冬の低温やけどに注意|糖尿病の方の足をカイロ・湯たんぽから守るには?糖尿病専門医が解説

糖尿病の方の足の低温やけどに注意 カイロ・湯たんぽの安全な使い方 糖尿病の治療

こんにちは。澤木内科・糖尿病クリニック院長の澤木秀明です。

寒くなると、湯たんぽやカイロ、電気あんかで足を温める方が増えてきます。体を冷やさない工夫は大切ですが、糖尿病の方は、気づかないうちに足に「低温やけど」を負ってしまうことがあるため、注意が必要です。

このページでは、低温やけどが起こるしくみと、糖尿病の方が特に気をつけたい理由、暖房器具の安全な使い方、毎日の足のチェックの方法をご紹介します。

院長 澤木秀明
院長 澤木秀明

「熱くなかったのに、朝起きたら水ぶくれができていた」。寝ている間は熱さに気づかず、朝になって足の異変に気づくことがあります。足は、自分では見えにくい場所です。冬こそ、足を見る習慣をつけましょう。


低温やけどとは

低温やけどは、「熱い」と感じないくらいの温度のものに、長い時間触れ続けることで起こるやけどです。製品評価技術基盤機構(NITE)や消費者庁は、次のような目安を示しています。

皮膚に触れている温度 低温やけどになるまでの時間の目安
44℃ 約3〜4時間
46℃ 約30分〜1時間
50℃ 約2〜3分

この表は目安で、これより短い時間なら安全、という意味ではありません。熱源が当たっている部分が体重などで圧迫されていると、さらに短い時間で起こることがあります。また、血流や皮膚の感覚には個人差があるため、44℃より低い温度でも、触れている時間によっては低温やけどになるおそれがあります。

低温やけどは、見た目は赤みや小さな水ぶくれ程度でも、皮膚の深いところまで傷んでいることがあるのが特徴です。あとから傷が深くなったり、治るまでに時間がかかったりすることがあります。


糖尿病の方が、特に注意したい理由

消費者庁やNITEも、糖尿病の方は感覚が鈍くなっていることがあり、低温やけどが重症化しやすいとして、注意を呼びかけています。

  • 熱さや痛みを感じにくい:糖尿病の合併症の一つである神経障害があると、特に足の感覚が鈍くなり、熱さや痛みに気づきにくくなります。
  • 傷が治りにくい:血流が悪くなっていたり、血糖値が高い状態が続いていたりすると、傷の治りが遅くなります。
  • 感染しやすい:小さな傷から細菌が入り、化膿したり、潰瘍(皮膚や皮下組織が深くえぐれた状態)になったりすることがあります。重症になると、足の切断が必要になることもあります。

つまり、「気づきにくく、治りにくく、悪化しやすい」のが、糖尿病の方の足のやけどです。だからこそ、やけどをしないための予防と、早く気づくための毎日のチェックが大切です。

▶関連記事:糖尿病の合併症とは?目・腎臓・神経・足・心臓・脳の症状と検査を専門医が解説


「しびれがないから大丈夫」とは限りません

米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)が2026年に発表した2型糖尿病の治療の提言では、足を含めて合併症を定期的に確認することが、糖尿病の治療に欠かせない一部とされています。ご自宅では毎日、足を見てください。これに加えて、症状がなくても、医療機関で定期的に足の皮膚・感覚・血流を確認することが勧められています。2型糖尿病の提言では通常は年1回が目安で、足の状態によっては、より短い間隔で確認します。どこで、いつ確認を受けるかは、主治医にご相談ください。

同じく2026年に発表された1型糖尿病の提言では、糖尿病による末梢神経障害がある方のうち、最大で約半数には、しびれや痛みなどの自覚症状がないとされています。気づかないまま足の手入れをしないでいると、足の潰瘍や切断のリスクが高くなります。「しびれがないから」と安心せず、毎日の足のチェックを習慣にしましょう。

診察では、細い糸(モノフィラメント)を足に当てて押された感覚が分かるかや、音叉の振動を感じるかなどを調べ、足を守る感覚が保たれているかを確認します。症状に応じて、温度や痛みの感じ方も含めて判断します。

受診のタイミングの目安

  • 次の診察でご相談ください:普段のお手入れのこと、以前からあって変わらないしびれ
  • 気づいた日に連絡し、速やかに受診してください:新しいやけどや水ぶくれ、治りにくい傷
  • すぐに受診してください:足が急に黒っぽく・紫色になった、赤みや腫れが広がる、足の傷や腫れに発熱を伴う。痛みが弱くても受診し、夜間・休日は救急病院を受診してください。

メトホルミンを飲んでいる方へ
2型糖尿病の提言では、メトホルミンを長く飲んでいる方では、血液中のビタミンB12が低くなり、神経障害の症状が悪くなることがあるとされています。しびれが新たに出た、強くなったというときは、主治医にお伝えください。血液検査で確認し、不足していれば補うことがあります。お薬は自己判断で中止しないでください。


暖房器具ごとの、安全な使い方

寝ている間は、同じ場所に熱源が触れ続けても気づきにくいため、特に注意が必要です。

暖房器具 気をつけたいこと
湯たんぽ 布団を温めたら、寝る前に布団から出しましょう。カバーをつけていても、長い時間触れていると低温やけどになることがあります。
電気あんか 布団を温めるために使い、寝るときは電源を切って、足から離しましょう。
電気毛布 取扱説明書に従って使いましょう。高温のまま眠らず、折り重ねたり、体に巻き付けたりしないようにしましょう。
使い捨てカイロ 直接肌に貼らず、同じ場所に長い時間当て続けないようにしましょう。寝るときは使わないでください。こたつなど、ほかの暖房器具と一緒に使わないようにしましょう。ベルトなどで締め付けると、圧迫で低温やけどが起こりやすくなります。
こたつ・ホットカーペット こたつやホットカーペットの上で、そのまま寝てしまわないようにしましょう。
ストーブ・ヒーター 足を近づけすぎないようにしましょう。うたた寝にも注意が必要です。

