糖尿病の合併症はいつから起こる?HbA1cが高い方に知ってほしい注意サイン

糖尿病合併症

糖尿病と診断された方や、健康診断で血糖値やHbA1cが高いと言われた方から、よく次のような質問をいただきます。

「糖尿病の合併症は、いつから起こるのですか?」
「まだ症状がなければ大丈夫ですか?」
「HbA1cが高いと言われましたが、どのくらい急いで受診した方がよいですか?」

糖尿病の合併症は、ある日突然始まるというより、血糖値が高い状態が続くことで、少しずつ血管や神経に負担がかかって進んでいくことが多い病気です。

ただし、ここで大切なのは、必要以上に怖がることではありません。

糖尿病の合併症は、早く気づき、適切に検査を受け、血糖値・血圧・脂質などを整えていくことで、発症や進行を防げる可能性があります。

この記事では、糖尿病専門医の立場から、糖尿病の合併症がいつ頃から問題になるのか、どのような検査が大切なのか、そして受診を急いだ方がよいサインについて、できるだけわかりやすくお伝えします。


糖尿病の合併症は「症状が出てから」では厳しいことがあります

糖尿病の怖さは、血糖値が高くても最初は自覚症状が少ないことです。

のどが渇く、尿が多い、体重が減る、疲れやすいといった症状が出ることもありますが、かなり血糖値が高くなるまで何も感じない方も少なくありません。

合併症も同じです。

目、腎臓、神経、心臓、脳、足などに影響が出ても、初期には症状がほとんどないことがあります。

たとえば、糖尿病網膜症は、初期には見え方に変化がないことがあります。腎臓の合併症も、初期にはむくみや尿の変化を自覚しないことが多いです。

そのため、「症状がないから大丈夫」と考えるのではなく、症状がない時期から検査で確認することが大切です。


糖尿病の合併症には大きく2種類あります

糖尿病の合併症は、大きく分けると「細い血管の合併症」と「太い血管の合併症」があります。

細い血管の合併症には、主に次の3つがあります。

・糖尿病性神(し)経障害
・糖尿病網膜症(め)
・糖尿病性腎症(じ)

いわゆる糖尿病の三大合併症です。
覚え方はし・め・じです!

一方、太い血管の合併症には、

・末梢動脈疾患(足壊疽)(え)
・脳梗塞(の)
・心筋梗塞や狭心症(き)

などがあります。
覚え方はえ・の・きです!

さらに最近では、糖尿病と関連して注意したい病気として、歯周病、感染症、脂肪肝、認知機能低下、フレイル、がんなども重要視されています。

つまり糖尿病治療は、血糖値だけを見て終わりではありません。

血糖値を整えながら、目、腎臓、神経、心臓、脳、足、歯、体重、筋肉量などを総合的に見ていくことが大切です。


では、合併症はいつから起こるのでしょうか?

結論から言うと、合併症がいつから起こるかは、人によって大きく違います。

糖尿病になってからの年数、HbA1cの高さ、血圧、脂質異常症、喫煙、肥満、腎機能、年齢、家族歴、治療状況などによって変わります。

ただし、2型糖尿病の場合は注意が必要です。

2型糖尿病は、診断される何年も前から血糖値が少しずつ高くなっていることがあります。そのため、糖尿病と診断された時点で、すでに軽い網膜症や腎症、神経障害が見つかることがあります。

一方、1型糖尿病では、発症時期が比較的はっきりしていることが多いですが、発症後の血糖管理や罹病期間によって合併症リスクが変わります。

大切なのは、「診断されたばかりだから合併症はないはず」と決めつけないことです。

診断された時点、または糖尿病が疑われた時点から、合併症の確認を始めることが大切です。


目の合併症|見え方に異常がなくても眼科受診が大切です

糖尿病網膜症は、糖尿病の代表的な合併症です。

網膜という目の奥の血管が傷み、進行すると視力低下や失明につながることがあります。

怖いのは、初期には自覚症状が少ないことです。

「見えているから大丈夫」と思っていても、眼底検査をすると網膜症が見つかることがあります。

糖尿病と診断された方、または糖尿病が疑われる方は、眼科で眼底検査を受けることが大切です。

特に次のような方は、眼科受診を後回しにしないようにしましょう。

・HbA1cが高い状態が続いている
・糖尿病と診断されてから眼科に行っていない
・急に血糖値が悪くなった
・目がかすむ、見えにくい、黒いものが飛ぶ
・妊娠中、または妊娠を考えている
・腎症や高血圧もある

