するとされています。

「糖尿病型」と判断される数値

まず、診断の前段階として「糖尿病型」という考え方があります。以下のいずれかに当てはまる場合、検査結果としては糖尿病型と判断されます。

検査項目 糖尿病型の基準
空腹時血糖値 126 mg/dL 以上
75gOGTT 2時間値 200 mg/dL 以上
随時血糖値 200 mg/dL 以上
HbA1c 6.5% 以上
⚠ 注意点

糖尿病型の数値が1回出ても、すべての人がその場で糖尿病と確定診断されるわけではありません。診断には次で説明するような確認が必要です。

糖尿病と診断される3つのパターン

1

糖尿病型を2回確認した場合
別の日の検査で糖尿病型が2回以上確認されれば診断されます。ただし、HbA1cだけを2回測定しても診断はできません2回のうち1回は、必ず血糖値による確認が必要です。

2

血糖値とHbA1cが同じ採血で糖尿病型だった場合
同日の採血で「血糖値が糖尿病型」かつ「HbA1cも糖尿病型」であれば、1回の検査でも診断できる場合があります(例:空腹時血糖値126mg/dL以上、かつHbA1c 6.5%以上)。

3

血糖値が糖尿病型で、典型的な症状がある場合
血糖値が糖尿病型で、糖尿病の典型的な症状または確実な糖尿病網膜症があれば、1回の検査で診断される場合があります。

糖尿病の典型的な症状

のどが渇く

水分を大量に飲む

尿の回数が増える

食べているのに体重が減る

HbA1cだけが高い場合はどう考える?

健康診断でよくあるケースです。

よくある状況
  • 「HbA1cが6.5%以上と言われた」
  • 「でも空腹時血糖値はそこまで高くなかった」

この場合、すぐに糖尿病と確定できないことがあります。再検査では血糖値とHbA1cの両方を測定することが原則です。

また、貧血・透析・肝硬変・輸血後・溶血・異常ヘモグロビン血症などでは、HbA1cと実際の平均血糖値がずれることがあります。
ガイドラインでは、このような病態では必ず血糖値による診断を行うとされています。

ガイドラインのポイント

血糖値あるいはHbA1cの一方のみが糖尿病型で診断できない場合は「糖尿病疑い」となり、3〜6か月以内に血糖値およびHbA1cの再検査が必要とされています。

75gOGTTとは?

75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)とは、ブドウ糖を含んだ検査用の飲み物を飲んで、その後の血糖値の上がり方を調べる検査です。通常の空腹時血糖値やHbA1cだけではわかりにくい、食後の血糖上昇や境界型糖尿病を見つけるために役立ちます。

OGTTを積極的に検討する対象者

  • 糖尿病が疑われる方・境界型の方
  • 空腹時血糖値が正常高値の方
  • HbA1c 5.6%以上の方
  • 肥満や脂質異常症のある方
  • 糖尿病の家族歴が濃厚な方

正常型・境界型・糖尿病型の違い

判定 基準の目安
正常型 空腹時血糖値 110mg/dL未満、かつ 75gOGTT 2時間値 140mg/dL未満
境界型(予備軍) 正常型にも糖尿病型にも当てはまらない状態
糖尿病型 空腹時血糖値 126mg/dL以上、または 75gOGTT 2時間値 200mg/dL以上など
⚠ 境界型(糖尿病予備軍)について

「まだ糖尿病ではないから大丈夫」と放置するのは危険です。将来糖尿病に進行するリスクが高く、食事・運動・体重管理・定期的な検査が大切です。

自宅の血糖測定器やCGMだけで診断できる?

最近はCGM(持続血糖測定器)を使って、ご自身の血糖値を確認できる機会が増えています。日々の血糖変動を知るうえで非常に役立ちますが、糖尿病の診断に使う血糖値は、原則として医療機関で測定する静脈血漿血糖値です。

ガイドラインのポイント

簡易血糖測定器・CGMの値は、糖尿病診断に使用できないとされています。CGMで高い値が出た場合は、医療機関で正式な検査を受けることが大切です。

健康診断でHbA1cや血糖値が高いと言われたら

まず大切なのは、結果を放置しないことです。次のような場合は、早めに医療機関へ相談することをおすすめします。

  • HbA1cが6.5%以上と言われた
  • 空腹時血糖値が126mg/dL以上と言われた
  • 随時血糖値が200mg/dL以上と言われた
  • のどが渇く・尿が多い・体重が減るなどの症状がある
  • 家族に糖尿病の方がいる
  • 以前から「糖尿病予備軍」と言われている

糖尿病は初期には自覚症状が乏しいこともありますが、高血糖を放置すると網膜症・腎症・神経障害・動脈硬化などの合併症につながることがあります。

この記事のまとめ

  • 診断では慢性的な高血糖があるかを確認します
  • 糖尿病型の基準は空腹時126mg/dL以上、随時200mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上など
  • HbA1cだけが高くても、それだけで確定診断はできません
  • 診断には血糖値による確認が必要です
  • 境界型(予備軍)の段階でも、放置せず早めに対策を
  • CGMや自己測定の値だけで糖尿病と診断することはできません

澤木内科・糖尿病クリニックへのご相談

糖尿病専門医が血糖値・HbA1c・必要に応じた追加検査をもとに、現在の状態をわかりやすくご説明します。

糖尿病なのか心配・糖尿病予備軍と言われた・HbA1cが高いがどうすればいい?

自己判断で様子を見るのではなく、お気軽にご相談ください。

参考文献:日本糖尿病学会 編・著「糖尿病診療ガイドライン2024」第1章 糖尿病診断の指針