こんにちは。澤木内科・糖尿病クリニック院長の澤木秀明です。
インスリン治療では、1日を通して血糖値の土台を整える「持効型インスリン(基礎インスリン)」がとても大切です。持効型インスリンにはいくつかの種類があり、効き方の長さや安定性、打つ回数、注入器が少しずつ違います。
2026年10月には、持効型インスリンの一つであるレベミルの販売中止予定が案内され、切り替えについて相談される方も増えています。このページでは、日本で使える主な持効型インスリンの違いと、選ぶときの考え方を解説します。

「どのインスリンが一番良い」というものはありません。低血糖の起こりやすさや生活のリズム、注射のしやすさに合わせて、一人ひとりに合うものを選んでいきます。
持効型インスリン(基礎インスリン)の役割
健康な方のすい臓は、食事をしていないときも、少しずつインスリンを出し続けています(基礎分泌)。持効型インスリンは、この基礎分泌を補い、夜間や空腹時の血糖値を安定させるはたらきをします。
米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)が2026年に発表した2型糖尿病の治療の提言では、2型糖尿病でインスリン治療が必要になった場合、多くは基礎インスリンから始めることが勧められています。また、昔から使われている中間型インスリン(NPH)と比べて、持効型インスリンでは、HbA1cがわずかに下がり、夜間の低血糖も少ないと報告されています。
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国内の主な持効型インスリンと供給状況
2026年11月時点で、日本で使える主な持効型インスリンは次のとおりです。
| 一般名 | 主な製品名 | 打つ回数 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| インスリン グラルギン(100単位/mL) | ランタス、インスリン グラルギンBS「リリー」「FFP」(バイオシミラー)※ | 1日1回 | 長く使われてきた持効型。バイオシミラー(バイオ後続品)は、先行品と同等の品質・効果が確認された製剤です。 |
| インスリン グラルギン(300単位/mL) | ランタスXR | 1日1回 | 濃度を3倍にした製剤。効き目がより長く、なだらかです。 |
| インスリン デグルデク | トレシーバ | 1日1回 | 効き目が特に長く、安定しています。 |
| インスリン デテミル | レベミル | 通常1日1回(医師の指示で1日2回のことも) | 注フレックスペン・注ペンフィルは、2028年3月を目途に販売中止予定と案内されています。 |
| インスリン イコデク | アウィクリ | 週1回 | 決めた曜日に週1回注射する基礎インスリン。食事時のインスリンは、別に必要な場合があります。 |
※グラルギンBS「リリー」は、2026年10月から限定出荷となっています。グラルギンBS「FFP」は販売中止が案内され(在庫がなくなり次第終了、2027年7月予定)、新たな処方は控えるよう依頼されています(2026年11月3日確認)。
このほか、中間型インスリン(NPH)や、持効型とほかの薬を組み合わせた配合注(持効型と超速効型を組み合わせたもの、持効型とGLP-1受容体作動薬を組み合わせたもの)もあります。
「第2世代」の持効型インスリンとは
グラルギン300単位/mL(ランタスXR)とデグルデク(トレシーバ)は、「第2世代」の持効型インスリンと呼ばれることがあります。
2026年の1型糖尿病の提言では、頻回注射療法で、グラルギン100単位/mLと比べて、第2世代の持効型は効き目が長く、低血糖が少ないと報告されており、とくに低血糖が問題になっている方では選択肢になるとしています。
なお、国内の使い方では、ランタスXRは毎日一定の時刻に注射します。トレシーバも原則は一定の時刻ですが、成人では必要な場合に限って時刻を変更できます。変更の方法は、主治医と確認してください。
院長も共著者として参加した国内研究:ランタスXRへの切り替えと注射の感じ方
注射のしやすさについては、これとは別に、成人の2型糖尿病の方を対象とした国内の研究(HIGH-QOL STUDY)があります。院長の澤木も共著者として参加し、2019年に医学雑誌「Internal Medicine」に発表されました。
