1型糖尿病の治療はどう変わる? 米国・欧州の最新コンセンサス2026を専門医が解説

1型糖尿病について

こんにちは。澤木内科・糖尿病クリニック院長の澤木秀明です。

2026年、米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)が共同で、成人の1型糖尿病の治療についての新しいコンセンサスレポート(専門家の合意に基づく提言)を発表しました。2021年に出された提言の改訂版です。

今回の改訂では、CGMやAID(自動インスリン投与)などの新しい技術に加えて、1型糖尿病の発症を遅らせる治療、合併症の検査、肥満や心臓・血管の病気への対策まで、扱う範囲が大きく広がりました。このページでは、患者さんに知っておいていただきたいポイントを、日本での状況もふまえてご紹介します。

院長 澤木秀明
院長 澤木秀明

海外の提言なので、日本ではまだ使えない薬や機器も含まれています。「日本ではどうなのか」も一緒にお伝えしますね。治療を変えるかどうかは、必ず主治医と相談して決めましょう。


大人の1型糖尿病は、2型糖尿病と間違われやすい

1型糖尿病は子どもの病気と思われがちですが、大人になってから発症することも少なくありません。レポートでは、海外の研究として、30歳以降に診断された1型糖尿病の方の40%以上が、最初は2型糖尿病として治療されていたという報告が紹介されています。

1型糖尿病かどうかを見分けるために、次の検査が勧められています。

  • 膵島自己抗体(GAD抗体など):まずGAD抗体を調べ、陰性の場合は、可能であればほかの抗体(IA-2抗体、ZnT8抗体)も調べます。
  • Cペプチド:自分のすい臓がどのくらいインスリンを作れているかの目安になります。

ただし、自己抗体が陰性でも1型糖尿病の場合があり、検査だけで必ず見分けられるわけではありません。症状や経過、インスリンの分泌状態を合わせて判断します。

また、ゆっくり進行するタイプについて、「LADA」という呼び方は治療の開始を遅らせるおそれがあるとして、1型糖尿病の一つの形として考えることが勧められています。日本では「緩徐進行1型糖尿病」という診断基準があります。

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1型糖尿病には「ステージ」があります

自己免疫による1型糖尿病では、症状が出る前の段階をとらえられることがあります。レポートでは、膵島自己抗体が2種類以上陽性の方について、次の3つのステージが示されています。

ステージ 状態
ステージ1 自己抗体はあるが、血糖値は正常
ステージ2 自己抗体があり、血糖値が少し高くなり始めている(症状はまだない)
ステージ3 糖尿病の診断基準を満たす(いわゆる発症)

海外では、ステージ2の方の発症を遅らせる薬として、テプリズマブという注射薬が使われ始めています。日本では、現時点で承認されていません(2026年10月時点。日本人を対象にした臨床試験がおこなわれています)。

なお、自己抗体が陰性の1型糖尿病もあり、すべての方がこの表どおりの経過をたどるわけではありません。


CGMが標準の治療に

レポートでは、CGM(持続血糖測定)が、成人の1型糖尿病の血糖測定の標準とされました。CGMは低血糖を減らし、血糖値の流れをリアルタイムでも、あとから振り返っても確認できるためです。

ただし、CGMを使っていても、指先で測る血糖測定器も手元に用意しておくことが勧められています。CGMの値と症状が合わないときや、センサーの不具合に備えるためです。

多くの成人の方の目標の目安は、次のとおりです(妊娠中の方などは目標が異なります)。

指標 目安
HbA1c 7.0%未満
目標範囲内の時間(70〜180mg/dL) 70%より多く
70mg/dL未満の時間 4%未満
54mg/dL未満の時間 1%未満

目標は、年齢や低血糖の起こりやすさなどによって一人ひとり異なります。ご自分の目標は、主治医と相談して決めましょう。

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AID(自動インスリン投与)は、継続して使える方で優先して検討する方法に