足の感覚が鈍くなっていると言われたことがある方は、湯たんぽ・あんか・カイロを足に当てて温めるのは避けましょう。締め付けない靴下や、部屋全体を暖める工夫を取り入れましょう。


お風呂のお湯は、足を入れる前に確認しましょう

足の感覚が鈍くなっていると、お湯の熱さにも気づきにくくなります。お湯はぬるめにし、足ではなく、温度計か、感覚が正常な肘でお湯の温度を確かめましょう。手足の感覚が鈍い方は、温度計を使ってください。足を長くお湯に浸すのは避けましょう。


毎日の足のチェック

やけどや傷に早く気づくために、毎日、足を見る習慣をつけましょう。お風呂上がりなど、時間を決めておくと続けやすくなります。

  • 赤み、水ぶくれ、傷、腫れがないか
  • 皮膚の色が変わっているところ(黒っぽい、紫色など)がないか
  • 乾燥やひび割れ、たこやうおのめ、水虫がないか
  • 爪が皮膚に食い込んでいないか
  • 靴下に、血や汁のしみがついていないか

足の裏や指の間は、自分では見えにくい場所です。手鏡を使ったり、ご家族に見てもらったりしましょう。

あわせて、次のような日常のお手入れも大切です。

  • 足を洗ったら、指の間までしっかり拭いて乾かす
  • 乾燥する季節は、保湿クリームを塗る(指の間は、蒸れやすいため塗らない)
  • 爪はまっすぐに切り、角は切り込まず、引っかかるところはやすりで軽く整える
  • 家の中でも、はだしで歩かない
  • 締め付けの強すぎない靴下と、足に合った靴を選ぶ

足に傷や炎症がなく、運動を制限されていない方は、冬も足に合った靴で、無理のない範囲で歩きましょう。米国・欧州の1型糖尿病の提言では、足の神経障害がある方でも、歩くことで足の潰瘍が増えることはないとされています。運動の前後に足を見る習慣もつけましょう。やけど・水ぶくれ・潰瘍があるときや、片足が急に赤く熱を持って腫れたときは、歩く運動を中止し、速やかに受診してください。

▶関連記事:糖尿病の運動療法|血糖値・HbA1cを下げ、合併症と認知症を予防する運動のコツ


低温やけどに気づいたら

  • まず熱源を外してください。水ぶくれはつぶさず、清潔なガーゼなどでそっと覆いましょう。
  • 見た目が軽く、痛みが弱くても、冷やして様子を見ずに、気づいた時点で皮膚科や形成外科などに連絡し、速やかに受診してください。低温やけどは、あとから深くなることがあります。
  • 赤みや腫れが広がる、うみが出る、熱が出る、においがするなどの場合は、感染しているおそれがあります。すぐに医療機関を受診してください。
  • 当院におかかりの方は、診療時間内であれば、受診先について電話でご相談いただけます。ただし、急な異変があるときは、当院への連絡を待たずに、直接受診してください。

当院での足の診療について

当院では、糖尿病の診療の中で、必要に応じて足の状態を観察するフットチェックをおこない、ご自宅でのお手入れの方法をお伝えしています。

当院には皮膚科医・形成外科医が在籍していないため、やけどや傷、巻き爪、たこ・うおのめ、水虫の治療や、爪切りなどの処置はおこなっていません。必要に応じて、専門の医療機関をご紹介します。やけどや急な異変があるときは、当院の予約や電話相談を待たずに、皮膚科や形成外科などを直接受診してください。


まとめ

  • 低温やけどは、44℃くらいの温度でも、長い時間触れ続けることで起こります。
  • 糖尿病の方、特に足の感覚や血流が低下している方は、熱さに気づきにくく、傷が治りにくいため、低温やけどが重症化しやすいとされています。
  • 湯たんぽや電気あんかは寝る前に布団から出し、カイロは直接肌に貼らず、寝るときは使わないようにしましょう。
  • やけどや水ぶくれは、気づいた日に医療機関へ。急な変色や、広がる赤み・腫れは、すぐに受診しましょう。
  • 足の神経障害は、自覚症状がないこともあります。毎日ご自身で足を見ることに加えて、症状がなくても、定期的に医療機関で足を確認してもらいましょう。
院長 澤木秀明
院長 澤木秀明

冬は足元の暖房を使う機会が増えます。お風呂上がりなどに、足の裏や指の間も見てみましょう。血糖値の管理と足のチェックを、一緒に続けていきましょう。

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【参考】
製品評価技術基盤機構(NITE)「就寝時の“足元”暖房にご用心!」(2025年1月14日)
消費者庁「ゆたんぽを安全に正しく使用しましょう!」(2017年12月6日)
Davies MJ, Aroda VR, Bajaj M, et al. Management of Type 2 Diabetes, 2026. A Consensus Report by the American Diabetes Association (ADA) and the European Association for the Study of Diabetes (EASD). Diabetes Care 2026;49. https://doi.org/10.2337/dci26-0141
Holt RIG, DeVries JH, Hess-Fischl A, et al. The Management of Type 1 Diabetes in Adults. The Updated 2026 Consensus Report by the American Diabetes Association (ADA) and the European Association for the Study of Diabetes (EASD). Diabetes Care 2026;49. https://doi.org/10.2337/dci26-0122

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