こんにちは。
澤木内科・糖尿病クリニック院長の澤木秀明です。
「CGMをつけてみたら、食後に血糖値が
180を超えていました。これって糖尿病ですか?」
フリースタイルリブレ2を自費で購入した
40代の女性患者さんが、データを見せながら
心配そうにそう話してくれました。
血糖値スパイクという言葉を検索して
不安になっている方が増えています。
まず最初に大切なことをお伝えします。
「血糖値スパイク」は、厳密には医学用語ではありません。
一般的には、食後に血糖値が急に上がる状態、あるいは血糖値が大きく上下する状態をわかりやすく表現した言葉として使われています。医学的には、食後高血糖や血糖変動という言葉の方が近いです。
ただし、血糖値スパイクという言葉が医学用語ではないからといって、気にしなくてよいという意味ではありません。
大切なのは、
「なぜ食後に血糖値が上がっているのか」
「糖尿病や境界型糖尿病が隠れていないか」
「肥満、高血圧、脂質異常症などの代謝異常が一緒にないか」
を確認することです。
この記事では、血糖値スパイクとは何か、CGMでわかること、糖尿病や境界型糖尿病との違い、食事療法や薬の考え方について、糖尿病専門医の立場からわかりやすく解説します。
血糖値スパイクは「食後高血糖」や「血糖変動」を指すことが多いです
食事をすると、誰でも血糖値はある程度上がります。
炭水化物を含む食事をとると、消化吸収されたブドウ糖が血液中に入り、血糖値が上がります。
その後、インスリンの働きによって、血糖値は徐々に下がっていきます。
しかし、糖尿病や境界型糖尿病の方では、インスリンの分泌や効き方が十分でないため、食後に血糖値が大きく上がることがあります。
これが、一般的に「血糖値スパイク」と呼ばれる状態です。
ただし、血糖値スパイクという言葉には、明確な診断基準があるわけではありません。
そのため、CGM(フリースタイルリブレ2やデクスコムG7)で一度食後に高くなったからといって、それだけで糖尿病と判断することはできません。
糖尿病かどうか、境界型糖尿病かどうかを判断するには、空腹時血糖値、75g経口ブドウ糖負荷試験、HbA1cなどを確認する必要があります。
糖尿病かどうかはCGMだけでは診断できません
CGMは、血糖値の流れを知るうえで非常に役立ちます。
CGMを使うと、
・食後にどれくらい血糖値が上がるか
・夜間に低血糖がないか
・朝だけ血糖値が高くないか
・運動後に血糖値がどう変わるか
・外食や間食で血糖値がどう動くか
を確認しやすくなります。
しかし、CGMは糖尿病の診断そのものに使う検査ではありません。
ADA Standards of Care in Diabetes 2026では、糖尿病や糖尿病予備群の診断には、空腹時血糖値、75gOGTT 2時間値、HbA1cなどを用いるとされ、CGMを糖尿病や糖尿病予備群のスクリーニング・診断に用いるには現時点で十分な根拠がないとされています。
日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024でも、糖尿病型、正常型、境界型の判定には空腹時血糖値と75gOGTT 2時間値などを用い、糖尿病疑い、境界型、空腹時血糖正常高値、HbA1c 5.6%以上、肥満、脂質異常症、糖尿病家族歴が濃厚な方などでは75gOGTTを積極的に検討するとされています。
つまり、CGMはとても有用ですが、役割は
「診断すること」ではなく、「血糖の動きを見える化すること」
です。
糖尿病・境界型糖尿病の確認には何を見る?
