こんにちは。澤木内科・糖尿病クリニック院長の澤木秀明です。
当院の外来では、19歳の終わりや20歳を過ぎてから、「インスリンポンプやAIDについて相談したい」と来院される方が少なくありません。
1型糖尿病の子どもや10代の方は、小児慢性特定疾病の医療費助成を受けられることがあります。ただし、この助成は原則として20歳になるまでの制度です。インスリンポンプやAID(自動インスリン投与)に関心がある方は、20歳になる前に、時間の余裕をもって相談することをおすすめします。
インスリンポンプやAIDは、10代になってから始める治療ではありません。インスリンポンプは、小学生より小さなお子さんにも使われ、国内では乳児での使用例もあります。血糖の動きに合わせてインスリン量を自動で調整するAIDには、機種ごとに使用条件があります。たとえば、ミニメド780Gの自動調整機能は、日本ではインスリン分泌が高度に低下した2歳以上の1型糖尿病の方が対象です(2026年11月時点)。小児慢性特定疾病の助成が使える間に、できるだけ早く選択肢を知っていただきたいと考えています。

お子さんのころから知っておいていただきたいことを、このページにまとめました。ご本人もご家族も、ぜひ一緒に読んでみてください。
小児慢性特定疾病の医療費助成は、原則20歳になるまで
小児慢性特定疾病医療費助成制度(小慢)は、国が定めた医療費の助成制度です。1型糖尿病でインスリン治療などを受けている方は、対象になることがあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 新規の対象となる年齢 | 原則18歳未満。18歳になった後の申請でも、さかのぼって認定される場合があります(下記参照) |
| 延長できる期間 | 18歳の時点で認定を受けていて、引き続き治療が必要な場合は、20歳になるまで(20歳未満)延長できる |
| 自己負担 | 対象となる保険診療について原則2割。さらに、医療保険上の世帯の所得などに応じて、1か月の自己負担の上限額が決まっています |
| 助成を利用できる医療機関 | 小児慢性特定疾病の指定医療機関 |
| 有効期間 | 原則1年。毎年の更新が必要 |
| 申請に必要な書類 | 指定医が作成する医療意見書など |
小慢では、18歳以上の方は、原則としてご本人の名義で申請します。ご家族が代わりに手続きをする場合は、必要な書類を自治体で確認しましょう。
医療費だけでなく、学校生活や進学、生活の不安についても、自治体に相談できます。高槻市では、子ども保健課が小慢の相談を受け付けています。
制度の内容や手続きは、お住まいの自治体によって異なる部分があります。高槻市の例は、次の記事で詳しくご紹介しています。
▶関連記事:子どもが1型糖尿病と診断されたら まず確認したい医療費助成制度(高槻市版)
20歳を過ぎると、医療費はどう変わる?
20歳になると小児慢性特定疾病の助成は終わり、通常は加入している健康保険の自己負担(多くの方は3割)になります。インスリンポンプやCGMを使う治療は、毎月の医療費が大きくなりやすいため、助成が終わると負担を重く感じる方も少なくありません。
成人の方が使える可能性のある制度(高額療養費制度、健康保険組合の付加給付、障害年金など)もありますが、対象や条件は人によって異なります。
▶関連記事:1型糖尿病の医療費助成制度(特に成人の方向け)
早めに相談すると、選択と準備の時間を確保できます
インスリンポンプやAIDは、機械をつければすぐにうまくいく治療ではありません。始めるまでと、始めてからの準備や調整に時間がかかります。
- 導入前:機種の説明、使い方の練習、カーボカウント(食事の炭水化物の量からインスリン量を考える方法)の学習など
- 導入後:設定の見直し、トラブルへの備え、学校や職場での使い方に慣れるまでの期間
このため、20歳の直前に始めると、慣れて落ち着くころには助成の期間が終わっているということもあります。なお、20歳前に導入しても、小慢の助成は20歳で終わります。始める前に、助成のある間だけでなく、助成が終わった後の毎月の自己負担と、無理なく続けられるかも確認しましょう。また、10代の後半は、受験、進学、就職、ひとり暮らしなど、生活が大きく変わる時期でもあります。生活が変わる前に治療を整えておくと安心です。
