「食べる順番」で血糖値の上昇がおだやかになるのはなぜ? 京都大学の新しい研究を糖尿病専門医が解説

2型糖尿病について

こんにちは。澤木内科・糖尿病クリニック院長の澤木秀明です。

「野菜やおかずを先に食べて、ご飯や麺はあとに」。外来でも、食後の血糖値の上昇をおだやかにする工夫として、この「食べる順番」をよくおすすめしています。

2026年10月、京都大学大学院医学研究科の矢部大介教授らの研究グループが、脂質(オリーブ油など)を糖質より先にとると、なぜ食後の血糖値の上昇がおだやかになるのか、そのしくみの一端をマウスの実験で示し、米国糖尿病学会の学術誌「Diabetes」に発表しました。このページでは、この研究をわかりやすくご紹介します。

院長 澤木秀明
院長 澤木秀明

「食べる順番」は、特別な食材も費用もいらず、今日から始められる工夫です。その理由が、体の中のしくみとして少しずつわかってきました。


「食べる順番」とは

食事のときに、野菜やきのこ、海藻、肉や魚などのおかずを先に食べ、ご飯やパン、麺などの主食(糖質)をあとに食べる工夫のことです。

これまでの人での研究では、野菜やたんぱく質・脂質を含むおかずを先に食べると、食後の血糖値の上昇がおさえられる場合があると報告されています。食物繊維による糖質の吸収の遅れや、消化管ホルモン、食べたものが胃から腸へ送り出される速さ(胃排出)の変化などが関係すると考えられています。ただし、脂質を先にとったときに、体の中で何が起きているのかは、十分にわかっていませんでした。

▶関連記事:血糖値スパイクとは?食後の眠気・原因・対策を糖尿病専門医が解説


今回の研究でわかったこと

研究グループは、マウスに、糖の処理を調べるためのブドウ糖を与えました。その15分前に水またはオリーブ油を与えた場合と、ブドウ糖の15分後にオリーブ油を与えた場合などを比べました。

脂質を先にとると食後早い時間の血糖値の上昇がおだやかになる模式図。オリーブ油を先にとったマウスでは血糖の山が低く、グルカゴンとGLP-1が胃から腸へ送り出す速さをゆっくりにし、迷走神経も関与する
図:今回の研究の模式図(クリックで拡大)
  • 今回の実験では、15分前に与えた場合に早い時間の血糖上昇が抑えられた:オリーブ油をブドウ糖より先に与えたマウスでは、胃排出がゆっくりになり、ブドウ糖をとってから早い時間(15〜30分ごろ)の血糖値の上昇がおだやかになりました。ブドウ糖のあとにオリーブ油を与えた場合には、このような効果はみられませんでした。糖尿病ではないマウスでのこの比較では、最初の1時間の血糖曲線下面積(血糖の推移をまとめた指標)は小さくなりましたが、2時間全体では統計学的に明確な差は認められませんでした。
  • 2つのホルモンが関わっていた:オリーブ油を先にとると、すい臓から出る「グルカゴン」と、腸から出る「GLP-1」などのホルモンの分泌が増えていました。グルカゴンとGLP-1などをともに作れない遺伝子改変マウスでは、効果が認められませんでした。一方、どちらか一方の受容体の働きだけを止めても、効果はおおむね保たれました。両方の受容体の働きを同時に止めると、血糖上昇を抑える効果は弱まり、胃排出を遅らせる効果は検出されなくなりました。2つのホルモンが、お互いに補い合うように働いていると考えられています。
  • 迷走神経も関わる可能性:胃と脳をつなぐ迷走神経の働きを止めると、ホルモンは出ていても、胃排出をゆっくりにする効果が弱くなりました。迷走神経が、ホルモンの合図を胃の動きの変化につないでいる可能性があります。ただし、この処置そのものでも胃の動きが遅くなるため、迷走神経がどの程度必要なのかは、さらに検証が必要です。
  • 糖尿病のモデルマウスでも:インスリンの分泌が少ないマウスや、2型糖尿病のモデルマウスでも、同じような効果が確認されました。

主に、食後早い時間の急な上昇をおだやかにする効果と考えられています。


脂質の種類による違い

オリーブ油のほかに、アマニ油やラード(豚の脂)を先に与えた場合にも、同じような効果がみられました。ココナッツ油でも胃排出が遅くなり、早い時間の血糖上昇を抑える傾向がみられました。