血糖値スパイクが気になる方で、糖尿病や境界型糖尿病を確認したい場合、主に次の検査を見ます。
| 検査 | 何を見る検査か |
|---|---|
| 空腹時血糖値 | 食事をしていない状態の血糖値 |
| 75gOGTT | ブドウ糖を飲んだ後の血糖値の上がり方 |
| HbA1c | 過去1〜2か月程度の平均的な血糖状態 |
| 随時血糖値 | 食事時間に関係なく測った血糖値 |
| 必要に応じてCGM | 日常生活での血糖変動の確認 |
ADA 2026では、糖尿病の診断基準として、HbA1c 6.5%以上、空腹時血糖値126mg/dL以上、75gOGTT 2時間値200mg/dL以上、典型的な高血糖症状がある場合の随時血糖値200mg/dL以上などが示されています。
また、糖尿病予備群の目安として、HbA1c 5.7〜6.4%、空腹時血糖値100〜125mg/dL、75gOGTT 2時間値140〜199mg/dLが示されています。
つまり、血糖値スパイクが気になる方は、まずCGMの値だけで判断するのではなく、医療機関で血液検査や75gOGTTを確認することが大切です。
血糖値スパイクだけが悪いのではありません
ここはとても大切です。
血糖値スパイクという言葉を聞くと、
「食後に血糖値が少しでも上がることが悪い」
と思ってしまう方がいます。
しかし、食事をすれば血糖値は上がります。
血糖値が上がること自体が、すべて悪いわけではありません。
問題になるのは、背景に
・糖尿病
・境界型糖尿病
・肥満
・内臓脂肪の蓄積
・高血圧
・脂質異常症
・喫煙
・運動不足
・睡眠不足
などの代謝異常や動脈硬化リスクがある場合です。
つまり、血糖値スパイクだけを単独で怖がるより、
「自分に糖尿病や境界型糖尿病、肥満、高血圧、脂質異常症などがないか」
を確認することが大切です。
胃切除後の血糖値スパイクは意味が異なることがあります
血糖値スパイクの中には、糖尿病や境界型糖尿病とは違う背景で起こるものもあります。
たとえば、胃の手術を受けた後、食べ物が胃に十分とどまらず、急速に小腸へ流れ込むことがあります。
このような状態では、食後に血糖値が急に上がり、その後にインスリンが多く出て、反応性低血糖が起こることがあります。
これは、いわゆるダンピング症候群と関連することがあります。ダンピング症候群は、食後に食べ物が胃から小腸へ急速に移動することで起こる状態と説明されています。
このような場合、CGMでは食後に大きな血糖上昇や、その後の低血糖が見えることがあります。
しかし、これは必ずしも糖尿病のリスクが高いという意味ではありません。
胃切除後の体の構造変化による血糖変動であり、糖尿病や境界型糖尿病に伴う血糖値スパイクとは意味が違います。
したがって、血糖値スパイクがあるかどうかだけで判断せず、
胃の手術歴があるか
肥満や高血圧、脂質異常症があるか
空腹時血糖、75gOGTT、HbA1cがどうか
を総合的に見る必要があります。
食後に眠くなるのは血糖値スパイクですか?
食後の眠気で血糖値スパイクを心配される方も多いです。
確かに、食後に血糖値が急に上がったり、その後に急に下がったりすると、眠気やだるさを感じる方がいます。
ただし、食後の眠気は血糖値だけで起こるわけではありません。
たとえば、
・食べすぎ
・睡眠不足
・昼食後の自然な眠気
・炭水化物に偏った食事
・アルコール
・胃切除後のダンピング症候群
・薬の影響
・低血糖
などでも起こります。
ですから、食後の眠気だけで血糖値スパイクと決めつけるのではなく、必要に応じて血糖値、HbA1c、75gOGTT、CGMなどで確認することが大切です。
血糖値スパイクを抑える食事の考え方
血糖値スパイクが気になる方にまず大切なのは、食事療法です。
特に意識したいのは、次のような点です。
・主食だけで食べない
・たんぱく質を組み合わせる
・野菜、きのこ、海藻など食物繊維を増やす
・砂糖入り飲料を避ける
・早食いを避ける
・食べる順番を工夫する
・一度に大量の糖質をとらない
・食後に軽く体を動かす
日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024では、糖尿病の食事療法は血糖コントロールに有効であり、低炭水化物食、中等度炭水化物食、低脂肪食、地中海食、低GI/低GL食など、さまざまな食事パターンが検討されています。
ただし、極端な糖質制限を自己判断で行うと、薬の種類によっては低血糖や体調不良につながることがあります。
特にインスリンやSU薬を使用している方、SGLT2阻害薬を使用している方、妊娠中の方、高齢の方、腎臓病がある方は、医療機関で相談しながら行ってください。