ランタスXR(グラルギン300単位/mL)では、同じ単位数を注射する場合の液量は、グラルギン100単位/mLの3分の1です。ただし、この研究だけでは、痛みの評価が良くなった理由を液量の違いと断定できません。比較のために従来の製剤を使い続けるグループはなく、患者さんも切り替えを知ったうえで評価しています。注入器の違いなども影響するため、痛みが必ず軽くなるとはいえません。

注射の痛みや押しにくさは、毎日続ける治療では大切なポイントです。気になることがあれば、診察でお気軽にお伝えください。
▶論文:HIGH-QOL STUDY(Internal Medicine 2019;58:2943-2948、J-STAGE)
※院長の澤木は本研究の共著者です。本研究はサノフィ株式会社の資金支援を受けて実施されました。
ただし、グラルギン100単位/mLが劣っているという意味ではありません。長く使われてきた実績があり、多くの方が安定して使っています。
週1回のインスリン(アウィクリ)
アウィクリ(インスリン イコデク)は、週に1回注射する持効型インスリンで、日本では2024年に承認され、2025年から使われています。
- 2型糖尿病の方:2026年の2型糖尿病の提言では、インスリンを初めて使う成人の2型糖尿病の方を対象にした試験で、毎日1回のグラルギン100単位/mLに比べて、週1回のイコデクでHbA1cがわずかに大きく下がったと紹介されています。一方、血糖値が54mg/dLを下回る低血糖や、ほかの人の助けが必要な低血糖を合わせた発生頻度は、全体には低いものの、イコデクで高くなりました。毎日の基礎インスリンの注射に負担がある場合には、選択肢の一つです。ご本人や介助する方が、注射する曜日と単位数を確実に確認できるか、低血糖に対応できるかも含めて選びます。
- 1型糖尿病の方:2026年の1型糖尿病の提言では、1型糖尿病の試験で低血糖が多かったことから、日常的な使用は現時点では勧められていません。日本では成人の1型糖尿病も対象となる承認になっていますが、1型糖尿病の方では、低血糖のリスクをふまえて慎重に判断します。
どうやって選ぶ?
持効型インスリンは、次のようなことを考えながら、主治医と一緒に選びます。
- 低血糖の起こりやすさ:夜間の低血糖が多い方などでは、効き目が安定している製剤を考えます。
- 生活のリズム:仕事や生活の都合で、毎日同じ時刻に打つのが難しい方もいます。
- 注射の回数と、注射を誰がするか:ご自分で打つのか、ご家族や訪問看護の方が手伝うのかも大切です。
- 必要なインスリンの量と、量の細かさ:少ない量のインスリンで足りる方では、細かい量の調整が必要になることがあります。
- 注入器の使いやすさ:ペンの重さ、目盛りの見やすさ、押す力なども、続けやすさに関わります。
- 妊娠の予定:妊娠を考えている方、妊娠中の方は、使うインスリンを慎重に選びます。
- 供給の状況:2026年10月以降、一部のインスリンは販売中止予定や限定出荷となっています。
レベミルをお使いの方へ
ノボ ノルディスク ファーマは、2026年10月、レベミル(注フレックスペン・注ペンフィル)を2028年3月を目途に販売中止とする予定であることを医療機関に案内しました。まだ時間はありますが、在庫の状況によっては早めに手に入りにくくなる可能性もあるため、余裕をもって切り替えを考えていきます。
- 切り替え先は一人ひとり違います:持効型インスリンは、種類によって効き方が違うため、同じ単位数のままで切り替えられるとは限りません。どの製剤に、どのくらいの量で切り替えるかは、主治医が血糖の動きを見ながら決めます。
- 切り替え後しばらくは、血糖値に注意:切り替えた直後は、血糖の動きが変わることがあります。血糖測定やCGM(持続血糖測定)で様子を確認し、低血糖の症状に注意しましょう。
- 妊娠中・妊娠を希望される方:レベミルは、妊娠中の使用について臨床試験のデータがあり、妊娠を考えている方や妊娠中の方に長く使われてきました。1型糖尿病の方を対象に、妊娠中の血糖管理について、デテミルと中間型インスリンを比べた臨床試験や、デグルデクとデテミルを比べた臨床試験があります。グラルギン(100単位/mL)についても、妊娠中に使用した方の経過が複数の研究で報告されています。妊娠を希望している方は妊娠前から、妊娠中の方は早めに主治医に相談し、切り替えの時期と血糖の確認方法を決めましょう。
- グラルギンのバイオシミラーについて:リリー社のグラルギンBS(注カート・注ミリオペン)は2026年10月から限定出荷となっており、グラルギンBS「FFP」は販売中止が案内されています。切り替え先は、主治医と薬剤師が供給状況も確認して検討します。