糖尿病専門クリニックで血糖値を整えることと、眼科で目の状態を確認することは、どちらも大切です。


腎臓の合併症|尿たんぱくが出てからではなく、尿アルブミンも重要です

糖尿病性腎症は、腎臓の細い血管が傷むことで起こります。

腎臓は、血液をろ過して体に必要なものを残し、不要なものを尿として出す働きをしています。

糖尿病によって腎臓に負担がかかると、最初は尿アルブミンという検査で異常が見つかることがあります。

ここで大切なのは、普通の尿検査で「尿たんぱく陰性」だからといって、必ずしも安心とは限らないことです。

早い段階の腎症では、尿たんぱくではなく、尿アルブミン検査で初めて気づくことがあります。

また、腎臓の働きは、血液検査のeGFRでも確認します。

糖尿病の方は、

・尿アルブミン
・尿たんぱく
・eGFR
・血圧
・脂質
・薬の内容

を総合的に見ながら、腎臓を守る治療を考えることが大切です。

腎臓の合併症は、かなり進むまで症状が出にくいことがあります。むくみやだるさが出てからではなく、検査で早めに確認しましょう。


神経障害|足のしびれだけではありません

糖尿病性神経障害というと、足のしびれや痛みを思い浮かべる方が多いと思います。

もちろん、足のしびれ、ピリピリした痛み、感覚が鈍い、足が冷たい感じがする、といった症状は大切なサインです。

しかし、神経障害は足だけではありません。

自律神経に影響すると、

・立ちくらみ
・胃もたれ
・便秘や下痢
・排尿のトラブル
・汗のかき方の変化
・低血糖に気づきにくい

といった症状につながることがあります。

足の感覚が鈍くなると、小さな傷ややけどに気づきにくくなります。そこに血流障害や感染が重なると、足潰瘍や壊疽につながることもあります。

足の合併症を防ぐためには、血糖管理だけでなく、足を毎日見ること、靴ずれを放置しないこと、爪切りやたこ・うおのめにも注意することが大切です。

歯周病|糖尿病の方は歯科受診も大切です

糖尿病の合併症というと、目、腎臓、神経、心臓、脳、足を思い浮かべる方が多いと思います。

しかし、糖尿病の方にぜひ知っていただきたいのが、歯周病との関係です。

歯周病は、歯ぐきや歯を支える骨に炎症が起こる病気です。進行すると、歯ぐきから血が出る、歯ぐきが腫れる、口臭が気になる、歯がぐらつく、最終的には歯を失うこともあります。

糖尿病の方では、血糖値が高い状態が続くことで、感染に対する抵抗力が落ちたり、炎症が長引いたりしやすくなります。そのため、歯周病が進みやすくなることがあります。

また、歯周病による慢性的な炎症が、血糖コントロールに影響することもあります。

つまり、糖尿病と歯周病は一方通行ではなく、互いに影響し合う関係があります。

次のような方は、歯科受診をおすすめします。

・歯ぐきから血が出る
・歯ぐきが腫れる
・口臭が気になる
・歯がぐらつく
・しばらく歯科に行っていない
・糖尿病と診断されてから歯科受診をしていない
・HbA1cが高い状態が続いている
・入れ歯やかみ合わせに不安がある

糖尿病の治療では、内科で血糖値を整えることに加えて、歯科で歯ぐきの状態を確認することも大切です。

「歯が痛くなってから歯科に行く」のではなく、症状が強くない時期から歯周病のチェックを受けることが、将来の歯と全身の健康を守ることにつながります。

当院では、糖尿病の患者さんに対して、必要に応じて歯科受診の大切さもお伝えしています。糖尿病治療を続ける中で、「最近、歯科に行っていないな」と思われた方は、一度歯科で相談してみてください。


心臓・脳の合併症|糖尿病では胸の痛みがはっきりしないこともあります

糖尿病では、細い血管だけでなく、太い血管の動脈硬化も進みやすくなります。

その結果、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞などのリスクが高くなります。

特に注意したいのは、糖尿病の方では、心筋梗塞でも典型的な胸の痛みがはっきりしないことがある点です。

次のような症状がある場合は、早めに医療機関へ相談してください。

・胸が重い、締めつけられる
・息切れが増えた
・階段や坂道でつらい
・冷や汗が出る
・左肩、背中、あごに違和感がある
・急にろれつが回らない
・片側の手足に力が入らない
・顔の片側がゆがむ
・急なふらつきや視野の異常がある

脳梗塞が疑われる症状は、様子を見るのではなく、救急対応が必要です。

糖尿病治療では、HbA1cだけでなく、血圧、LDLコレステロール、中性脂肪、喫煙、体重、腎機能も一緒に管理することが大切です。


HbA1cが高いと、合併症は必ず起こるのでしょうか?

