こんにちは。澤木内科・糖尿病クリニック院長の澤木秀明です。
寒くなってくると、外来でこんな声をよく聞くようになります。
「食事は変えていないのに、冬になるとHbA1cが上がるんです」
「寒くて散歩に行けず、体を動かす機会が減りました」
実は、HbA1cには季節による変動があり、冬から春にかけて高くなりやすいことが知られています。このページでは、冬に血糖値が上がりやすい理由と、寒い季節を上手に乗り切るための工夫を解説します。

冬にHbA1cが少し上がるのは、多くの方に見られることです。ご自分を責める必要はありません。理由を知って、できることから一緒に工夫していきましょう。
HbA1cには季節の変動があります
日本の糖尿病の患者さんを対象にした研究では、HbA1cは冬から春(3月ごろ)に高く、夏から秋(9月ごろ)に低くなる傾向が報告されています。平均年齢約70歳の2型糖尿病の方86人について、2019〜2021年の診療記録を調べた研究では、3月と9月のHbA1cに、各年およそ0.3〜0.4ポイントの差がありました。
1型糖尿病の方でも、冬にHbA1cが高くなる傾向が報告されています。小規模な観察研究では、インスリンポンプやCGM(持続血糖測定)を使っている方で季節による変動が小さい傾向も報告されていますが、機器を使っていても季節による変動はみられます。
なお、変動の時期や大きさには個人差があり、すべての方に同じ変化が起こるわけではありません。
HbA1cは過去1〜2か月ほどの血糖値の平均を反映するため、冬の生活の影響は、春先の検査で数値として表れやすいのです。
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冬に血糖値が上がりやすい理由
冬に血糖値が上がりやすい理由として、次のようなことが考えられています。
- 体を動かす量が減る:寒さや日の短さで、散歩や外出の機会が減ります。
- 食べる量が増えやすい:忘年会、クリスマス、お正月など、ごちそうやお酒の機会が続きます。こたつでのみかんやお菓子も、つい手が伸びがちです。
- 体重が増えやすい:運動量の減少と食事の増加が重なり、冬に体重が増える方も少なくありません。
- 体調をくずしやすい:かぜやインフルエンザなどの感染症にかかると、血糖値が上がりやすくなります。
どれか1つというより、いくつかが重なって、冬の血糖値に影響していると考えられます。
冬の運動の工夫
寒い日に無理に外へ出る必要はありません。家の中でできる運動を、生活の中に少しずつ取り入れることが大切です。
- テレビを見ながらのかかとの上げ下げ、スクワット
- ラジオ体操やストレッチ
- 買い物ではエレベーターより階段、ショッピングモールの中を歩く
- 食後に少し体を動かす(食後の血糖値の上昇をおさえる助けになります)
外で運動する場合は、寒い早朝を避け、準備運動をしっかりしましょう。心臓病や高血圧のある方、足に神経障害のある方、網膜症が進んでいる方、足に傷がある方は、運動の内容を主治医と相談してください。スクワットでは息を止めず、膝や足に負担のない範囲でおこないましょう。
インスリンや、SU薬など低血糖を起こしやすい飲み薬を使っている方は、運動の前後に血糖値を確認し、補食や薬の調整の方法を事前に主治医と相談してください。ブドウ糖を持ち歩き、運動後や夜間に遅れて起こる低血糖にも注意しましょう。
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冬の食事の工夫
冬ならではの食べ物にも、少し気をつけるポイントがあります。
| 冬の食べ物 | 気をつけたいポイント |
|---|---|
| 鍋料理 | 野菜やきのこ、たんぱく質がとれるおすすめの料理です。ただし、締めの雑炊やうどん、ラーメンは主食にあたります。ご飯との重ね食べに注意しましょう。汁は飲み干さず、塩分にも注意しましょう。 |
| みかん | 果物は1日に適量を。こたつで次々と食べてしまわないよう、食べる分だけを出しておくのがおすすめです。 |
| 温かい飲み物 | 缶コーヒー、ココア、ホットレモン、甘酒などには、糖分が多いものがあります。お茶や無糖の飲み物を基本にしましょう。 |
| 忘年会・新年会 | お酒と一緒に、揚げ物やおつまみが増えがちです。野菜から食べ始め、飲みすぎ・食べすぎに注意しましょう。 |
お正月のお餅やおせちとの付き合い方は、別の記事で詳しくご紹介する予定です。