助成を受けながらポンプやAIDを使える期間は、始める時期によって変わります。すでに小慢の認定を受け、18歳以降も引き続き治療が必要と認められて更新を続けた場合、助成の対象は20歳の誕生日の前日までです。たとえば、18歳になった直後に始めれば最長約2年、19歳になった直後なら最長約1年、助成のある間に機器に慣れ、設定を調整する時間をとることができます。早めに相談しておくと、機器の使い方や、助成が終わった後の費用も含めて検討できます。相談した時点で、始めるかどうかを決める必要はありません。
ポンプやAIDは、年齢にかかわらず相談できます
使える機種は、お子さんの年齢や、1日に必要なインスリン量などによって異なります。海外では1歳から対象となるシステムもありますが、日本とは機種や使用条件が異なります。関心があれば、年齢にかかわらず、まずは今の主治医(小児科など)にご相談ください。
当院では、原則として12歳以上の方を診療しています。中学生・高校生で、ポンプやAIDに関心がある方や、小児科から内科への移行を考えている方は、早めにご相談ください。20歳以降でも、相談や導入はできます。もちろん、ポンプが合うかどうかは人によって異なり、ペン型の注射を続けることも立派な選択です。大切なのは、助成終了後の費用も含めて早めに選択肢を知り、ご本人に合う時期と方法を考えられることです。
相談の前に、次のことを確認しておくとスムーズです。
- 小児慢性特定疾病の受給者証を持っているか、有効期間はいつまでか
- 今の主治医(小児科など)に、ポンプやAIDについて相談したことがあるか
- 転院先が小慢の指定医療機関か、更新に必要な医療意見書を誰(どの指定医)が作成するか
- CGMの記録や、最近の検査結果
高槻市では、認定された病気について、指定医療機関を追加して受診する際の変更申請は不要です。転居や健康保険の変更がある場合、ほかの自治体の受給者証を使う場合は、必要な手続きを自治体に確認しましょう。
▶関連記事:ミニメド780Gとは?自動でインスリンを調整するAID療法
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小児科から内科へ移るタイミングも一緒に考えましょう
1型糖尿病の方は、いずれ小児科から内科(成人の診療科)へ移る時期を迎えます。「移行期医療」とは、転院や転科だけでなく、大人になっても必要な医療を切れ目なく受けられるよう、自己管理や生活、診療の体制を整えていく支援のことです。ポンプやAIDの相談は、今の小児科でもできます。転院の時期と機器の導入の時期は、ご本人の希望や準備の状況をふまえて、主治医と相談して決めましょう。
紹介状をお持ちいただくと、これまでの治療の経過を引き継ぎやすくなります。
ご家族の方へ
10代のうちは、通院や手続きの多くをご家族が担っていることが多いと思います。小慢では、18歳以上は原則としてご本人の名義で申請します。通院や自己管理は、年齢だけで区切らず、ご本人の理解や準備に合わせて、ご家族と少しずつ役割を分担していきましょう。助成の期限や受給者証の更新、ポンプやAIDの選択肢について、早めにご本人と話し合っておくことをおすすめします。
まとめ
- 小児慢性特定疾病の医療費助成は、新しく対象になるのは原則18歳未満、延長しても原則20歳になるまでです。18歳以上は原則として本人名義で申請します。
- 18歳以降は、認定の期間を途切れさせないことが大切です。期限を過ぎても、すぐに自治体に相談しましょう。
- インスリンポンプやAIDは、関心を持ったときから、今の主治医に相談できます。助成の期限と、治療を始める時期は分けて考えましょう。
- 小児科から内科へ移る時期も、あわせて考えておきましょう。

「まだ早いかな」と思うくらいの時期のご相談が、ちょうどよいタイミングです。ポンプを始めるかどうかが決まっていなくても大丈夫です。まずは話を聞きに来てください。
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【参考】小児慢性特定疾病情報センター、高槻市・大阪府の小児慢性特定疾病医療費助成の案内
▶澤木内科・糖尿病クリニック公式サイト(1型糖尿病・CGM・インスリンポンプの診療をおこなっています)