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知っておいていただきたい注意点
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当院でのインスリンの相談について
当院では、低血糖の起こりやすさ、必要な単位数、注射をする方の生活や介助の状況を確認し、製剤と注入器を一緒に選びます。0.5単位刻みの投与が必要な方の注入器や、供給状況にともなう切り替えについてもご相談ください。
週1回の基礎インスリンを使う場合は、これまでのインスリンの使用状況と血糖値、低血糖の起こりやすさを確認して、開始量を決めます。ほかの基礎インスリンから切り替えるときは、初回と2回目の量が異なることがあるため、注射する日と単位数を一緒に確認します。
今お使いのインスリンが生活に合っているか気になる方や、販売中止にともなう切り替えが心配な方は、診察でご相談ください。
まとめ
- 持効型インスリンは、夜間や空腹時の血糖値を安定させる「土台」のインスリンです。
- 日本では、グラルギン(100単位/mL・300単位/mL)、デグルデク、デテミル、週1回のイコデクなどが使われています。
- グラルギン300単位/mLやデグルデクなどの第2世代の持効型は、グラルギン100単位/mLと比べて、効き目が長く、低血糖が少ないと報告されています。
- 週1回のイコデクは、2型糖尿病では選択肢の一つですが、1型糖尿病では日常的な使用は勧められていません。使う場合は、決めた曜日に週1回だけ注射します。
- レベミルは2028年3月を目途に販売中止予定です。切り替えは、主治医と相談しながら計画的に進めましょう。

インスリンの種類を変えるときは、不安を感じる方も多いと思います。切り替えの前後は、血糖の動きを一緒に確認しながら進めますので、安心してご相談ください。
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【参考文献】
Davies MJ, Aroda VR, Bajaj M, et al. Management of Type 2 Diabetes, 2026. A Consensus Report by the American Diabetes Association (ADA) and the European Association for the Study of Diabetes (EASD). Diabetes Care 2026;49. https://doi.org/10.2337/dci26-0141
Holt RIG, DeVries JH, Hess-Fischl A, et al. The Management of Type 1 Diabetes in Adults. The Updated 2026 Consensus Report by the American Diabetes Association (ADA) and the European Association for the Study of Diabetes (EASD). Diabetes Care 2026;49. https://doi.org/10.2337/dci26-0122
日本糖尿病学会「インスリン製剤・GLP-1受容体作動薬一覧」(2026年)
Murata T, Tone A, Kouyama R, Kamiuchi K, Narasaki K, Tsuruo M, Watanabe T, Kawashima S, Kato K, Sawaki H, Osawa K, Kimura M, Toyoda M, Suganuma A, Sakane N; HIGH-QOL study group. The Effect of High-concentration Insulin Glarigine on the Quality of Life of Patients with Type 2 Diabetes Mellitus: A Pre-post Study (HIGH-QOL STUDY). Intern Med. 2019;58(20):2943-2948. doi:10.2169/internalmedicine.1794-18(題名のGlarigineは原文表記)
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