糖尿病と脂肪肝|血糖値だけでなく肝臓も確認したい理由

糖尿病の検査

糖尿病の患者さんから、次のようなご質問をいただくことがあります。

「健康診断で脂肪肝と言われました。糖尿病と関係がありますか?」
「肝臓の数値が高いと言われましたが、放置しても大丈夫でしょうか?」
「脂肪肝にもウゴービが使えるようになったと聞きました」
「糖尿病の薬で、肝臓もよくなるのでしょうか?」

脂肪肝は、単に「肝臓に脂肪がついているだけ」と考えられがちです。

しかし、糖尿病のある方では、脂肪肝に炎症や線維化が加わり、肝臓の病気が進行する可能性があります。また、脂肪肝は、肥満、血圧、脂質異常症、心臓病などとも深く関係しています。

糖尿病診療では、血糖値やHbA1cだけを見るのではなく、腎臓、目、神経、心臓、脳、そして肝臓まで含めて確認することが大切です。

この記事では、

・糖尿病と脂肪肝の関係
・MASLDとMASHとは何か
・肝臓の線維化が重要な理由
・FIB-4インデックスで何がわかるのか
・ウゴービの新しいMASH適応
・糖尿病がある方と、ない方の受診先の違い
・澤木内科・糖尿病クリニックでできること

について、糖尿病専門医の立場からわかりやすくお伝えします。


脂肪肝は、糖尿病と深く関係しています

脂肪肝とは、肝臓の細胞に脂肪が蓄積した状態です。

以前は、お酒をあまり飲まない方の脂肪肝を「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と呼んでいました。

現在は、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの代謝異常との関係をより明確にするため、

代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)

という名称が使われるようになっています。

糖尿病、特に2型糖尿病では、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が生じやすくなります。

インスリン抵抗性が強くなると、血糖値が上がるだけでなく、肝臓に脂肪がたまりやすくなります。

反対に、脂肪肝が進むとインスリン抵抗性が強くなり、血糖コントロールが難しくなることもあります。

つまり、糖尿病と脂肪肝は、互いに影響し合う関係にあります。


MASLDとMASHは同じではありません

MASLDは、代謝異常と関連した脂肪性肝疾患全体を表す名称です。

その中でも、肝臓に脂肪がつくだけでなく、

・肝臓に炎症が起こる
・肝細胞が傷つく
・肝臓が少しずつ硬くなる

といった変化を伴う状態を、

代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)

と呼びます。

MASHが進行すると、肝臓の中に線維という硬い組織が増えていきます。これを「肝線維化」といいます。

肝線維化は、進み具合によってF0からF4までに分類されます。

・F0:線維化なし
・F1:軽度の線維化
・F2:中等度の線維化
・F3:高度の線維化
・F4:肝硬変

脂肪の量だけでなく、肝線維化がどの程度進んでいるかが、その後の肝臓の病気や予後を考えるうえで重要です。


脂肪肝で最も確認したいのは「肝臓の硬さ」です

脂肪肝と診断されても、すべての方が肝硬変になるわけではありません。

一方で、糖尿病、肥満、高血圧、脂質異常症などがある方では、肝線維化が進みやすいことがあります。

肝線維化が進むと、

・肝硬変
・食道静脈瘤
・腹水
・肝不全
・肝細胞がん

などにつながる可能性があります。

そのため、脂肪肝では「脂肪があるかどうか」だけでなく、線維化が進んでいないかを確認することが大切です。

ただし、肝線維化を正確に判定するには、腹部超音波検査、肝硬度測定、血液を用いた線維化マーカー、場合によっては肝生検など、複数の評価が必要になることがあります。


FIB-4インデックスとは?