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かぜやインフルエンザで体調をくずしたとき
かぜや胃腸炎などで体調をくずしたときを「シックデイ」といいます。体調が悪いと、食事がとれなくても血糖値が上がることがあります。
インスリン依存状態の方は、食べられなくても基礎インスリンが必要です。一方、飲み薬などは、種類や体調によって休薬や減量が必要になります。あらかじめ主治医と決めた指示に従い、指示がない場合や迷う場合は、速やかに相談してください。
手洗いや、インフルエンザなどの予防接種も大切です。予防接種については、主治医にご相談ください。
▶関連記事:シックデイとは?風邪・胃腸炎で食べられない時のインスリンと薬の対応
▶当院の予防接種について(公式サイト)
インスリンやCGMを使っている方の冬の注意
- インスリンを凍らせない:インスリンは凍ると使えなくなります。未使用のインスリンは冷蔵庫で保管しますが、冷蔵庫の中でも奥の冷気の吹き出し口付近やチルド室は0℃近くまで下がることがあり、凍るおそれがあります。凍らさない場所として、卵や野菜を保存するところ(ドアポケットや野菜室)がおすすめです。冬の車内にも置きっぱなしにしないようにしましょう。一度凍ったインスリンは、溶けても使わないでください。インスリンが変性して効果が期待できない場合があるからです。使用中のペンは冷蔵庫に入れず、室温で保管します。また、凍結を防ぐためでも、インスリンをカイロに密着させたり、暖房器具やこたつのそばで温めたりしないでください。保管温度は、製剤ごとの指示を守りましょう。
- 注射した場所を温めすぎない:注射の直後に入浴したり、注射した場所をカイロなどで温めたりすると、インスリンの吸収が早まり、低血糖につながることがあります。
- 指先が冷えていると測りにくい:みかんなどを触った後も、流水で手をよく洗い、十分に乾かしてから測定してください。冷えて血が出にくいときは手を温め、強く絞り出さないようにしましょう。
- CGMの機器にも使える温度の範囲があります:センサーやリーダー、スマートフォンには、それぞれ使用できる温度の範囲があります。範囲外では測定や表示などに支障が出ることがあるため、取扱説明書を確認してください。値が表示されないときや症状と合わないときに備えて、血糖自己測定器も準備しておきましょう。血糖自己測定器や測定用チップも、取扱説明書に従った温度で使用してください。
- 運動量や食事の変化に合わせた調整:冬は生活のリズムが変わりやすい時期です。インスリンの量の調整は、主治医と相談して決めましょう。
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冬こそ、定期的な受診と検査を
寒い時期は、通院が面倒に感じられることもあるかもしれません。しかし、冬こそ定期的に受診し、血糖値や体重の変化を早めに確認することが大切です。
春先の検査でHbA1cが上がっていたとしても、季節の影響が含まれていることがあります。慌てて自己流の食事制限をするのではなく、前の年の同じ時期の数値とも比べながら、主治医と一緒に振り返りましょう。
冬は血圧も上がりやすい季節です。家庭で血圧を測っている方は、冬の数値にも注目してみてください。測るときは、室内でも寒さを避け、暖かい環境で測定しましょう。
まとめ
- HbA1cは、冬から春に高く、夏から秋に低くなる傾向があります。
- 冬は、運動量の減少、年末年始の食事、体重の増加、体調不良が重なりやすい季節です。
- 家の中でできる運動や、冬の食べ物との付き合い方を工夫しましょう。
- インスリンを使っている方は、凍結や低血糖に注意しましょう。

冬の間の小さな工夫を、血糖管理につなげていきましょう。寒い季節も、一緒に乗り切っていきましょう。
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【参考文献】
Iwata S, et al. BMC Endocr Disord. 2024;24:70.
Tanaka K, et al. Endocr J. 2023;70:787-795.
Oi-Yo Y, et al. Endocrine. 2025;87:85-93.(2024年オンライン公開)
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