ただし、これはマウスでの結果です。油の種類による違いを、人での優劣に置き換えることはできません。


知っておいていただきたい注意点

  • マウスの実験の結果です:人の体の中で、同じしくみが同じように働くかは、今後の研究で確かめる必要があります。胃から送り出される速さは間接的な方法で評価しており、通常の食事や長期的な効果も、今後の検証が必要です。
  • 油のとりすぎには注意:油は少量でもエネルギー(カロリー)が多く、とりすぎると体重が増える原因になります。「血糖値のために油をたくさんとる」のではなく、ふだんの食事の中で、油を使ったおかずを先に食べる、という考え方がおすすめです。
  • 食後の血糖値を下げる薬の代わりにはなりません:処方されているお薬は、自己判断で減らしたりやめたりしないでください。

毎日の食事でどう生かす?

今回の研究は、これまでおすすめしてきた「食べる順番」を、体の中のしくみの面から考える手がかりになります。

ここからは、今回のマウス実験そのものの結果ではなく、これまでの人での研究や食事指導をふまえた一般的な工夫です。この研究を理由に、油を追加したり、食事の15分前に油をとったりする必要はありません。

  • 食事の最初に、野菜のおかずや、オリーブ油などを使ったサラダを食べる
  • 次に、肉や魚、卵、大豆製品などのたんぱく質のおかずを食べる
  • ご飯やパン、麺などの主食は、最後に食べる
  • 早食いをせず、よくかんで、ゆっくり食べる

主食を抜く必要はありません。主治医や管理栄養士と相談した食事の量や栄養バランスを基本に、食品や油を追加せず、順番を工夫する方法があります。

▶関連記事:糖尿病専門医が実際の患者データで見た、血糖値が改善した食事の共通点
▶関連記事:糖尿病の食事療法
▶関連記事:糖尿病でも外食できる?ラーメン・寿司・コンビニの考え方


インスリンや血糖値を下げる薬を使っている方へ

食べる順番や食事の内容を変えると、食後の血糖値の上がり方が変わることがあります。インスリンや、SU薬など低血糖を起こしやすい飲み薬を使っている方は、食事のとり方を大きく変えるときは、低血糖に注意し、あらかじめ主治医に相談してください。食事のインスリンを打つタイミングや量の調整が必要になることもあります。

▶関連記事:低血糖とは?症状・原因・対処法を糖尿病専門医が解説


まとめ

  • マウスの実験で、オリーブ油などの脂質を糖質より「先に」とると、胃排出がゆっくりになり、食後早い時間の血糖値の上昇がおだやかになりました。
  • そのしくみには、グルカゴンとGLP-1というホルモン、そして迷走神経が関わっていると考えられています。
  • 人で同じしくみが働くかは今後の検証が必要ですが、「食べる順番」を支える新しい手がかりです。
  • 油のとりすぎに注意し、野菜やおかずを先に、主食はあとに、を毎日の食事に取り入れてみましょう。
院長 澤木秀明
院長 澤木秀明

食事の工夫について気になることがあれば、外来で医師や管理栄養士にお気軽にご相談ください。ご自分の生活に合った方法を、一緒に考えていきましょう。

京都大学との連携について
当院は、京都大学大学院医学研究科の矢部大介教授の研究室と連携しています。矢部教授の研究室から医師を派遣いただき、当院の非常勤医師として診療にあたっていただいているほか、入院治療が必要な患者さんを京都大学医学部附属病院で受け入れていただいています。また、矢部教授が研究代表者を務める多施設共同研究に、当院も参加しています。
なお、今回ご紹介した研究には、当院は参加していません。

【参考文献】
Liu Y, Tsuchida H, Kubota S, et al. (Yabe D). Olive Oil Before Oral Glucose Delays Gastric Emptying and Lowers Glycemia Through Partially Redundant Glucagon and GLP-1 Signaling in Mice. Diabetes 2026;75(12):1–12. https://doi.org/10.2337/db26-0531
京都大学プレスリリース(2026年10月9日)

▶当院の栄養相談について(公式サイト)
▶澤木内科・糖尿病クリニック公式サイト(1型糖尿病・CGM・インスリンポンプの診療をおこなっています)