HbA1cが高いからといって、必ずすぐに合併症が起こるわけではありません。

しかし、HbA1cが高い状態が長く続くほど、合併症のリスクは高くなります。

特に、

・HbA1cが8%以上の状態が続いている
・HbA1cが9%以上、10%以上と言われた
・急にHbA1cが悪化した
・血圧やLDLコレステロール値も高い
・喫煙している
・腎機能が低下している
・眼科受診を長くしていない

このような場合は、合併症の確認を早めに行うことをおすすめします。

一方で、急に厳しくしすぎることがよいとは限らない方もいます。

高齢の方、低血糖を起こしやすい方、腎機能が低下している方、心臓病がある方、生活背景が複雑な方では、目標を個別に考える必要があります。

糖尿病治療で大切なのは、数字だけを追いかけることではありません。

安全に、無理なく、長く続けられる治療を一緒に考えることです。


合併症を防ぐために、今日からできること

糖尿病の合併症を防ぐために大切なことは、特別なことばかりではありません。

まずは、今の状態を知ることです。

・HbA1c
・空腹時血糖
・食後血糖
・血圧
・LDLコレステロール
・中性脂肪
・尿アルブミン
・尿たんぱく
・eGFR
・眼底検査
・足の状態

これらを確認しながら、自分に合った治療を考えていきます。

食事療法、運動療法、薬物療法、インスリン治療、CGM、栄養相談など、必要な方法は患者さんによって違います。

「もっと頑張ってください」と言うだけでは、糖尿病治療は続きません。

なぜ血糖値が上がっているのか、食後高血糖が強いのか、夜間低血糖が隠れていないか、薬のタイミングが合っているのか、食事の内容や時間が影響していないかを一緒に考えることが大切です。


当院で大切にしていること

澤木内科・糖尿病クリニックでは、糖尿病専門医、看護師、管理栄養士、医療事務スタッフが連携し、患者さん一人ひとりに合った糖尿病診療を目指しています。

血糖値やHbA1cだけでなく、合併症のリスク、生活背景、食事、運動、薬の負担、低血糖への不安なども含めて診療します。

また、必要に応じて、眼科、歯科、腎臓内科、循環器内科など、他の医療機関とも連携しながら診療を進めます。

糖尿病の合併症は怖いものですが、早く気づき、早く対策を始めることで、将来のリスクを減らせる可能性があります。

「今は症状がないから大丈夫」ではなく、症状がない今だからこそ、確認しておくことが大切です。


まとめ|糖尿病の合併症は「早めに知ること」が大切です

糖尿病の合併症は、血糖値が高い状態が続くことで、少しずつ進むことがあります。

特に注意したいのは、

・目の合併症は、見え方に異常がなくても進むことがある
・腎臓の合併症は、尿アルブミンやeGFRで早めに確認する
・神経障害は、足のしびれだけでなく自律神経にも関係する
・心筋梗塞や脳梗塞など、太い血管の病気にも注意が必要
・HbA1cだけでなく、血圧、脂質、腎機能、喫煙、体重も大切

という点です。

糖尿病の合併症は、起きてから慌てるのではなく、起きる前から確認し、予防していくことが大切です。

血糖値やHbA1cが高いと言われた方、眼科受診をしばらくしていない方、尿検査や腎機能が気になる方、足のしびれや違和感がある方は、自己判断で様子を見続けず、医療機関でご相談ください。

澤木内科・糖尿病クリニックでは、患者さんが安心して糖尿病と向き合えるよう、スタッフ一同でサポートしてまいります。


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参考にした主な資料

日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2024』
・2章 糖尿病治療の目標と指針
・8章 糖尿病網膜症
・9章 糖尿病性腎症
・12章 糖尿病性大血管症
・22章 糖尿病と癌、糖尿病関連検査指標の標準化など

American Diabetes Association. Standards of Care in Diabetes—2026.