正常型の方は、まず食事療法・運動療法が基本です
血糖値スパイクが気になっていても、検査の結果、
空腹時血糖値が正常
75gOGTTも正常型
HbA1cも正常範囲
であれば、糖尿病や境界型糖尿病とは言えません。
このような正常型の方では、基本的には薬ではなく、食事療法・運動療法・体重管理・睡眠などの生活習慣の見直しが中心になります。
血糖値スパイクが気になるからといって、正常型の方に糖尿病薬を使うわけではありません。
ただし、肥満、高血圧、脂質異常症、家族歴などがある方では、将来の糖尿病リスクを下げるために、生活習慣を整えることは大切です。
境界型糖尿病や糖尿病では薬を使うこともあります
境界型糖尿病や糖尿病の方では、食事療法・運動療法だけでなく、必要に応じて薬を使うことがあります。
食後高血糖が目立つ方では、α-グルコシダーゼ阻害薬という薬を検討することがあります。
α-グルコシダーゼ阻害薬は、小腸で糖質の分解・吸収を遅らせ、食後血糖の上昇をゆるやかにする薬です。
日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024では、インスリン以外の血糖降下薬としてα-グルコシダーゼ阻害薬が挙げられており、食後血糖を改善させる薬として説明されています。
また、ボグリボース0.2mgについては、耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制の適応があります。ただし、これは食事療法・運動療法を十分に行っても改善されない場合など、条件があります。
つまり、境界型糖尿病や糖尿病の方では薬が選択肢になることがありますが、正常型の方は薬ではなく、まず食事療法・運動療法が基本です。
CGMは血糖値スパイクの確認に役立ちます
CGMは、血糖値の流れを見える化するために役立ちます。
たとえば、CGMを使うと、
・朝食後だけ上がる
・夕食後に長く高い
・夜間に下がっている
・外食後に血糖値が長く高い
・食後に歩くと上がり方が変わる
といったことが見えやすくなります。
しかし、繰り返しになりますが、CGMだけで糖尿病や境界型糖尿病を診断することはできません。
CGMは、
「血糖値スパイクがあるかを知る道具」
として役立ちますが、
「糖尿病かどうかを診断する道具」
ではありません。
糖尿病や境界型糖尿病の確認には、医療機関で血糖値、HbA1c、75gOGTTなどを確認しましょう。
こんな方は医療機関で相談してください
次のような方は、一度医療機関で相談してください。
・食後に強い眠気やだるさがある
・健診で血糖値やHbA1cを指摘された
・家族に糖尿病の方がいる
・体重が増えてきた
・高血圧や脂質異常症がある
・食後高血糖が気になる
・CGMで食後に大きな血糖上昇が見られた
・胃切除後で食後の血糖変動や低血糖が気になる
・低血糖のような症状がある
・糖尿病か境界型糖尿病か確認したい
特に、肥満、高血圧、脂質異常症、家族歴などがある方で血糖値スパイクが気になる場合は、75gOGTTなどを含めて確認する価値があります。
澤木内科・糖尿病クリニックでできること
澤木内科・糖尿病クリニックでは、血糖値スパイクが気になる方、食後高血糖が心配な方、CGMを治療に活かしたい方の相談に対応しています。
当院では、
・血糖値、HbA1cの確認
・必要に応じた75gOGTTの検討
・CGM、リブレ2、Dexcom G7の活用相談(保険診療や自費:病名による)
・食事療法、運動療法の相談
・糖尿病、境界型糖尿病、正常型の確認
・薬物療法が必要かどうかの判断
・胃切除後など特殊な背景がある方の相談
を行っています。
血糖値スパイクという言葉だけに振り回されず、今の自分の状態を正しく知ることが大切です。
まとめ
血糖値スパイクは、厳密には医学用語ではありません。
一般的には、食後高血糖や血糖変動を指して使われる言葉です。
血糖値スパイクが気になる場合でも、CGMだけで糖尿病かどうかを診断することはできません。
糖尿病や境界型糖尿病を確認するには、空腹時血糖値、75gOGTT、HbA1cなどを確認する必要があります。
血糖値スパイクそのものがすべて悪いわけではありません。
大切なのは、背景に糖尿病、境界型糖尿病、肥満、高血圧、脂質異常症などがあるかどうかです。
胃切除後など、糖尿病とは違う理由で食後に血糖値が急に上がる方もいます。
正常型の方では、基本は食事療法・運動療法です。
境界型糖尿病や糖尿病の方では、必要に応じてα-グルコシダーゼ阻害薬などを検討することがあります。
食後の眠気、血糖値スパイク、食後高血糖が気になる方は、自己判断で不安になりすぎず、医療機関で現在の状態を確認しましょう。