FIB-4インデックスは、肝線維化が進んでいる可能性を調べるための指標です。

次の4項目を使って計算します。

・年齢
・AST
・ALT
・血小板数

特別な採血項目を追加しなくても、日常診療で行う血液検査から計算できることが多い点が特徴です。

一般的な目安としては、

・1.3未満:進行した肝線維化の可能性が比較的低い
・1.3以上2.67以下:追加評価を考える領域
・2.67を超える:進行した線維化の可能性が高く、専門医への紹介を考える

とされています。

ただし、FIB-4だけでMASHや線維化の段階を確定することはできません。

年齢による影響が大きく、若い方では低く出やすく、高齢の方では高く出やすい特徴があります。また、糖尿病や肥満のある方では、FIB-4が低くても線維化が完全に否定できない場合があります。

FIB-4は、病名を確定する検査ではなく、

「消化器内科や肝臓内科で、さらに詳しく調べた方がよい方を見つけるための一次評価」

と考えるのが適切です。


当院ではFIB-4による一次評価を行います

澤木内科・糖尿病クリニックでは、糖尿病の患者さんについて、必要に応じて、

・AST
・ALT
・血小板数
・年齢

からFIB-4インデックスを計算します。

そして、

・FIB-4が高い
・以前より上昇している
・健康診断や画像検査で脂肪肝を指摘されている
・肥満、高血圧、脂質異常症を合併している
・肝臓について、より詳しい評価が必要と考えられる

といった場合には、腹部エコーや肝硬度測定などができる消化器内科・肝臓内科をご案内します。

当院には腹部エコー検査や肝硬度測定の設備がありません。

そのため、当院だけでMASLDやMASH、線維化ステージを確定するのではなく、FIB-4による一次評価を行い、必要な方を専門医につなぐことを大切にしています。


ウゴービにMASHの適応が追加されました

2026年6月、セマグルチドを成分とするウゴービに、新たな効能が追加されました。

対象となるのは、

肝硬変を伴わないMASHで、中等度または高度の線維化がある方

です。

具体的には、肝線維化ステージF2またはF3の方が対象となります。

ここで大切なのは、

「脂肪肝があれば、誰でもウゴービを使える」という意味ではない

ということです。

F0やF1の軽い線維化、肝硬変に相当するF4、単に腹部エコーで脂肪肝を指摘されたというだけでは、今回追加されたMASHの適応には該当しません。

また、F2またはF3であることを非侵襲的検査で判断する場合も、FIB-4だけでは不十分です。

肝硬度測定や血液による線維化評価、画像所見、代謝異常など、複数の情報を組み合わせ、施設の基準をみたす、肝臓専門医または消化器病専門医が総合的に判断します。

ウゴービをMASHの治療として使用する場合は、治療中も定期的に、

・肝硬変へ進行していないか
・肝酵素
・肝臓の硬さ
・体重
・血糖
・血圧
・脂質

などを確認する必要があります。

したがって、MASHに対するウゴービ治療は、糖尿病クリニックだけで完結する治療ではありません。


糖尿病がない脂肪肝の方へ

糖尿病がなく、脂肪肝の治療としてウゴービを希望される方は、最初から当院を受診するのではなく、まず腹部エコー検査が可能な消化器内科を受診してください。

おすすめする流れは次のとおりです。

1.腹部エコーが可能な消化器内科を受診する

まず、脂肪肝の有無、肝臓の形態、胆のうや胆管などを含めて評価してもらいます。

2.MASHや肝線維化の追加評価を受ける

必要に応じて、肝硬度測定、血液による線維化評価、その他の画像検査などが検討されます。

3.ウゴービのMASH適応が考えられる場合

施設基準を満たし、ウゴービによるMASH治療が可能な消化器内科または肝臓内科を紹介してもらってください。

当院では、糖尿病のない方の「肝硬変を伴わない脂肪肝」に対して、MASH治療目的のウゴービ投与は行っておりません。

これは、MASHに対するウゴービ治療では、肝臓専門医または消化器病専門医による診断と、継続的な肝臓の評価が必要だからです。

脂肪肝の精密検査やMASH治療を希望される場合は、最初に消化器内科・肝臓内科へご相談ください。


糖尿病のある方では、セマグルチドを糖尿病治療に活用できることがあります

セマグルチドは、ウゴービだけに含まれる成分ではありません。

2型糖尿病の治療薬としては、

・週1回注射するオゼンピック
・1日1回内服するリベルサス

があります。

これらは、ウゴービと同じセマグルチドを成分としていますが、承認されている病気、用量、使い方が異なります。

糖尿病がある方では、血糖値、体重、心臓や腎臓の状態などを考え、糖尿病治療としてセマグルチドを選択することがあります。

セマグルチドによって、

・血糖コントロールの改善
・体重の減少
・インスリン抵抗性の改善
・脂質や血圧などの代謝指標の改善

が得られることで、肝臓にもよい影響を及ぼすことが期待されます。

ADAの診療指針でも、2型糖尿病、MASLD、過体重または肥満がある方では、MASHへの有益性が示されているGLP-1受容体作動薬を糖尿病治療の選択肢として考慮しています。