AIDは、インスリンポンプとCGMを組み合わせ、CGMの値に応じてインスリンの量を自動で調整するしくみです。レポートでは、AIDを続けて使える場合には、AIDがインスリン投与の最も適した方法とされ、可能な方にはAIDを、難しい場合にはポンプや頻回注射(記録機能のあるペンを含む)を選ぶ流れが示されています。

ただし、今のAIDでも、食事の入力や操作は必要です。海外では多くの機種がありますが、日本で使える機種には限りがあります。どの方法が合うかは、生活スタイルやご希望もふまえて、主治医と相談しましょう。

どの方法でも、インスリンの補充は欠かせません。インスリン依存状態の方は、食べられないときも基礎インスリンが必要です。ポンプを使う方は、注入が止まったときに備えて、代わりに注射する方法と連絡先を事前に確認しておきましょう。

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週1回の基礎インスリン:米欧の提言では、1型糖尿病への一律の使用は勧めていません

週に1回注射する基礎インスリンが開発され、日本でも使えるものがあります。しかし、1型糖尿病を対象にした試験では、毎日注射する基礎インスリンと比べて低血糖が多くみられました。そのため、レポートでは、1型糖尿病での日常的な使用は、現時点では勧められていません。日本では成人に使用できますが、1型糖尿病の方では低血糖のリスクをふまえて、個別に判断します。週1回になるのは基礎インスリンで、食事のときなどのインスリンは別に必要です。


インスリン以外の薬について

SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬など、インスリンと一緒に使う薬も研究されています。レポートでは、血糖管理を目的としてすべての方に通常の治療として追加することは勧められておらず、一人ひとりの状況に応じて検討するという位置づけです。

  • SGLT2阻害薬:HbA1cや体重が少し下がる一方、インスリン治療に追加した試験では、プラセボを追加した場合に比べて、糖尿病ケトアシドーシスのリスクが約2.6〜6倍と報告されています。血糖値が高くなくても起こることがあり、吐き気・腹痛・強いだるさ・息苦しさなどがあれば、救急病院を受診してください。日本では、ダパグリフロジンとイプラグリフロジンに、適切なインスリン治療を十分におこなっても血糖管理が不十分な成人に、インスリンと併用する適応があります。体調が悪いときの休薬の方法は事前に確認し、インスリンは自己判断で中止しないでください。
  • GLP-1受容体作動薬など:海外では、血糖管理や肥満への効果が研究されています。ただし、日本では1型糖尿病の血糖管理を目的とする治療薬として承認されておらず、オゼンピックなど、添付文書で1型糖尿病の方には投与しないこと(禁忌)とされている製剤もあります。肥満症の治療としての使用条件とは、区別して考える必要があります。

自己判断で薬を始めたり、やめたりしないでください。

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低血糖への備え

低血糖は、1型糖尿病の治療で最も大きな壁の一つです。レポートでは、低血糖を次の3段階に分けています。

  • レベル1:70mg/dL未満、54mg/dL以上
  • レベル2:54mg/dL未満
  • レベル3:意識や体の状態が変化し、回復に周りの人の助けが必要な低血糖(重症低血糖)

1型糖尿病の方の25〜30%は、低血糖に気づきにくい状態(無自覚性低血糖)にあると推定されています。「低血糖のとき、いつも気づけますか?」「血糖値がいくつくらいで症状が出ますか?」といった質問で、定期的に確認することが勧められています。

意識がはっきりしていて安全に飲み込める場合は、レポートでは、ブドウ糖など約15gをとり、15分後に血糖値を再確認し、低血糖が続いていれば追加する方法が示されています。AIDがインスリンの投与を減らしたり止めたりしている場合には、5〜10gで足りることもあります(とりすぎると、その後の高血糖につながることがあるため)。すべての低血糖に当てはまるわけではないため、実際の摂取量と再確認の方法は主治医と決めてください。