ただし、オゼンピックやリベルサスを糖尿病治療として使用することと、ウゴービをMASH治療として使用することは同じではありません。

糖尿病治療薬としてセマグルチドを使用していても、MASHや肝線維化の確定診断、肝硬変や肝がんの評価が不要になるわけではありません。

肝臓の精密評価が必要な場合は、消化器内科や肝臓内科と連携します。


セマグルチドは、糖尿病の方全員に適するわけではありません

セマグルチドは有用な治療選択肢ですが、希望すれば必ず使用できる薬ではありません。

患者さんの状態によっては、

・吐き気
・嘔吐
・下痢
・便秘
・食欲低下
・脱水
・胆石や胆のう炎
・急性膵炎
・低血糖
・急速な体重減少に伴う筋肉量低下

などに注意が必要です。

特に、インスリンやSU薬を使用している方では、低血糖を避けるための薬の調整が必要になることがあります。

また、高齢の方、食事量が少ない方、筋肉量が少ない方では、体重だけでなく栄養状態や筋肉量も確認しながら治療を考えます。

「肝臓によさそうだから」という理由だけで薬を選ぶのではなく、糖尿病、体重、腎臓、心臓、食事、筋肉量、副作用リスクを総合的に判断することが大切です。


肥満症としてウゴービを希望される方へ

ウゴービには、MASHとは別に「肥満症」の適応があります。

肥満症として保険診療でウゴービを使用するには、BMIだけでなく、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病などの健康障害、これまでの食事療法・運動療法、施設要件など、複数の条件を満たす必要があります。

当院では、肥満症の診断があり、保険診療によるウゴービ治療の条件を満たす可能性がある方について、診療体制が整っている時期にはご相談をお受けする場合があります。

ただし、診療体制や人員の状況により、

肥満症の保険治療薬の投与は、受付をストップしている場合があります。

受診をご希望の方は、事前に当院ホームページのお知らせや予約案内をご確認ください。

なお、脂肪肝またはMASHの治療としてウゴービを希望される方は、この肥満症外来とは受診の流れが異なります。

糖尿病のない脂肪肝の方は、先に腹部エコーが可能な消化器内科または肝臓内科を受診してください。


脂肪肝を改善する基本は、薬だけではありません

脂肪肝の治療では、体重、食事、運動、血糖値、血圧、脂質を整えることが基本です。

体重を減らす必要がある方でも、短期間で急激に減量すればよいわけではありません。

無理な食事制限をすると、筋肉量まで減り、将来的にフレイルや血糖コントロールの悪化につながる可能性があります。

当院では、管理栄養士と連携し、

・食事量
・炭水化物の取り方
・たんぱく質の確保
・間食や飲み物
・外食
・飲酒
・生活リズム
・無理のない運動

などを患者さんと一緒に確認します。

薬を使う場合も、食事療法や運動療法を置き換えるものではなく、生活習慣への取り組みと組み合わせていくことが大切です。


澤木内科・糖尿病クリニックで対応できる方

当院で主に対応するのは、次のような方です。

糖尿病があり、脂肪肝も指摘されている方

血糖値、HbA1c、体重、血圧、脂質、肝機能、血小板数などを確認し、FIB-4による一次評価を行います。

必要に応じて、糖尿病治療薬としてのセマグルチドを含め、患者さんに合った治療を検討します。

肝臓の詳しい評価が必要な場合は、消化器内科・肝臓内科へ紹介します。

糖尿病があり、肥満や血糖コントロールに困っている方

食事療法、運動療法、薬物療法、栄養相談などを組み合わせ、血糖値だけでなく、体重や肝臓を含めた代謝状態の改善を目指します。

肥満症の診断があり、保険診療によるウゴービ治療を希望される方

診断基準、これまでの治療歴、適応があるか、などを確認します。

ただし、肥満症の保険治療薬の投与は、受付をストップしている場合があります。


当院では対応していない方

次の方は、当院ではなく、最初から消化器内科または肝臓内科へご相談ください。

・糖尿病がなく、脂肪肝の精密検査を希望する方
・糖尿病がなく、脂肪肝やMASHに対するウゴービ治療を希望する方
・腹部エコーや肝硬度測定を希望する方
・肝硬変、肝腫瘍、黄疸、腹水などを指摘されている方
・MASHの確定診断や線維化ステージ判定を希望する方

当院では腹部エコー検査や肝硬度測定を行っていないため、これらの評価は消化器内科・肝臓内科で受けていただく必要があります。


早めに相談してほしい糖尿病の方

次のような糖尿病の方は、肝臓についても一度確認することをおすすめします。

・健康診断で脂肪肝を指摘された
・AST、ALT、γ-GTPなどの異常を繰り返し指摘されている
・肥満や内臓脂肪がある
・中性脂肪が高い
・高血圧や脂質異常症を合併している
・血小板数が以前より低下している
・FIB-4を計算したことがない
・以前より体重が増えている
・セマグルチドなどの糖尿病治療薬について相談したい
・糖尿病と脂肪肝の両方をまとめて診てほしい

健康診断や他院での血液検査、腹部エコーの結果をお持ちの方は、受診時にご持参ください。


まとめ|糖尿病がある方は、血糖値と一緒に肝臓も確認しましょう

糖尿病と脂肪肝は、互いに影響し合う関係にあります。

大切なポイントは次のとおりです。

・糖尿病の方ではMASLDやMASHを合併することがある
・脂肪の量だけでなく、肝線維化の進行が重要
・FIB-4は肝線維化リスクを調べる一次評価として役立つ
・FIB-4だけでMASHやF2・F3を確定することはできない
・詳しい評価には腹部エコー、肝硬度測定、血液マーカーなどが必要
・ウゴービのMASH適応は、肝硬変を伴わないF2またはF3に限られる
・MASH治療としてのウゴービは、肝臓専門医または消化器病専門医の関与が必要
・糖尿病のない脂肪肝の方は、まず消化器内科・肝臓内科を受診する
・糖尿病のある方では、糖尿病治療としてセマグルチドを選択できることがある
・糖尿病治療薬を使っていても、必要な肝臓の精密検査は別に受ける

澤木内科・糖尿病クリニックでは、HbA1cだけでなく、体重、血圧、脂質、腎臓、心臓、肝臓などを総合的に確認し、将来の合併症を防ぐ治療を目指しています。

糖尿病があり、脂肪肝を指摘されている方、体重や血糖値がなかなか改善しない方、糖尿病治療薬について相談したい方は、検査結果をご持参のうえご相談ください。

一方、糖尿病がなく、脂肪肝やMASHに対するウゴービ治療を希望される方は、最初に腹部エコー検査が可能な消化器内科・肝臓内科を受診してください。

患者さんが必要な検査と治療へ、できるだけ迷わず進めるよう、当院でも適切な医療機関との連携を大切にしてまいります。


関連ページ

・糖尿病の合併症はいつから起こる?
https://www.osaka-tounyoubyou.jp/syoujou/diabetes-complicationswhen/

・糖尿病と腎臓|尿たんぱく・尿アルブミン・eGFRで何がわかる?
https://www.osaka-tounyoubyou.jp/syoujou/diabetes-kidney-uacr-egfr/

・糖尿病で急に痩せた?体重減少で見落としたくないサイン
https://www.osaka-tounyoubyou.jp/syoujou/diabetesweightlosswarning/

・診療のご案内
https://www.osaka-tounyoubyou.jp/shinnryou-annai/

・ネット予約
https://www.osaka-tounyoubyou.jp/web-yoyaku/


参考資料

・American Diabetes Association「Standards of Care in Diabetes—2026」
https://diabetesjournals.org/care/issue/49/Supplement_1

・厚生労働省「セマグルチド(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進ガイドライン(代謝機能障害関連脂肪肝炎)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001713733.pdf

・独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「ウゴービ皮下注 電子化された添付文書・医薬品情報」
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdSearch/02/2499418G6020?user=1

・ノボ ノルディスク ファーマ株式会社「ウゴービ皮下注 MASHに対する効能又は効果追加承認取得のご案内」
https://pro.novonordisk.co.jp/products/wegovy-mash.html