CGMでは、血糖値が回復しても表示が遅れることがあります。症状と表示が合わないときや、糖分を繰り返しとりすぎてしまう場合は、指先の血糖測定で確認してください。

安全に飲み込めない場合は、口から与えず、119番に連絡してください。

重症低血糖に備えて、グルカゴン(点鼻薬など)の使い方を、ご家族など周りの方と共有しておきましょう。

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心のケアも、治療の大切な一部

毎日の自己管理が続く1型糖尿病では、気持ちの負担も大きくなりがちです。レポートでは、治療に伴う気持ちのつらさ(ダイアベティス・ディストレス)は、成人の1型糖尿病の方の20〜40%にみられるとされ、少なくとも年に1回、心の状態を確認することが勧められています。

低血糖への不安、治療の疲れ、周りの理解のなさなど、つらいと感じることがあれば、遠慮なく医師や看護師、管理栄養士にお話しください。


肥満や心臓・血管の病気への対策

「1型糖尿病の方はやせている」というイメージがありますが、レポートでは、海外のデータをもとに、1型糖尿病でも過体重や肥満は珍しくなく、一般の人と同程度以上にみられるとしています。また、1型糖尿病では心臓や血管の病気のリスクが高いため、血糖値だけでなく、次のことも大切です。

  • 血圧の管理(安全に達成できる場合、130/80mmHg未満が目安)
  • コレステロールの管理(年齢やリスクに応じて薬も検討)
  • 体重の管理と禁煙

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高齢の方、妊娠を考えている方へ

  • 高齢の方:CGMやAIDは、高齢の方でも低血糖を減らすのに役立ちます。年齢だけを理由に、機器の使用をやめる必要はないとされています。体の状態に合わせて、治療を見直していきます。
  • 妊娠を考えている方:妊娠前から血糖値を整えておくことが大切で、低血糖を避けながら、HbA1c 6.5%未満を目指すことが勧められています。妊娠中の目標や、AIDを使うかどうか、どの機種を使うかは、妊娠中の糖尿病診療に詳しい医療者と相談します。妊娠を考え始めたら、早めに主治医に相談しましょう。

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こんなときは、すぐに受診・連絡を
当院は大型商業施設の中にあるクリニックのため、点滴など救急の処置ができる設備がありません。

  • 嘔吐・腹痛・強いだるさ・息苦しさがあるとき(ケトアシドーシスが疑われるとき)は、お近くの救急病院を受診してください。
  • 意識がはっきりしない、けいれんがある、呼吸がおかしいときは、迷わず119番に連絡してください。意識がはっきりしない方に、無理に飲食させないでください。
  • 受診すべきか迷うときは、救急安心センターおおさか(#7119)に電話で相談できます。
  • 当院におかかりの方は、診療時間内であれば電話でのご相談が可能です。ただし、一刻を争う場合は、当院への連絡を待たずに、直接救急に連絡してください。

まとめ

  • 大人の1型糖尿病は2型と間違われやすく、自己抗体とCペプチドで見分けることが大切です。
  • CGMが標準の治療となり、継続して使える場合、AIDが最適なインスリン投与法として位置づけられました。
  • 週1回のインスリンや、インスリン以外の薬は、1型糖尿病ではすべての方に通常の治療として勧められているわけではありません。
  • 低血糖への備え、心のケア、血圧やコレステロールの管理も、治療の大切な一部です。
院長 澤木秀明
院長 澤木秀明

1型糖尿病の治療は、これからも進歩していきます。新しい治療や機器について気になることがあれば、外来でお気軽にご相談ください。

当院の1型糖尿病の診療について
澤木内科・糖尿病クリニック(大阪府高槻市)では、ペン型インスリン注射、インスリンポンプ、AID、CGMの導入と継続を、外来でおこなっています。

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【参考文献】
Holt RIG, DeVries JH, Hess-Fischl A, et al. The Management of Type 1 Diabetes in Adults. The Updated 2026 Consensus Report by the American Diabetes Association (ADA) and the European Association for the Study of Diabetes (EASD). Diabetes Care 2026;49. https://doi.org/10.2337/dci26-0122

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